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2006-12-28 00:11:10

「錦絵双花伝」/虚と実とそして・・・

テーマ:新潮社
米村 圭伍
錦絵双花伝

風流冷飯伝 」、「退屈姫君伝 」の米村さん、長編三作目がこの「錦絵双花伝」とのことだったので、借りてきたんですが、私はまたやってしまいましたよ。関連はしているものの、シリーズとしては退屈姫君伝とは違う時間軸で時間が流れているみたい。「退屈姫君伝」シリーズを読みたければ、そのまま素直に「退屈姫君 海を渡る」にいっちゃって良かったようデス。それはさておき、こちらの本の感想をば。

目次
序幕 薄墨
二幕目 笠森お仙
三幕目 柳屋お藤
四幕目 鈴木春信
五幕目 大田直次郎
六幕目 むささび五兵衛
七幕目 怪光
八幕目 変化
九幕目 飛翔
十幕目 熊野行
十一幕目 父娘
十二幕目 嫁入

「風流冷飯伝」、「退屈姫君伝」を読んで、この作家さんは沢山の知識を持っていながら、物語を語る上ではそれを贅沢にざばざばと捨てているんだなぁ、と思っていた。で、そういった知識をきっちり使ったらどうなるのかなぁ、と思っていたんだけど、私の印象で言えば、それがこちらの「錦絵双花伝」。それらの知識を殆ど余すことなく用い、実在の人物、出来事と虚の部分を非常に巧みに絡めたストーリー。ただし、その分、退屈姫君伝などで見られた、あっけらかんとした呑気な雰囲気は随分と陰を顰めている。

これは、お江戸美少女旋風の話であり、とりかへばや物語でもあるんだけど、物語の内容としては、いっそ陰惨とも言える。田沼意次による藩の取り潰しにしても、「退屈姫君伝」の中で描かれるそれは、めだか姫や風見藩の人々の呑気さによるものなのか、身体の危機に迫るものではない。悪人の血は流れるけれど、大半の良い人々は良い人々のまま。悪人を悪人として、ある意味紋切り型に描く「退屈姫君伝」よりも、悪人側の事情が描かれる事で、また遣り切れなさが募るのかも。ほとんど愚かともいえる何とも哀れな女や、因果が巡る様も描かれるしねえ。その辺を考えると、ちょっとしみじみ。

「退屈姫君伝」ではお馴染みの、くの一の真っくろ黒助のお仙。そういえばお仙の父、むささび五兵衛が営む茶屋は笠森にあったわけだけど、でもでも、それが鈴木晴信の美人画「笠森お仙」のモデルだなんてー。もう一つの「花」、つまり双花の片割れは、これまた美人画に描かれた、柳屋お藤なのであります。このお藤はそばかすを除けば、なぜかお仙にそっくりで・・・。取り潰しにあった藩の武家の娘であるお藤と、熊野の山奥で育ったくの一のお仙に果たして何の関係が?
というわけで、これは錦絵に咲いた双つの花、お仙とお藤の物語。

小さい頃を知っていた女の子が美人に育つのは嬉しいもので、その辺はちょっと嬉しく読んだんだけど、内容は結構ハード。実際に合った出来事を盛り込みつつ、終盤は伝奇小説的な要素まで絡んでくる。ある一点を除けば、納まるべきところに納まったんだろうけど、その一点のその後についても気になるなぁ。あ、倉知の旦那は珍しく頑張ってます。

好きか嫌いかで言えば、やっぱり「退屈姫君伝」シリーズの呑気な雰囲気が好きだけど、ま、たまにはこういうのもいいかな、と思った。そういえば、田沼時代を舞台にした時代物としては、この他にも、池波正太郎「剣客商売」、諸田玲子「お鳥見女房」なんかもあるわけで、この時代は小説にし易い時代であったのかなぁ。

コメント

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1 ■無題

つなさん、こんにちは。
この作品、他の2作とは全然雰囲気が違いますよね。
いきなり伝奇小説っぽくなってびっくりでした。
多分この作品の評判があまり良くなくて
その後の退屈姫シリーズを書いたのではないかと…
というのは、私の勝手な憶測ですが。(笑)

退屈姫と対決している田沼意次も意外と愛嬌があって好きですが
一番好きなのは池波さんの「剣客商売」ですねー。
田沼意次に関しては悪い風評もたくさん伝わってますが、
実は清濁併せ呑む度量を持った
味がある人物だったのではないかと思ってます。
あ、これも勝手な憶測… というより希望です。(笑)

2 ■>四季さん

こんにちは~。年末にPC故障、大変でしたね・・・。涙 来年もまたよろしくお願いします♪

そうなんですよー、この作品は他の二作とは全く違いますよね。ついでに、この後に「退屈姫君、海を渡る」を読んだんですが、お仙は相変わらずだし、でも、そっちの方が安心して読めるという・・・。笑 この作品の評判、うーむ、どうだったんでしょうねえ。笑
ああ、そうそう、「怪奇小説」じゃなくって、「伝奇小説」ですね! これ、書いたとき、言葉が思い浮かばなくって~。笑 里見八犬伝とかそういう感じもありますよね。

退屈姫と対決している時は、確かに愛嬌がありますよね。笑 なんか、同じ土俵で悔しがってるというか・・・。笑 ああ、でも、こういう話してると、「剣客商売」も再読したくなってきちゃいますねえ。うんうん、そういう度量のある人物だったのかもしれませんね。その方が楽しいし。笑

3 ■こんばんは~♪

私も第三弾だと思って予約してるんですが・・・
そうかぁ・・・そうなんだと(笑
で、たまたまあった「紀文大尽舞」を今読んでます。
まだ若かりしむささび五兵衛と倉知さまのお父様?と思われる倉知仁左衛門が活躍。
話の中に大奥も登場し、『絵嶋生島事件』のエピソードありと
まだ途中ながら楽しく読んでます^^w
江戸時代の文化や歴史にうといので
もう少し知識があると、もっと面白いかもしれませんね。
また新たな読書欲に火がつきそうです^^;

4 ■>りこさん

昨年中はお世話になりました♪
今年もよろしくお願いいたします。

ふふ、そうなんですよー。笑 第三弾ではないのですー。これ、ちょっとラインナップが分かりづらいですよねえ。
おー、ちょうど、映画「大奥」の話ですね♪ あ、私、倉知さんの漢字間違えてましたね。汗 後で直しておきまーす。「錦絵~」にもむささび五兵衛と倉知さんの父上の話がちらりと出てくるのですが、「紀文~」の方ががっちり出てくるのかな?
江戸時代の文化や歴史、諸田さんや米村さんの本を読んでいると、自然と少しずつ頭に入ってくるかもしれませんね。杉浦さんの本は読まれてましたっけ? 私はちゃんと「勉強!」というのではなく、じわじわと頭に入ってくる感じが気に入っています♪

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