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2006-01-20 11:56:07

「対岸の彼女」/大人になるのは何のため?

テーマ:文藝春秋

角田 光代

対岸の彼女

私たちは何のために年を重ねたのか。何のために大人になったのか。

大人になったら、子供の頃の悩みは全て払拭され、新しい自分、新しい周囲に恵まれるのだろうか。決してそうではない事を、大人は知っている。子供の頃悩まされたような人は、ある程度の集団になればどこにでもいるものだし、集団であればそこには派閥も勿論存在する。この本の小夜子のように、内気な自分に悩んだ子供時代を、自分の子供に重ねてしまったりもする。

どこの集団にも馴染むことが出来ず、娘のあかりにもなかなか「お友だち」が出来ない小夜子は、公園ジプシーとなって日々を過ごしていた。この閉塞した状況を抜け出すため、彼女は外の世界に職を求める。自分が外で働き、あかりを保育園に預ける事が出来れば、あかりにも友だちが出来るのではないか?
尖った声であかりを叱り付ける事もなくなるのではないか?

私たちは何のために大人になったのか。

物語は二つの時間軸で進む。その一つは、小夜子と、彼女が勤めることになった、「プラチナ・プラネット」の女社長・葵の上を流れる時間。もう一つは、葵の高校時代、葵と魚子(ナナコ)の上を流れる時間。

理解のない夫、姑に囲まれた小夜子、横浜の中学校でいじめに遭い、群馬の田舎町の女子高生となった葵。両者に共通するのは、どこにも行くことが出来ないという閉塞感。それでも、小夜子は大人であり、高校時代の葵は当然子供である。

私たちは何のために大人になったのか。

専業主婦となり家に入る前は、映画配給会社で所謂「クリエイティブ系」の仕事をしていた、小夜子の今度の仕事は肉体労働の清掃業。いじめに遭ったせいで、どことなく警戒心が抜けない葵の心にするりと入り込んできたのは、天真爛漫に見えるナナコ。さあ、二人は外へと脱出することが出来るのか。

既に、第134回の直木賞が発表されているというのに、今更第132回の受賞作の話をしていて何ですが、日常の細やかな、濃やかな話が好きな方に、是非読んで貰いたいと思うので、いつもはネタバレ満載の当ブログですが、今回はここで起こった事を全て書いてしまう気にはなれない(でも、皆さん既に読んでらっしゃる??汗)。

色々あって、葵の会社「プラチナ・プラネット」は空中分解し、葵とナナコは周囲の大人に引き離される。

何を言われても、こんな所に自分の大事なものはないのだから。嫌なら関わらなければいいのだから、という高校時代のナナコの言葉も真実だろう。子供時代の防御壁としては特に。けれども、騙されても信じる事を選び取ることもまた真実であり、迷惑を掛けてはいけない、文句を言われないようにと、一人で背負い込む事をせずに、人と関わっていく生き方もある。私たちが年を重ねるのは、人と関わり合う事が煩わしくなった時、都合よく生活に逃げこむためではないはずなのだ。

大人になるという事は、年を重ね、それぞれ違う場所に立つという事でもある。
でも、違う環境、立場にいる人だって、全く別のルートから同じように苦労しながら、同じ一つの丘を登ってきたのかもしれない。違う場所にいても、違うものを見ていても、それは「変わって」しまう事と同義ではない。そして、大人になった私達には、足がある。選んだ場所に行くことの出来る足がある。
*****************************************************
とてもいい本でした。今現在、色々と関わりの少ない状況にある自分にとっては、イタイ本であることもまた真実なのですが…。角田光代さん、「菊葉荘の幽霊たち」から入って、これはあまり好みではなかったので、若干敬遠気味だったのですが、これからは他の本も読んでみたいと思います。

コメント

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1 ■これ、よかったです!

つなさーん、お元気ですかー?(だいぶくだけてきてますね…)
これ、去年読んだのです(よって記憶が流れてる)が「良かった」ことだけは覚えています!!
昨日の記事の「トラちゃん」も面白そうですね♪(群さんに一時期はまっていたことがあります)

2 ■>gerberaさん

いらっしゃいませ、どうぞどんどんくだけて下さい♪(くつろいでいって下さいねー。笑)
元気ですよー。最近は、gerberaさんの所で、ペトロニウスさんをお見掛けしたりもして(逆もまたね)、繋がっていって、ちょっと嬉しかったりします♪

gerberaさんも、これ、既に読まれているのですね。私、遅すぎ?笑 良かったですよね~。良かったけど、あんまり話しちゃうのは、惜しい感じでした。最後に繋がる所、ぶわーっときました。

「トラちゃん」は、名前が議論(?)に上がっていますが、面白い本ですよ。群さんの視線って、面白いですよね。私も本エッセイははまってました♪

3 ■takam16

エラくふるい記事を探してくれたようで....

これでは
「つなさん」でなく

「ジムさん」

だな。
ついでに「ボール」もお忘れなく。

4 ■>takam16さん

ふふ、確か合った筈、と探してきました。しかも、過去自分がコメントしていたような。笑

ジムですか。ナゼ??笑

ちなみにガンダム占いで、夫は「ボール」でした。地味すぎる。笑

5 ■大人って

ただいま実家です。
こっちはすごい雪ですよ~。

大人って子どもの頃よりも自由ですよね。
選べる道とか。
子どもの頃って嫌でも学校へ行かなくちゃみたいな
ある程度の道が決められているじゃないですか。
でも、大人になると自分で決めて歩ける。
その代わり責任も伴うけど・・・。
きっとそれが大人になったってことなんでしょうね。

6 ■>みわさん

ご実家にいらっしゃるのね。雪、だいじょぶですかー?
でも、お子さんは喜んでるのかな♪

トラバ返しありがとうございます。
大人って自由なはずだけれど、生きてる間に、色々な雑事がくっ付いて来て、それを理由にやらない事も多いような気がします。
なんか、そういう自分に喝を入れられた気分になる物語でした。
好きな所に、自分で決めて歩いていけるのが、大人なのにね。

7 ■こんばんは

トラックバックいただいていたのに、すごく遅くなってしまってすみませんm(_ _)m
角田さん、「空中庭園」あたりから作風が変わったんじゃないかと思いますです。「菊葉荘の幽霊たち」は読んでいないのですが、「対岸の彼女」から遡って何作か読んで、そんなことを思いました。
遅くなりましたが、トラックバックさせてください。
(ahahaんとこにいただいたコメントには、まだご返事が書けてないぃ(x_x)☆\(-_-メ)バキ)

8 ■>ahahaさん

こんばんはー。お忙しそうですね。
コメントレスは、お気になさらず♪
ゆっくり待ってまーす。笑

次はやっぱり「空中庭園」かなぁ。
遡るより、新しい本を読む方が良さそうですね。笑

トラバ返しもありがとうございました♪

9 ■角田光代の「対岸の彼女」を読んだ!

遅くなりましたが、やっと読みました。
トラックバックさせていただきます。
よろしくお願いします。

10 ■>tonton3さん

また精力的に読書なさっているのですね♪ 後ほどお返しいたしまーす。

11 ■いまごろ・・・

この記事を書いているつなさんが、ちょっと遅れ気味??と気にしていらっしゃる様子なのに、さらに2年遅れてやっと読んだ私。
でも、このテーマは古くならないんじゃないかなーと思いますね。

大人になって、なんとなく自分というものの姿を「こんなもの」と見えてしまったような気がするお年頃の人にとって、またもう少し新しいステージに頑張って立ってみることの大切さを教えてくれるような気がしました。
そう、子供の頃と違って、自分で選び歩いていけるというのは、ありがたい事です!!

12 ■>有閑マダムさん

「人生ベストテン」ではちょっとへこんだ私ですが(笑)、これは明るい気持ちになりましたよ~。
このテーマは、ほんといつ読んでもきっと大丈夫ですよね。

そうですねえ、大人になると、自動的にステージが変わることはそうないのだけれど、何せ、大人には足がある。自ら新しい場所を探して、そこで頑張ることが出来るんですよね。

トラバ返しもありがとうございました♪

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