2006-12-13 23:46:02
「消えた太陽」/漂泊者たち
テーマ:国書刊行会
- アレクサンドル・グリーン, 沼野 充義, 岩本 和久
- 「消えた太陽
」
目次
消えた太陽
犬通りの出来事
火と水
世界一周
おしゃべりな家の精
荒野の心
空の精
十四フィート
六本のマッチ
オーガスト・エズボーンの結婚
蛇
水彩画
森の泥棒
緑のランプ
冒険家
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ズルバカンから来た夢想の騎士 沼野充義
訳者あとがきによると、アレクサンドル・グリーンという作家は、「ロシア文学の鬱蒼たる森の片隅に咲いた、一輪の鮮やかな花」と言えるそうな。とはいえ、私はほとんど「ロシア文学」を読んだ事がないので、こんな文章を引いた所でなんとも言えない。「ロシア文学」は重厚だというイメージがあるけど、米原万里さんの本なんかを読むと、ロシア人はとっても小噺好きであるわけで、そういう変わった話もないわけではないと思うんだけど。
さてこの本の中では、超自然的なもの、人間の心の中に潜むもの。それらがある種の透明さを持って語られる。私が知っているイメージでいうと、ロシア映画「父、帰る
」の中で見られた、美しくも厳しい自然のイメージ。透徹したイメージ。
幻想的であるんだけど、これまで親しんできたような、所謂幻想的な物語とは一味違う感じ。
章扉にあるロシア文字(キリル文字?)も、何だか私の中での異国情緒を盛り上げる。
沢山あるので、印象に残った何点かについて、少しずつ。
「消えた太陽」
ある金持ちの思い付きで、太陽を知らぬまま育てられた少年。初めて太陽を見た少年は??
初めて知る命の響き、色彩、広がり・・・。
「荒野の心」
ダイヤモンドの鉱床の発見に沸くある町に、三人のスノッブな男たちが居た。彼らはその才能でもってして、人々に伝説を語り、人々を煙に巻く。そこにやって来たのは、如何にもお人よしに見える男。三人は勿論、彼を騙しに掛かるのだが・・・。
「空の精」
ある飛行士の物語。彼は老飛行士の警告を聞き入れず、ポンマールの上空を通るのだが・・・。そこに居たのは、老飛行士の警告した通りの空の精だった。
「六本のマッチ」
嵐の中、四十二日間もの間、海上で漂流していた二人の男。一人の死は、もう一人の死をも呼び寄せる。死に行くボッスはメトラエンに葉巻を所望する。
「オーガスト・エズボーンの結婚」
幸福な結婚をしたはずなのに、新婚初夜からふらりと花嫁の元を去ってしまった男。
単なる気まぐれが、取り返しの付かない事態へと進行するが・・・。
「水彩画」
洗濯女のヒモ状態のクリッソン。今日も今日とて、ベッツィからクラウン銀貨をくすねようとし、諍いが始まるが・・・。クリッソンがたまたま逃げ込んだ画廊で、展示されていたのは彼らの家を描いた水彩画。
「緑のランプ」
金持ちの気まぐれ、ちょっとした楽しい悪戯。スティルトンは、行き倒れていた男に金を与える代わりに、決められた時間、同じ窓辺に緑のランプを灯す事を約束させる。
金持ちの気まぐれであったり、何か大事な物から逸れてしまったような男たちのコンビであったり。純真で疑う事を知らぬ清い心であったり、旅を重ねる冒険家であったり。何となく「漂泊者」という言葉が頭に浮かぶ。自分もまたふらふらと漂泊しているように感じてしまう、ちょっと異質な読書体験。
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1 ■いいがたい魅力
あえてジャンル分けすれば「幻想小説」のカテゴリーに入るんだろうけれど、それにしても変わった感じのする作家です。
ふつうのSFやファンタジーみたいに、明確なオチとか、確固としたしたストーリーの展開があるわけでもないんですよね。下手すると退屈になってしまいそうなんだけど、いわくいいがたい魅力があります(個人的には、もっとストーリーに起伏を入れてほしかったりするんですけどね)。
でも、澄み切った作品世界の雰囲気は絶妙だと思います。