2006-06-05 22:20:37
「土の中の子供」/一筋の光
テーマ:新潮社
人間の中には深く暗い闇があるけれど、同様にそこには細くとも一筋の光明がある。舞城氏であれば、こういったお話を、陽性で暴力的な描写で描くのだろうけれど、こちらはひたすら静か。ほとんど陰鬱といってもいい。でも、どちらも非常に強い「文圧」で描かれていると思う(「文圧」って舞城氏の帯によく書いてあるんだ)。
目次
土の中の子供
蜘蛛の声
そうはいっても、「蜘蛛の声」にはあまり光を感じることは出来なかった。というわけで、「土の中の子供」について。「蜘蛛の声」よりも「土の中の子供」の方が後の作とのことで、その辺の違いもあるのかな。
主人公である「私」は幼少時に、遠い親戚の家でひどい虐待を受けて育った。その後、施設に引き取られ、自活するようになって尚、彼は自ら堕ちていくようである。わざわざ暴走族に吸殻をぶつけてみたり、意味もなく仕事を休んでみたり。
「私」の家にふらふらと棲み付いた、白湯子もまた、自ら堕ちていくような女。
彼ら二人ともが、ダメになること、「人間の最低ライン」を知る事を望むようである。
ひどすぎる虐待が「私」に「リアル」を与えたため、彼は常に危うい所からリアルに近づこうとしてしまうのだ。
何か、他にあるのではないだろうか。無事でいられたことを全身で喜ぶような、私の全てが震えて止まらないような瞬間が、あのような暴力とつりあうような、喜びが、この世界にはあるのではないだろうか。
恐怖を克服するために、自ら恐怖を作り出してしまうような「私」。恐怖の中からしか、「全てが震えて止まらないような瞬間」を見出せない「私」が、自分と周囲との関わり、白湯子との関わりの中で少しずつ変わっていく・・・。
「私」は過去、埋められた「土の中から」生まれ出でた瞬間を思い出す。
「僕は、土の中から生まれたんですよ」
「だから親はいません。今の僕には、もう、関係ないんです」
「私」は一筋の光を胸に、白湯子と共に生きて行くことを決意する。今は二人で一人前のようであるけれど、こんな風に自虐的になってしまった人間が、人のために生きようと思えるのも凄い事。彼らはきっと、この後、自分の人生を生きる事が出来るようになるはずだ。
「あとがき」も良かったです。引用します。
僕は小説というものに、随分と救われてきた。世界の成り立ちや人間を深く掘り下げようとし、突き詰めて開示するような物語、そういったものに出会っていなければ、僕の人生は違ったものになっていたと思う。
私もまた、物語には随分救われてきたと思う。
勿論、中村氏とは違って、読む方専門だけれどね。
*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。











1 ■私も読みました
このお話は本当に陰鬱ですよねぇ。でも私は結構好みでした。ずっと圧迫されてきた読み手が最期にわずかな光で救われるという描き方が上手いなぁって思います。
2人がお互いを必要としているという事実を喜ばしく思いながら本を閉じました。
舞城さんの本、益々読んでみたくなりました。図書館にないので、買っちゃおうかな?
TBさせてくださいな。