「花まんま」/それはこの世ならぬもの
テーマ:文藝春秋
大阪の下町を舞台に描かれる、どこか淋しく、やさしい六篇の物語。
目次
トカビの夜
妖精生物
摩訶不思議
花まんま
送りん婆
凍蝶
「トカビの夜」
東京から都落ち同然で移り住んだ、Sという下町にある文化住宅。両親はその境遇に慣れないようであったが、少年だったユキオは袋小路で近所の子供達と黄金の日々を過ごした。みなが、同じように貧しい中に、ある外国籍の家族が暮らしていた。
「トカビ」とは、本当はトッカビやトッケビ、トクカビと発音される、朝鮮のいたずらばかりする子鬼のこと。日本で生まれ育ったチュンジの発音では、「トカビ」となる。病がちだったチュンジの弟、チェンホが亡くなってから、近隣で奇怪な出来事が多発したのだが・・・。
「妖精生物」
少女の頃、「私」は国電の高架下で、クラゲのような『妖精生物』を買った。性の目覚めを表すかのような、妖精生物の不思議な感触。妖精生物は幸せをもたらすのだという、男の言葉とは裏腹に、世津子の家族を不幸が襲う。怒りを覚えた世津子は、妖精生物を叩き捨てる。
この話の怖いところは、最後の部分。妖精生物は彼女に、「その幸せでいいのか?」と問いかける。
「摩訶不思議」
アホな死に方をした、ツトムおっちゃんの話。ふらふらと定職に付かず、女のヒモのようなことをしていたおっちゃん。人並みの葬式をとの願い(というか兄の見栄)むなしく、最後までおっちゃんはやってくれる。
女性陣が強いお話。
「花まんま」
俊樹の大事な妹フミ子。父亡き後、俊樹はフミ子を更に大切に思う。30ちょっとの若さで亡くなってしまった父は、フミ子が生まれた時、感極まって病院の玄関でバンザイしてしまうほど、その誕生を喜んだ。
大事な大事な妹フミ子。俊樹がお父ちゃんに守ると約束したフミ子。いつからか様子がおかしくなった彼女は、前世を思い出したのだという。前世での父を心配したフミ子は、そこに行きたいと願うのだが・・・。損な役回り、兄貴の思い。
「送りん婆」
送りん婆は、「送り言葉」を聞かせて、魂と肉体を切り離す。これによって、ひどい苦しみの中で死を待つしかない人々に、近しい者達との別れの時間をおくる事が出来るのだ。先代送りん婆に、後継者と見込まれたみさ子の少女時代のお話。
「送りん婆」であるおばさんの、ただ一度の「外道」は苦い。戦時中には実際にあっても不思議ではないお話。
「凍蝶」
蔑まれる家に生まれた、ミチオの話。子供の世界は、大人の世界の差別を如実に反映する。寂しい少年であった、ミチオが出会い、ほのかな恋心を抱いたミワさんのお話。
書いてみて思ったけれど、どの短編においても、本当に死が身近。であるからして、この世とあの世との境界も朧。「送りん婆」と「凍蝶」の二編が、良かった。
大阪に土地勘が全くないので、良く分からないのだけれど、かの地をご存知の方なら、どう読まれるのかなぁ、と思った。あくまでも物語の中の虚構の舞台なのか、それとも、本当にこういう雰囲気が色濃く残っているのだろうか。
「みすじゃん 。」のおんもらきさんの記事にリンク 。











1 ■大阪に
ちょっとだけ住んでいたことがあります。土地勘がどれだけあるのかは、微妙ですが読んでみようかなと思いました。