2006-09-23 23:26:09
「幽霊船」/不思議のカケラ、小さな少年、満たされぬ思いを抱える者。それらのスケッチ
テーマ:国書刊行会
リチャード・ミドルトンは、夢を持ち、詩を詠み、散文を書き、極少数の篤い友情に恵まれたけれど、その生涯は不遇の作家だったという。
「幽霊船」による成功の直前、二十九歳の誕生日を迎えてまもなく、異郷の地、ブリュッセルの下宿で自殺を遂げた。
これは、そんなミドルトンがものした、スケッチのような小品集。
最初の「幽霊船」から、徐々に不思議の占める割合は薄くなり、「ある本の物語」辺りからは、世界はほぼ現実に着地する。実際に刊行されたものから、訳者の南條さんが順序を大きく変更したとのことであり、これも関係しているのかな。
特に好きだったのは、不思議系では「幽霊船」、「奇術師」。
現実系では「新入生」、「大芸術家」。
「幽霊船」
:ある嵐の日、フェアフィールドの村のかぶ畑に、幽霊船が座礁した。半幽(はんばけ)に見える船に乗った、バーソロミュー・ロバーツ船長が言うには、少々港の奥に来過ぎたようだけれど、彼らは人員補充のために立ち寄ったとの事。ここは海から50マイルも先だってのに!
フェアフィールドは不思議が満ちる村。大抵の事では驚かない村人達と、共に暮らすのはご先祖の幽霊たち。ところが、この幽霊船がやって来てから、大人しく上手く共存していた幽霊たちと村人達との仲がおかしくなり・・・・。
なんてったって、かぶの畑に乗り上げた船、という設定がいい。どこかの田舎町には、こんなことがあるのかもね。船が去って以降も、このかぶ畑で取れたかぶは、ラムの味がするってことだ。
「奇術師」
:奇術師が行った、オーディションを兼ねた舞台上のトリック。
観客は大受け、興行主も大喜びだけれど・・・。
「新入生」
:他の男の子達とは違う事に悩む繊細な少年。
イギリス版、「銀の匙」(中勘助)といった趣き。
「大芸術家」
:夢を持ち、自負を持ちながらも、倒れゆく芸術家。
芸術家の胸にぽっちり灯った希望が切ない。
全編、程よい感傷と、疎外された感受性と、それでも尚強い自分の中での自信のようなものを感じた。
目次
序 アーサー・マッケン
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幽霊船
ブライトン街道で
羊飼いの息子
棺桶屋
奇術師
逝けるエドワード
月の子たち
園生の鳥
誰か言ふべき
屋根の上の魚
小さな悲劇
詩人の寓話
ある本の物語
超人の伝記
高貴の血脈
警官の魂
幼い日のドラマ
新入生
大芸術家
雨降りの日
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解題
ミドルトン小伝











1 ■魔法の本棚
コメント&トラックバックありがとうございました。
この〈魔法の本棚〉シリーズ、あんまり読んでいる人がいないようなので、コメントいただいて、嬉しく思ってます。
『幽霊船』の中では、僕も『幽霊船』と『奇術師』が好きですね。とくに『幽霊船』は、全体的に暗いトーンのこの短編集の中にあって、やたらと陽気な雰囲気も出色だと思います。もう少し長生きしていたら、もっと傑作を書いてくれていたんでしょうね。
〈魔法の本棚〉シリーズは、他の巻も面白いですよ。とくにファンタスティックな寓話集コッパード『郵便局と蛇』、澄み切った世界観が魅力的なアレクサンドル・グリーン『消えた太陽』がオススメです。
それでは、またお邪魔させていただきます。