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2006-02-20 20:35:25

「幻獣の書-パラディスの秘録」/醜き獣

テーマ:角川書店
タニス リー, Tanith Lee, 浅羽 莢子
幻獣の書―パラディスの秘録

目次
緑の書
 
エメラルドの瞳
巻の一 学徒
巻の二 花嫁
巻の三 ユダヤびと
巻の四 贖罪山羊
巻の五 寡婦
紫の書
 
紫水晶を出でて
巻の一 ローマびと
巻の二 自殺者
緑の書
 
エメラルドの瞳
巻の六 狂人
巻の七 魔物

この世界には、流れるような鱗のモザイクからなる金属(かね)のような肌を、黒い嘴からは細い黒蚯蚓めいた舌が見える、鳥の頭を持った獣がいる。其の瞳は美しい緑の玉、しかしそこには知性のかけらも見られない。それはウトゥク。変身と化生により生を受くるもの。ウトゥクは官能において、血と肉の略奪を欲し、喰らい、貪るもの。おのが種を通じ、他の女に同様の怪物を孕ますことも出来るが、人に宿りてある限り、ウトゥクそのものを害することは出来ない。この獣は、女を引き裂き、犯し、男を引き裂き、その腸を引きずり出す。

ヨーロッパのとある幻想の都市、パラ・ディスにやって来た学徒ラウーレンは、没落貴族ディスカレの屋敷に宿をとることとなった。パラ・ディスは公爵が統治し、教会や貴族一門の館がならぶ街。その中でラウーレンの下宿先、ディスカレの館のみは、零落のさま激しく、また、誰もがその名を忌み嫌う。屋敷には老婆と馬丁しかいないというのに、ラウーレンは若く美しい娘を幾度か見かける。磁器を思わせる面、美しい淡い金髪、心持ち吊りぎみに刻まれた、澄んだ一対のエメラルドのような瞳。若く、才気走ったラウーレンには、恐れるものなど何もない。ラウーレンはこの娘、<エリーズ・ディスカレ>が語る物語を聞くことになる。それが恐ろしい結果をもたらすことも知らず・・・。

若きエリーズ・ラ・ヴァルが嫁いだのは、許婚、エロス・ディスカレのもとであった。あの一族は魔の眷属、一皮剥けば人間ではないという、土地の侍女の言葉に怯えるエリーズであったが、エロスはほっそりとした伸びやかな体、エリーズの初恋である、教会の壁に描かれた美しい苦悩の殉教者ヨハネスにも似た面差しを持つ、美しい若者であった。エリーズは彼に恋焦がれるが、彼女の夫は指一本たりとも、その身に触れることはなかった。それどころか夫は彼女の元を離れ、都に旅立つという。彼女の身に一度として触れることもないまま!とうとう彼女はサタンにその身を売り渡し、夫を陥れる策略を練る。一度でいいから、この身に触れて欲しいのだ。彼女の願いは叶ったけれど、その代償は大きかった。エリーズの話を全て聞き、彼女と交わったラウーレンとて、それは同じこと。

途中に挿入される「紫の書」では、時代はローマ時代へと遡る。運に無縁の百卒長、ウスカに与えられたのは、紫水晶の護符だった。妖しき娼婦がいうことには、この紫水晶の護符には、非常な利益があるのだという。確かに利益はあったのだが、この護符は途中で凶へと転ずるもの。紫水晶の力に喰われる前に、為すべき事はその石自体を喰らうこと。ウスカは難を逃れたかに見えたが、ああ、その力は完全に封じ込められたわけではなかったのだ。

この獣、魔物を迎え撃つのは、ユダヤ人の魔術師ハニナと、その娘ルケル。彼とウトゥクは、太古よりの仇敵であるのだという。「あれ」とハニナの原始の記憶には、幾多の戦の種が燻っている。それは砂漠の都であり、戦車であり、鎖の記憶である・・・。此度の戦に、ハニナは勝つことが出来るのだろうか。美しき娘、ルケルの助けを得て、ハニナは戦いに臨む。

幻想的で美しくエロティックな世界に、くらくらと酩酊する一冊。醜き獣も何とも哀切きわまりない。タニス・リー。遅ればせながら、この妖しい世界にはまりそうです。

コメント

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1 ■妖艶無類な世界

タニス・リーの作品世界を一言で表現するならば、「妖艶」という言葉がぶさわしいでしょう。
また、それが、浅羽訳、ぴったりはまるんだよな~。
堪能されましたか?
口当たりの良いワインが、思いの外まわってしまうように、タニス・リーは、好きになると離れられなくなる作家です(笑)。

2 ■>とらさん

こんばんはー!ええ、妖艶でしたー。でも、そこにぽっちり清純な香りが立上るようでもあり、そこがまたいいですね~。浅羽訳、堪能しました。この訳がまた素晴らしいですよね。
口当たりの良いワイン。むむ、なるほど。ぴったりなたとえですね!

3 ■清純な香り

そうそう、これがあるから、また、良いのです。単に妖艶なだけなら、くどくていやになってしまいますから。
しかし、本書もそうですが、タニス・リーの本はほとんど入手困難で、まことに困ったものです(笑)。

4 ■>とらさん

くどくていや。笑 そうですねー。これがまた、そこはかとなく香るのがいいな~、と思いました。
そうか、これもまた入手困難なのですね。図書館で何とか見つけた私は、鼻が利いたのだろうか・・・。笑 

5 ■嗅覚

そうです。
鼻がきいたのです。
(ふんふんふんふん)<かいでる
(一般)人より鼻がきくのが、獣なのです。

6 ■>とらさん

ふんふんふんふん。
(とらにーさまの真似っこで、美味しそうな本の匂いを嗅ぐつな猫。猫もやっぱり獣? でも、「幻獣の書」の獣はイヤ~。笑)

7 ■本のにおい

(ふんふんふん)
こっちに面白そうな本のにおいが……(とっとっとっとっ)。
つなおいで~。

猫も獣でしょう(笑)。
幻獣ではないでしょうが。

8 ■>とらさん

くんかくんか、くんかくんか。
お宝はっけーん!!!(ぴぴぴぴぴ。笑)

猫も獣。でも、幻獣ではありませんよね。笑 ほっ。

9 ■ぴぴぴぴぴ

猫はもっと優雅でかわいらしいですよ(笑)。
あっ。
だからってそんなにつきすすんだら……つなーっ。うまっちゃうぞー。

10 ■>とらさん

優雅でかわいらしい。
どうせ、どうせ、つな猫はーーー!(泣きながら走り去る。笑)

あ、走り去った挙句に、やっぱり突撃して埋まってしまいました。たすけて~(埋もれ)。笑

11 ■タニス・リーと来れば

『闇の公子』は読まないのですか~?

12 ■>rizwordsさん

「闇の子牛(違)」ですねーー。笑
私の読書は、手当たり次第というよりは、出会い頭に読んじゃう感じなので、今度「子牛」にぶつかったら読んでみまーす。

13 ■掘り返し

(むっさむっさむっさむっさ)
ああ。いたいた。
(くわえあげっ)
よごれちゃったから水浴びしようね。
そのあとは、はらの下にかいこんでおかなくては。

>rizwordsさん
つなさんにとっては、これこそが、
「闇の嚆矢」
だったもよー。

14 ■>とらさん

水浴び!ぬくぬく!笑
安心して、ぼへーーー。

そうそう、「幻獣の書」がまさに、私のハートにヒットしたのですー。笑<えーと、かぶら矢って意味でオッケーですか?

15 ■嚆矢

「こうし」と読みます。
ものごとのとっぱじめ、というような意味ですね~。

ちなみに、かぶらや(鏑矢)は、矢柄の途中にしかけがありまして、これを射はなつと、ぶぅぅぅぅぅんっっ というような音が出るようになってる矢かと。

16 ■>こうし

>とらさん
いや、わかんなかったので、軽く調べたら、「かぶら矢」って出てきたんですよー。なんと、それが間違いでしたのね。物事のとっぱじめ。なるほど。前回のとらさんのコメントを、きちんと理解できていかなったことにいまさら気づいたり。わーん!涙
たったったっ・・・(逃げ)。ああっ、また埋もれてしまった!笑

17 ■鏑矢

つなつなを混乱させるかなーと、前回のコメントには書かなかったのですが、鏑矢(かぶらや)は、確か、戦の最初に、
「これから俺たちは攻めるぞ~、覚悟しろ~っ」
と、威嚇をこめてはなたれるんですね。ゆえに、「嚆矢(こうし)」の説明に出てくるのだと思われます。ただ、「嚆矢」は、かぶらや、とは読まないのでした(笑)。

18 ■>読みはね

>とらさん
「闇の公子」シリーズで見たので、「こうし」だろうなぁとは思っていたのですが。笑 なるほど~、鏑矢も戦い始めの合図だったのですね。また一つ、教えてもらってしまったわ♪

19 ■軍記物

小学生高学年のころ、これにはまってたんですよ(笑)。
それで覚えた。
もっとも、その後ほとんど再読していませんから、もし間違えてたらごめん。<大丈夫だと思うのだが!(笑)

20 ■>とらさん

うーむ、渋い小学生ですね。笑
私のかぶら矢のイメージは、那須の与一。「かぶらは海に入りければ~」って、確か授業で覚えさせられたのです。

21 ■活字中毒だったので

ついに読むべき新たな本が手近になくなった時、親父の書棚に手がのびたのです(笑)。
無許可で、現代語訳の古典全集を引っ張り出していました。

22 ■>読むペース

>とらさん
や、やはりバリバリバリ!
・・・とらブルドーザー?笑
(なぎ倒~し。笑)

23 ■その当時は

まだまだ、仔とらでしたから、バリバリバリではなく、カリカリカリ、くらいではないでしょうか(笑)。
もっとも、やんちゃだったので、本はなぎ倒していたかも。

24 ■>カリカリはぐはぐ

>とらさん
ああっ、大事な蔵書に「仔とらの噛み跡」が!笑 かりっ?
でも、なぎ倒しなんですね。笑

25 ■それはもう

わんぱくだったので(笑)。
どーん、どしーん、ばたーん!
ばりばりばりばりっ。
ごろんごろんごろんごろん。

26 ■>暴れる仔とら

>とらさん
仔とらのお腹の下では、ぬくぬく出来ない模様。笑

27 ■もちろん仔とらとは

おなかの下にもぐりこむのではなく、一緒に転げ回って遊ぶのです!
どっしんばったん!
もぐりこむなら、2めーとるサイズのおとなのとらにしましょう(笑)

28 ■>子供と大人

>とらさん
どっちにもそれぞれの良さがあると。笑 でも、ぬくぬくが捨てがたいです。笑

29 ■それはきっと

まだまだ寒いから。
そして、つなつなが運動が苦手だからだ(笑)。

30 ■>まだまだ寒い

>とらさん
今週も寒そうですねえ。
そして、あはは。その通り~!
(もぞもぞ、ぬくぬく。笑)

31 ■戦慄のパラディス物語

「堕ちたる者の書」は挫折されたそうですが、一本目の「紅に染められ」で投げられたのでしょうか?二本目の「黄の殺意」が凄くて私は戦慄しました。ヤーウェよりタニス・リーがマジにネ申に思えます。「黄の殺意」未読なら読んでみて欲しいです。

32 ■>goldiusさん

いらっしゃいませ。
コメント&トラバありがとうございます。
(あちこちで擦れ違ってるように思うのですが、直接ではたぶん「はじめまして」でしょうか?)

そうなんですよ、「堕ちたる者の書」は、見事挫折してしまったのです・・・。
おっしゃる通り、たぶん、一本目で投げちゃったのだと思います。

そうか、神よりもなお神ですか。笑
リベンジしてみようかな~。
そして、「闇の公子」も!

33 ■「闇の公子」

は難しい漢字いっぱい出てきて耽美に萌えられますよ。浅羽さんの訳は素晴しいですな。

34 ■>goldiusさん

goldiusさんは、「闇の公子」も読まれてましたもんねー!
おお、耽美なんだ。
やはり、これは読まねば。ありがとうございます♪

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