2007-01-10 21:52:03
「狐弟子」/人間は、結構ズルい
テーマ:実業之日本社
- 森福 都
- 「狐弟子
」
ズルかったり、せこかったり、愚かだと分かっていても色香にくらくらしたり、はたまた愛しい相手に憎まれ口をきいてみたり、実際に生きている人間なんてそんなもの。でも、そんな中にも、純な心や思いやりが時に隠れていたりもする。それは、老若男女を問わぬものであるし、場合によっては人ならぬ身のものでさえも・・・。
現代にあっては、それらの人間の特徴は、鼻白むものでもあるかもしれねども、舞台は中国唐代の長安や洛陽。怪異、怪奇が程よく混じって、魅力的な奇譚集となった。
目次
鳩胸(きゅうきょう)
雲鬢(うんびん)
股肉(こにく)
狐弟子(きつねでし)
石榴缶(せきりゅうかん)
碧眼視鬼(へきがんしき)
鏡像趙美人(きょうぞうちょうびじん)
「雲鬢」
髪結いにして盗賊である丹桂が初めて想った女、芸妓の季玉が、前途洋々たる新進士様、思安に嫁ぐのだという。芸妓が科挙に合格した進士に嫁ぐなど、例にないことではあるが、思安は道を踏み外した彼を支え、正道に戻した季玉の恩を、彼女を娶る事で報いようというのだ。
さて、思安の昔の悪い仲間たちの話から、偶然、季玉の危機を知った丹桂は、彼女を救い出すが、巻毛であったはず季玉の長い髪は、清水のように真っ直ぐな髪に変わっていた。「あんた、いったい何者だ」。
でも、ここから更に一ひねり! 最後を読んでうーん、となる。
「狐弟子」
洛陽城中の敦化坊は全真寺なる破れ寺に、狐の化身と名高い毛潜と名乗る老人が住み着いていた。境内にある楡の大木の虚は狐の村に通じていて、その村の一等地には毛潜の豪邸があるとの専らの噂。
さて、毛老人の元に、孝児と名乗る痩せこけた少年が、狐になりたいと弟子入りを志願する。毛老人はいいように孝児をこき使うのであるが・・・。
狐になりたいと真摯に願う孝児に、柄にもなく同情する毛老人とは反比例するように、逞しくなっていく孝児がいいんだ。毛老人もいうように、孝児は既に、なかなかどうして立派な子狐ではありませぬか。
「石榴缶」
幽鬼を腹の中に取り込んだという、蘭圭少年。彼は見目の良い姉、瑞芳と組んでの卜占を生業としていた。零落寸前の医家の息子、恒之は、偶然にこの姉弟と知り合い、成り行きで武后の実母、栄国夫人の元に、頭痛を治す名医として父を送り出す事になる。
実を言えば、蘭圭に取り付いた幽鬼は、彼が恒之に話したような非力なものではなかった(なんてったって、彼自身が幽鬼だったのだから!)。そしてまた、卜占によって幽鬼が手を出しても出さなくても、人の運命の大きな流れは変わらない。それはもう決まっていることなのだから。しかしながら、端から眺めただけの運命の浮沈に、当人が感じる幸福の度合いは必ずしも左右されない。幽鬼は人間に、長い時の中の極点ではなく、須臾の間に幾度でも幸福を感じる才を請い願う。










