「酒仙」/酒星降臨!
テーマ:新潮社calix meus inebrians quam praeclarus
(かりくす めうす いねぶりあんす くあむ ぷらえくらあるす)
いきなり佳境から引いてしまいますが、これはラテン語。最初の部分は比較的時がゆったりと流れるので、退屈される方もいらっしゃるかもしれないけれど、ラストの佳境の部分はほんとに燃えます。この言葉は、一体ナニ?と思われた方(特に酒飲みの方)は、是非読んでみてくださいなー。
さて、本の筋に戻って、最初から。主人公暮葉左近は、御開府以来江戸に住み暮らし、巨万の富を築いた旧家に生まれたのだが、現当主、左近から数えて七代前、暮葉家に突如として異変が起こる。すなわち、代々下戸でしまりのよい人間ばかりだった所に、中年に至って升酒の味を覚え、生涯大酔した当主が現れたのだ。以来、一族は代を重ねるごとに酒量が増え、身すぎ世すぎの才覚と情熱は、それに反比例してすぼまっていく・・・。そして左近に至って、とうとう暮葉家の経営は立ち行かなくなってしまった。奉公人には一人残らず暇を出し、屋敷も明日には債鬼に明け渡さねばならぬ。
どうにもならなくなった左近は、ぬる燗をした濃い飴色の紹興酒、特級品の状元紅の中で、今にも酔蟹となって死なんとす!そこに現れたるは、蓬莱八仙の一人である鉄拐李。左近の額にあるしるしを認めた鉄拐仙人は、左近を抱えて、仙界へと舞い戻る。左近の額にあらわれたるは、実は「酒星のしるし」であった。千年に一度、その身に酒星をおびた人間が生まれるのは、仙人たれば誰もが知っていること。酒星とは千年紀が生命と活力の盛りをすぎて、天地に滅びの影がさす時、世界を救う人間として選ばれる救世主のしるし。
虫の息であった左近は、南総里見城跡、苔むした石塔の後ろ、秘密の岩窟の奥深くに潜む、秘教・金樽教の神殿にて、聖徳利の秘蹟を受け、息を吹き返す。聖徳利の秘蹟によって蘇った左近は、「徳利真人」となる。ちなみに、抱樽大仙によると、二千年ばかり前に、ゴルゴダの丘で尺解を果たした小僧もいた、とのこと。 救世主(メシヤ)となった左近は、膳部のどぶ六を御付として、酒徳を積むことになる・・・。といっても、飲んで飲んで飲みまくってるだけという気もしますが。浅草の飲み屋においてはニライカナイの酒を飲み、小岩の中華では竹葉青酒を飲み、しかもそれぞれの場所は、龍宮と崑崙山に繋がっていて、勿論そこでも酒を飲み・・・。つまみもまた美味しそうなんだ。
救世主たる左近、楽しんでばかりはいられない。左近は、崑崙山で出会った酔悟大法師(ひょうたん老人)に聖徳利が盗まれたことを知らされ、「聖酒変化」のレクチュアを受ける。聖徳利を盗んだのは、三島酒造の三島という男。地獄の眷族に加わった、三島が造る酒は魔酒。三島に、「聖酒変化」に必要な聖杯までもが奪われてはならない!
ようやく救世主らしくなってきた左近、三島と渡り合い、聖杯があるという山梨は勝沼、くれない谷へと乗り込んだ。時はまさに百年に一度の酒星降臨。いざ、聖酒変化の儀をつとめようぞ!
千年に一度の聖酒変化の儀。聖徳利と聖杯、二つの神器が二人の持主の手に分かれた今回の仕儀は、左近と三島、二人が秘祭を行うという極めて異例のものとなる。酒星に詩をうたい、言霊の力を借りて、酔心を捧げるのだ。さあ、勝つのはどっち?三島は李白の漢詩、左近は「ルバイヤート」の助けを借りる。詩が酒星を喜ばせれば、聖徳利から美酒がとくとくと流れ出る。
クライマックスは勿論、聖酒変化。酒仙も下戸も、魔酒の輩もなく、果てしない祝宴が始まる。男も女も、老いも若きもさては酔いしれるばかり。この夜、生きとし生ける者はみな、いいがたき恍惚を味わい、<アラヤ識>は無限の孤独の中で、かぐわしき夢を見る。
お酒を飲んだら、酔わなくちゃいかんぞ―酔わんような酒を飲むんじゃないぞ―
美酒に酔い痴れるような物語。個人的にいいな、と思ったのは、くれない谷の美少女当主、「くれないぶどう」のキャラや、ラスト勝ち負けがついた所で、誰もが楽しめるところ。敵であっても、いつまでも敵ではないところかなぁ。読む前から注意されていたことですが、お酒が飲みたくなります。笑(つまみもまた、いいんだ~)
← 文庫でも出ているようです*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
+++++++++++++++++++メモ+++++++++++++++++
◆ 紹興酒、状元紅については、『中国まるごと百科事典 』さんの、
中国酒→黄酒に詳しいです
◆アラヤ識 (阿頼耶識)(Wikipediaにリンク)
◆「ルバイヤート 」(Wikipedia にリンク)
◆作者、オマル・カイヤーム(リンクではウマル・ハイヤーム)
に関してはこちら (同様にWikipediaにリンク)











1 ■紹興酒
瓶出しのやつを、常温で飲むうまさを覚えると、なんだかやみつきになるのですが、ここに登場する状元紅は、もっとすごいのだろうな、とうっとり想像(笑)。
もっとも、紹興酒のにおいってきついですからねえ。
以前、事務所の窓の下で2本ほど瓶が割れて、一日中すごい臭気だったのも、同時に思い出します(笑)。