「桜宵」/広がる北森ワールド
テーマ:講談社
東急田園都市線三軒茶屋の駅から商店街を抜け、いくつかの路地の闇を踏みしめたところにぽってりと等身大の白い提灯が浮かぶ。それが、この《香菜里家(かなりや)》の目印である。決して立地条件がよいわけでもないのに、客足が途切れないのは、ここをさながら隠れ家のように愛してやまない人々が数多くいるためだ。
目次
十五周年
桜宵
犬のお告げ
旅人の真実
約束
「旅人の真実」、「犬のお告げ」を除けば、殺人事件だって出てこないし、所謂、昨今流行の日常の謎的ミステリー。常連客がふと漏らす不思議、謎を、その時店にいた、他の客がやいのやいの言い、店主・工藤がそこに一筋の道をきっちり付ける(「約束」のみ、舞台は香菜里屋ではない)。
店主の工藤は安楽椅子探偵でもあり、食事を供し、一歩引いた態度である所からいうと、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」の給仕ヘンリーを思わせる。
「少し変わった物を作ってみたのですが」、という言葉と共に出される、彼の創作料理も魅力的。
広がる北森ワールドとしては、「たまに来る民族学の先生」というのは、蓮丈那智 のことであろうし、その縁で冬狐堂 とも繋がっているはず。
読んでいて気になったのは、工藤とはまた異なる個性のバーマン、香月の池尻大橋近くにあるという、茶室をイメージして造られたというお店。これもまた、どこかの作品で出てきたりしているのかなー。色々と繋がっている北森ワールド。油断がなりませぬ。
北森作品は新しい物の見方や、物凄く新鮮な文体を見せてくれるわけではないのだけれど、質の高い粒の揃ったものを出してくれる、安心感のようなものがある。
これだけ読んでると、頭が偏るようにも思うけど、気楽に読むのに私には適している感じ。
この本も、いくら控えめにしているとはいえ、ビアバーの主人がなぜ謎に首を突っ込む!、とか、常連が色々口を突っ込んでくるお店は嫌よ、などないでもないけど、そこの所はお約束で目を瞑って、作中で工藤に料理を勧められるように、黙って北森さんの紡ぐ物語を味わった。












1 ■面白そう!
このお話も面白そうです。
図書館に行っても蓮丈那智シリーズが無いんです(涙)
この工藤さんって、私が読んだ「メインディッシュ」の料理好きのミケさんにそっくりなんですが・・・名前が違うような気がします。
作品同士がリンクするのに、かなり弱い私。北森さんの作品は色々読んでみたいですね。