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2006-08-09 23:11:20

「三月は深き紅の淵を」/物語の中に潜り込むしあわせ

テーマ:講談社
恩田 陸
三月は深き紅の淵を

これは一冊の本を巡る物語。
麦の海に沈む果実 」にも、この本の存在はちらっと出てきたよね。

それは赤い表紙の「三月は深き紅の淵を」という、謎めいた四部作の小説。

目次
第一章 待っている人々
第二章 出雲夜想曲
第三章 虹と雲と鳥と
第四章 回転木馬

四部作だという、「三月は深き紅の淵を」と同じく、この本もまた四部構成で語られる。

「待っている人々」は、過去、「三月は深き紅の淵を」を読み、もう十年以上もその本を探し続けている四人の老人たちの話。老人たちのうちの一人、金子が会長を務める会社の若手社員、鮫島巧一は、彼らが開く「三月のお茶会」に招かれる。

「三月は深き紅の淵を」は、とても特殊な本なのだという。私家版で著者名もないこの本は、配られる時に細かな条件が付けられた。一つ、作者の名を明かさない事、一つ、コピーを取らない事。そして友人に貸す場合、本を読ませていいのはたった一人、それもまた一晩のみ。二百部にも満たないその本は、半年程出回った後、作者の代理人を名乗る人物が回収に当たったのだという。

さて、四人の老人たちが語る所によると、「三月は深き紅の淵を」とはこんな本なのだという。

 第一部「黒と茶の幻想」             :副題「風の話」
 :四人の壮年の男女が旅をする話
 第二部「冬の湖」                 :副題「夜の話」
 :失踪した恋人を探す話
 第三部「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 :副題「血の話」
 :少女が生き別れになった腹違いの兄を探す話
 第四部「鳩笛」                   :副題「時の話」
 :小説家の頭の中に浮かんでくるイメージの話

彼ら四人の饒舌な語りが面白い章。彼らに圧倒されながらも、膨大な本が溢れる屋敷の中で、「三月は深き紅の淵を」を探すことになった、鮫島巧一と共にわくわくと読み進むことが出来る。白い熊のような犬、「役立たず」も好き。
ここで描かれる「三月は深き紅の淵を」の本の世界もまた、実に魅力的。さわりだからこそ興味を惹かれる、そそられる物語ってあるよね。予感は物語を魅力的にする。

「出雲夜想曲」は、二人の編集者の話。彼女たち二人は寝台列車で出雲に向かう。夜行列車で山陰へ。さて、忙しい編集者である彼女たちが、なぜこんな旅をすることになったのか? 「物語は物語自身のために存在する」を信条とし、物語を何よりも愛する編集者、朱音。隆子は彼女を誘って、「三月は深き紅の淵を」を巡る旅をする。果たして、隆子は「三月は深き紅の淵を」の作者を突き止めたのか?
この章でのおまけ(?)としては、「禁じられた楽園 」に出てきた烏山響一の絵が出てきます。微妙に繋がっているみたい。

「虹と雲と鳥と」は、亡くなった二人の女子高生を巡るお話。太陽と月のような関係だった、美しい彼女たちはなぜ死ななくてはならなかったのか? 章のタイトル、「虹と雲と鳥と」は、亡くなった美佐緒が残したノートのタイトルからとられている。美佐緒にノートを託された奈央子は、ある予感を持つ。

「回転木馬」は、「待っている人々」の中で語られる第四部のように、この「三月は深き紅の淵を」を書き始めようとしている誰かのお話。「麦の海に沈む果実 」のシーンが随所に挿入され、また最後には「黒と茶の幻想 」の一部が挿入される。

私が好きな恩田さんの描写、物語が始まる予感がいっぱい。
ぐるぐると回る物語に満足~、な一冊。

← こちらは文庫。単行本の方もそうだけど、この本を読むと、表紙に描かれた人物の絵にニヤリとしてしまう。
恩田 陸
三月は深き紅の淵を

コメント

[コメント記入欄を表示]

1 ■うわ~偶然です

こんばんは。
今私も更新したところなんですけれど、
恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』について書いていたのです。
ちょっとびっくりしました。
「物語のなかに潜り込むしあわせ」という言葉に、共感です。そうです、それが私も言いたかったことなんです!!
なんだかうれしいです。

2 ■>kyoko914さん

いらっしゃいませ~。
おお、ほんと、偶然でしたね!笑
「麦の海に沈む果実」も、魅力的な物語でしたよね♪
「物語の中に潜り込むしあわせ」。共感してくださって、私も嬉しいでーす。読みながら、恩田さんの「物語に対する愛」を感じました。物語をまるで愛撫するように味わうような感覚でした♪

3 ■遅くてスンマセン

やっぱり、恩田さんって独特な雰囲気を持っていますよね~。どんどん深みにはまっていってしまう怖いような嬉しいような気分。
1冊の本を探して、洋館に泊まったり、旅をしたり・・・。本好きには堪らない設定なのも、ニクイです。夜行列車の旅は楽しそうでした~。こういう旅してみたいなぁ。
私もTBさせて下さいな。

4 ■>喋喋雲さん

いえいえ、全然遅くないですよー。トラバ返し、ありがとうございました♪
そうそう、これ、読んだら、寝台列車に乗りたくなっちゃって。笑 ちょうど出雲方面に行っていたし(既に飛行機取っちゃってたから、諦めたけど・・・)。しかし、恩田さんはお酒が強いんですかねえ?笑 あの旅、楽しそうだったけど、滅茶苦茶飲んで食べてましたよね。
一章の洋館も良かったな~。本好きにはたまりませんよね♪

5 ■恩田ワールド

これ、ほかの作品とのつながりを発見しちゃうとなんだかうれしくなってしましますよね。うーん、こうしてどんどん恩田ワールドにはまっていってしまうのだよね~。
私もTBさせてくださいまし。

6 ■>まんぷくガールさん

トラバ返し、ありがとうございます♪
そうなんですよ、他の作品との繋がりを発見すると、嬉しくなっちゃいますよねー。恩田ワールドも、あちこちで繋がっているからなぁ。
この「三月~」は特に、物語の中で物語が繋がっている構成だったし、いやー、堪能しました♪

7 ■コレ、読んだんだけど・・・

おもしろいのはおもしろいんだけど、うまく飲み込めてない・・・
恩田さんの物語で「こういうことか!」て理解できるのって6割くらいなんですよね・・・
わからないながらも読みたくなるところがスゴイけど、理解できなさすぎで自分の愚かさにうちのめされたりもします。

8 ■>ridiaさん

このお話は、特に読んだ順番も重要になるような気も・・・。 ridiaさんは、どんな順番で読まれたのかなぁ。私は、「麦の上に~」→「黒と茶~」→「三月は~」でした。
あはは、そういう意味でいうと、私、「夏の名残の薔薇」がヤバかったです。笑 記事まで書いてるくせに、ええと、で、結局、何が起こったことで起こらなかったことだっけ?、って感じでして。
酩酊するようなものも多いので、ぐるぐる気持ちよく読んで、説明しようとしてあれ?、ということが多いような気がします。笑

9 ■やっと読みました~♪

ようやく読みました。う~ん、いろいろ入っていて、面白かったです♪ 1冊で、4冊分読めたようなお得感がありますね。突っ走っている感じの第四部が好きです。
こんどは「麦の海に沈む果実」を読まなくちゃだわ、、、(^ ^;)

10 ■>主婦いちみさん

読まれましたねー♪
ふふ、恩田さんはオチとかよりも、予感の物語を紡ぐ方だと思うので、こういう作品の方が持ち味が出ているように思います。ある意味、投げっぱのところもあるように思いますけどね。笑
第四部。確かに突っ走ってましたねー。そうそう、次は「麦の海~」ですね! その続編の「黄昏の百合の骨」もありますよー。でも、途中、「麦~」の主人公の短編が載ってる、「図書室の海」を読んだ方がいいのかも。「図書室の海」は短編集で、SFっぽいのもあるので、いちみさん、お好きなんじゃないかなぁ、と思います(SF素人の私が言うので、あてになりませんが・・・。笑)。

トラバ、どもです♪ 後ほど、チャレンジしてみますねー(ああ、でもまたダメかも・・・)。

11 ■物語への気持ち

つなさんが上のコメントで書かれている「物語への愛」私もすごく感じました! 私の記事コメント欄でのところにも、まさにそんな趣旨のことを書いたところ!
それから、ストーリイの起承転結がどうとか、オチや結論がどうだとか、そういうことを期待して読むのとは全く違った「過程」を楽しむのが、恩田さんの本なのかな・・・とも、感じました。

これからもまた、これぞ!というのがあったら、お勧めくださいね!

12 ■>有閑マダムさん

こんばんはー。
そう、やっぱり、物語への愛がいいですよねー♪ 物語を愛する人は、みんないい人だ、なんて。笑
恩田さんは、私も過程を楽しむ作家さんなのだと思うのです。うふふ、では、またこれぞというのを見つけたら、ご報告しますね。でも、近隣の図書館に置いてある恩田さんを読みきってしまったのです。笑 ああ、新しいの入らないかなー。

13 ■無題

読者登録ありがとうございました!

こういう風に、現実を侵食しながら読み手さえも巻き込み、物語自身が勝手に増殖していく小説っていいですよね~。これからどのようにストーリーが転がっていくか、想像がつきませんし。

TBかえさせていただきました。

14 ■>おんもらきさん

どもども。時々、お邪魔していたのですが、登録した方が更新も分かるし、いいな~と。笑 今後とも、どうぞよろしくお願いします。

そうそう、この物語は楽しかったですねえ。物語の力を感じました♪ 「アラビアの夜の種族」もちょっとそんな感じでしたよね。

トラバ返しもありがとうございました♪

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