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2007-04-10 22:56:03

「影法師夢幻」/それは大いなるゆめまぼろし?

テーマ:集英社
 
米村 圭伍
影法師夢幻  

目次
第一章 真田手毬歌
第二章 隠し砦
第三章 七代秀頼
第四章 仙台真田家
第五章 黒脛巾組
第六章 血風奥州路
第七章 忍術合戦
第八章 江戸城御黒書院


 花のようなる秀頼さまを、鬼のようなる真田が連れて、のきものいたり鹿児島へ

豊臣秀頼と淀君が大阪城にて自刃、大阪夏の陣の幕が閉じてから後、巷間にはこんな手毬歌が流行していた。真田幸村は秀頼を連れて鹿児島に落ち延びていた?

秀頼に馬糞を喰わせたことが縁となり、侍大将に取り立てられた、元は水呑み百姓の勇魚大五郎は、秀頼を追って兵庫湊へと急ぐ。秀頼のあのしみじみとした笑顔を再び見るために、秀頼を見送るために・・・。行く道で、真田の手の者、お才や佐助、淀君の守役だった老武者や、大阪方の落武者と知り合い、彼らを連れて大五郎は行く。

ところが、兵庫湊で彼らに追いついたのは、徳川配下の猛将、片倉小十郎だった。大阪方の武士たちの命運は尽きたかに思われたが・・・。

第二章では時代はぐっと下って、大阪城が落城したのはもう百七十年も昔のこと。何やら曰くありそうな、真田幸村の長男と同じ名を持つ浪人、真田大助が隠し砦を探すところから始まる。彼、真田大助が探しているのは、あの豊臣秀頼の末裔を奉る隠し砦であり、真田大助は彼の一族の悲願であった、隠し砦をようやく見つけるのであるが・・・。

この辺から、色々とややこしいのだけれど、七代・真田大助を名乗っていた彼は、実はあの馬糞を喰わせた、勇魚大五郎の末裔であると名乗り直し、本物の七代・真田大助であるところの老武士だの、隠し砦の奥深くに住まう七代・秀頼も出てきて、百七十年後の因縁が回りだす。

更に、勇魚大五郎は秀頼を江戸に向かうよう唆すのであるが、勇魚大五郎の意図は一体どこにあるのか? そして、その道中にも百七十年前の因縁が・・・。回る回るよ因縁は。七代目の誰それなど、子孫がわらわらと出てくるこの物語では、誰もが誰かの影法師のようでもある。

途中、「笠森お仙」が出て来たときに、おおっ、と思ったんだけど、期待違わず、あの熊野忍びお仙も、倉地政之助も終盤で登場します。『
錦絵双花伝 』や、『退屈姫君伝 』シリーズを読んだ人には、実に嬉しい展開。特に『錦絵双花伝』! もしかすると、あの大蜘蛛仙太郎の子種が根付くやもしれません。

終盤の、「秀頼」と家斉の差しでの会話も楽しい。

「予が家斉である」「予は秀頼である」

歴史上のifは色々ありまするが、たとえゆめまぼろしのような儚いものであろうとも、「そう思ったほうが楽しい」、「そう思ったほうが夢がある」、そういうことはそう思ってしまってもいいんじゃないかなぁ、という物語。

松平定信に対する家斉の言葉がなかなかいいのですよ。

「暮らしを豊かにすれば、すべての苦しみが救われるのか。予はそうは思わぬ。たとえ暮らしが貧しくとも、心豊かな暮らしであれば、金の価値が人の価値とばかりに金儲けに血道をあげる暮らしよりも、むしろ苦しみは少ないのではないか。経世済民とは、人倫を正しくし庶民が楽しく日々を送れるようにすることも含まれているのではないか」

滅び行くものに愛惜の念を、可能性には夢を・・・。錦絵双花伝』はちょっとダークだったけれど、これは明るく楽しく読む事が出来ます(真田の忍び、佐助が操る銅蓮花は、ちょっとむごいのだけれども)。米村さんの心豊かさ、ちゃめっ気が十分に生かされた物語。百七十年に及ぶ隠れんぼ。楽しいではないですか。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

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