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2007-03-12 22:16:50

「きつねのはなし」/ひたひたと来るもの、あれは

テーマ:新潮社
 
森見 登美彦
きつねのはなし  

目次
きつねのはなし
果実の中の龍

水神


森見登美彦さん、初読みです。

妄想系小説を書かれる方だと勝手に思っていたのだけれど、これはむしろ端正な味わいの淡い幻の物語。水や闇のほの暗さ、手触り、湿り気を、その深淵を覗き込むような物語。

四つの短篇におけるキーワードは、芳蓮堂という古道具屋、和紙で作られた狐の面、からくり幻燈、胴の長いケモノ、そして水・・・・。

独立しているようでいて、ゆるく繋がっているこれら四編の物語は、四編全てを読んでも、全てが語られるわけではない。むしろ謎は増すばかり。でも、この物語は全てが明らかにならなくて良いのかもしれない。「果実の中の龍」の「私」が言うとおり、「本当でも嘘でも、かまわない。そんなことはどうでもいいことだ」なのかもしれない。

この「果実の中の龍」は不思議な話で、先輩が淡々と語る話に、あわあわと引き込まれる。

「こうやって日が暮れて街の灯がきらきらしてくると、僕はよく想像する。この街には大勢の人が住んでいて、そのほとんどすべての人は他人だけれども、彼らの間に、僕には想像もつかないような神秘的な糸がたくさん張り巡らされているに違いない。何かの拍子に僕がその糸に触れると、不思議な音を立てる。もしその糸を辿っていくことができるなら、この街の中枢にある、とても暗くて神秘的な場所に通じているような気がするんだ」

京都の街ではそんな風に何かを爪弾くと、見知らぬ異界への道が開かれるのかも、などと思ってしまう。同じく京大出身作家であり、京都を舞台にしていても、万城目さんの『
鴨川ホルモー 』などとは、また随分違った仕上がり。鴨川ホルモー』のせいで、吉田神社と聞くだけで、何となく笑ってしまうんだけれど、こちらでは背筋にひやひやと来る。

そして、水神」に出てくる疎水には、『
家守綺譚』! と思うのだった。というわけで、再度、疎水百選」へのリンク 。音が出ますので、ご注意下さい。でも、このせせらぎの音、やっぱり、いいなー(本書の中では、そんな優しげな音はしていないけれど)。

不思議に出会い、そしてまた普通の生活へと戻る。振り返ってみた時、それは幻のようでもある。でも、京都の街の中のどこかに、芳蓮堂とナツメさん、古い屋敷の水神はひっそりと存在しているのかもしれない。
 ← 次はこれにいきたいのに、単行本なんだよね・・・。図書館の予約は凄い数みたいだし。

その後に読んだ、「夜は短し歩けよ乙女」の感想
 →「
夜は短し歩けよ乙女 」/歩けよ、乙女。京の春夏秋冬を!

いやー、綺羅綺羅と美しく、丹精込めて作られた金平糖のような物語でした。

臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡下さい。

コメント

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1 ■無題

森見登美彦は、最近話題になってきているみたいですね。
『太陽の塔』は、ちょっと波長が合わなくて挫折してしまったのですが、『きつねのはなし』はなかなか面白かったです。
いちばん良かったのは一話目の「きつねのはなし」でしょうか。話の骨格自体は、どこかで読んだようなものなのだけど、曖昧模糊とした雰囲気が絶妙でした。
全体を通して、謎を謎のまま残すところが、余韻があって、よかったですね。

2 ■>kazuouさん

うわー、kazuouさんは守備範囲が広いなぁ。
そうそう、森見さんは最近そこここで話題ですよね。『夜は短し~』は本屋大賞ノミネートですし。
『太陽の塔』は、波長合いませんでしたか。これはでも、ファンタジーノベル大賞でしたっけ。妄想爆裂だったんでしょうか。笑
『きつねのはなし』。一話目の天城さんが怖かったです。ナツメさんが語る狐面の男とか。たまには、こういった曖昧模糊とした話もいいなぁと思いました♪ 余韻というか、ちょっと水が怖くなりました~。笑 一人で夜ひっそり読んでると、ちょっと怖いですね、これ。

3 ■研究員takam16

森見氏にどっぷりつかみたいのなら、

「四畳半神話大系」


がまたすばらしいんだよ。

キワモノ太田出版からの
極上の妖しい話なんだよ。ククク。

4 ■>研究員takam16さん

『夜は~』よりも、『四畳半~』にいくのが、通なのでしょうか。笑 これもまた、妖しい話? 「四畳半」とかいうし、またも勝手に妄想系の話だと思ってました・・・。妄想系の話って、実は少ないの??笑

太田出版、下の『ライトノベル☆めった斬り』もそうですね。え、キワモノだったの?笑<出版社別カテゴライズやってるくせに、無知

5 ■夜は短し歩きたい乙女より

こんばんは。
私も「夜は短し歩けよ乙女」を図書館に予約中です。
私の地元ッチは、森見登美彦さんまだそこまで注目されていないようですが、やはり人気の高い作家のようです。今はテレビ番組でも評判の「ハゲタカ」を読んでいるように、つなさんと興味の対象が被ることがあまりないので、この記事は印象に残りました。

>臙脂色の文字

この漢字もなかなか味わい深いですね。^^

6 ■>乙女・樹衣子さん。笑

こんばんは~、ご無沙汰してます!
いっつも読み逃げしててすみません・・・。笑

おお、では、『夜は短し歩けよ乙女』。樹衣子さんの感想が楽しみです。

「ハゲタカ」、ドラマは面白そうだなぁと思ったものの、結局見てません。あ、「ハケンの品格」は面白く、毎週楽しみに見てましたよー。
家にも夫のビジネス書がシリーズで積んであったりするのですが、どうも食指が動かず・・・。経済関係もきちんと読めれば面白いのでしょうね。

あはは、臙脂色。何だかちょっと古風な匂いもしますよね♪

7 ■takam16 ~ takam20

「四畳半神話大系」

「夜は短し~」

の基なんだよ。

ある人によると
電車内で惜しみなく笑いながら読んだらしい
から

ぜひお読みなさい。

それと、テーマ別に「太田出版」

も入れてもらわないといけないんだよ。

8 ■>進化系(?)takam16さん

おー、やっぱり、「夜は短し~」と「四畳半~」は繋がっているんですねえ。
ちなみに、どっちを先に読むほうがベストなのでしょうか。

「四畳半~」はわが図書館にはないのですよね。こ、これはいい加減、買おうかな。

で、takam16さんは惜しみなく笑いながら読んだのですか?笑 電車の中の読書は時にデンジャラスになりますよね。

「その他の出版社」が滅茶苦茶な数になってますが、もうテーマ増やすのが面倒になってしまいました・・・。わーん。

9 ■『夜は短し…』早く読みましょう!

つなさん、『夜は短し歩けよ乙女』があまり長い順番待ちなので、ぼくはとうとう買って読みました。
正解でした。ちょっとほかにはあまりお目にかかれないおもしろさです。文体とプロットと、両方おもしろいのです。
本書はいうなればかなり正統派のホラー・ファンタジーですが、『夜は短し…』には「これはなんだか、すごいぞ。こんなの読んだことがない」という読後感があります。

10 ■>ディックさん

おお、ディックさんは購入されたのですね。『四畳半~』は図書館にないようなので、買おうかな~、と思っているのですが、『夜は短し~』は予約の順番が繰り上がっていくのを淡々と待っています。・・・でも、もっと早く読むべきでしょうか。笑

『太陽の塔』で楽しめちゃった自分なので、『夜は短し~』は絶対楽しめると思うのですよね~。でも、もうちょっとガマンです。

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