2006-07-16 21:27:13
「鳥少年」/怖い短編集
テーマ:徳間書店
- 皆川 博子
- 「鳥少年
」
これは、皆川博子さんの短編集。
幻想的でホラー調でもあるんだけど、ここに描かれているのは、人間の業というか、どうしようもない感情。ある意味現実的なんだけど、短編だけに説明が少なく、ぷつんと断ち切られるために、より怖さを感じるのかも。
目次
火焔樹の下で
卵
血浴み
指
黒蝶
密室遊戯
坩堝
サイレント・ナイト
魔女
緑金譜
滝姫
ゆびきり
鳥少年
「卵」、「黒蝶」は、芝居者達のじっとりした舞台裏の話。女形の嫉妬は怖い。
「緑金譜」、「滝姫」は、姉への密かな思慕を描く。
作品としての出来は良く分からないけれど、「血浴み」は描かれた女性の人生が哀しい。地方都市の名家の末娘、夏代は離婚して子連れで郷里に戻ってきた女。その後も、父親を決して明かさない、またそれぞれに父親の違う子どもを、ぽこぽこと産む。淫乱だと後ろ指をさされても、夏代には夏代なりのルールがある。夏代のもとに、詩の文芸誌で知り合った須賀という女が、やって来る。夫に離婚を切り出され、また浮気相手にも捨てられた彼女はボロボロ。しかし、泣ける彼女はいい。泣けない夏代とて、男に捨てられて、決して平気なわけではない。
「魔女」もまた怖いなぁ。
独りの女が深夜、部屋にこもっているとき、どんな力を持つものか、男は知らないのだだって。魔女達の対象である、美容師見習いの六也が健全なだけに、この怖さが際立つ一編。
「指」、「密室遊戯」は何とも隠微な味わい。
「指」。夫の浮気を知った依子は、年の近い叔父の結婚式で知った、叔母のつよさに惹かれ、叔母の住む町へと向かう。以前、人形作りをしていたという叔母の元には、既に先客があった。それは、睡眠薬で眠らされた二人の若い男性。叔母は、眠る若い男性に化粧を施す。美しく、艶かしく、汗ばんだ無骨なTシャツとジーンズの上に、男とも女ともつかぬ艶やかな顔が眠る。依子もまた、その魅力に酔うが・・・。
「密室遊戯」。「わたし」が住む部屋は、肉屋の二階を三間に仕切ったもの。ある日、「わたし」は隣の部屋から明かりが漏れていることに気付く。隣の部屋の女の生活を覗き見る喜びを知った「わたし」は、女に教えられた甘美な遊びに酔う。隣の女もまた、覗かれる事を知って、「わたし」に遊びを教えたのかもしれない。
のほほんと生きているので、こんな怖い経験はないのだけど、一つのパラレルワールドとして、自分の現実の他に、こんな世界が実は成立しているのかも、と思うと、更に怖い本。うーむ、暑い夏にちょうどいいか? ちょっとぞぞぞ。
*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
1 ■隠微
皆川博子のホラー短編は、ほんと、隠微な味わいというのがぴったりだと思う。
なんつか、肉の後ろに潜む恐怖というのが感じられるんだよなあ。
長編も読ませる作家だと思うけれど、俺は短編の方が好き。