「三月は深き紅の淵を」/物語の中に潜り込むしあわせ
テーマ:講談社
これは一冊の本を巡る物語。
「麦の海に沈む果実 」にも、この本の存在はちらっと出てきたよね。
それは赤い表紙の「三月は深き紅の淵を」という、謎めいた四部作の小説。
目次
第一章 待っている人々
第二章 出雲夜想曲
第三章 虹と雲と鳥と
第四章 回転木馬
四部作だという、「三月は深き紅の淵を」と同じく、この本もまた四部構成で語られる。
「待っている人々」は、過去、「三月は深き紅の淵を」を読み、もう十年以上もその本を探し続けている四人の老人たちの話。老人たちのうちの一人、金子が会長を務める会社の若手社員、鮫島巧一は、彼らが開く「三月のお茶会」に招かれる。
「三月は深き紅の淵を」は、とても特殊な本なのだという。私家版で著者名もないこの本は、配られる時に細かな条件が付けられた。一つ、作者の名を明かさない事、一つ、コピーを取らない事。そして友人に貸す場合、本を読ませていいのはたった一人、それもまた一晩のみ。二百部にも満たないその本は、半年程出回った後、作者の代理人を名乗る人物が回収に当たったのだという。
さて、四人の老人たちが語る所によると、「三月は深き紅の淵を」とはこんな本なのだという。
第一部「黒と茶の幻想」 :副題「風の話」
:四人の壮年の男女が旅をする話
第二部「冬の湖」 :副題「夜の話」
:失踪した恋人を探す話
第三部「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 :副題「血の話」
:少女が生き別れになった腹違いの兄を探す話
第四部「鳩笛」 :副題「時の話」
:小説家の頭の中に浮かんでくるイメージの話
彼ら四人の饒舌な語りが面白い章。彼らに圧倒されながらも、膨大な本が溢れる屋敷の中で、「三月は深き紅の淵を」を探すことになった、鮫島巧一と共にわくわくと読み進むことが出来る。白い熊のような犬、「役立たず」も好き。
ここで描かれる「三月は深き紅の淵を」の本の世界もまた、実に魅力的。さわりだからこそ興味を惹かれる、そそられる物語ってあるよね。予感は物語を魅力的にする。
「出雲夜想曲」は、二人の編集者の話。彼女たち二人は寝台列車で出雲に向かう。夜行列車で山陰へ。さて、忙しい編集者である彼女たちが、なぜこんな旅をすることになったのか? 「物語は物語自身のために存在する」を信条とし、物語を何よりも愛する編集者、朱音。隆子は彼女を誘って、「三月は深き紅の淵を」を巡る旅をする。果たして、隆子は「三月は深き紅の淵を」の作者を突き止めたのか?
この章でのおまけ(?)としては、「禁じられた楽園 」に出てきた烏山響一の絵が出てきます。微妙に繋がっているみたい。
「虹と雲と鳥と」は、亡くなった二人の女子高生を巡るお話。太陽と月のような関係だった、美しい彼女たちはなぜ死ななくてはならなかったのか? 章のタイトル、「虹と雲と鳥と」は、亡くなった美佐緒が残したノートのタイトルからとられている。美佐緒にノートを託された奈央子は、ある予感を持つ。
「回転木馬」は、「待っている人々」の中で語られる第四部のように、この「三月は深き紅の淵を」を書き始めようとしている誰かのお話。「麦の海に沈む果実 」のシーンが随所に挿入され、また最後には「黒と茶の幻想 」の一部が挿入される。
私が好きな恩田さんの描写、物語が始まる予感がいっぱい。
ぐるぐると回る物語に満足~、な一冊。
← こちらは文庫。単行本の方もそうだけど、この本を読むと、表紙に描かれた人物の絵にニヤリとしてしまう。 










1 ■うわ~偶然です
こんばんは。
今私も更新したところなんですけれど、
恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』について書いていたのです。
ちょっとびっくりしました。
「物語のなかに潜り込むしあわせ」という言葉に、共感です。そうです、それが私も言いたかったことなんです!!
なんだかうれしいです。