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2006-01-10 10:16:32

「穴」/Stanley Yelnats

テーマ:講談社
ルイス・サッカー, 幸田 敦子, Louis Sachar


Stanley Yelnats。前から綴っても後ろから綴っても同じ名前を持つ、スタンリーはいつだって「まずい時にまずい場所に」いる少年。実は「ツイてない」のはスタンリー一人だけの問題ではなく、スタンリーに至るイェルナッツ家の四代にわたってずっとそう。ちなみに、回文調の綴りが気に入ったイェルナッツ家の者は、この名前が大好き。息子は代々「スタンリー」と名づけられた。

初代スタンリー・イェルナッツ。つまりこの物語の主人公、スタンリー少年のひいじいさんに当たる人物のみは、その後に続く「スタンリー」のような負け犬ではなく、株で大儲けした人物だと、スタンリーの母はツイていない男どもを励ます。ひいじいさんは確かに成功したのだけれど、ニューヨークからカリフォルニアへ移る途中、無法者<あなたにキッスのケイト・バーロウ>に襲われて、身ぐるみをはがされた。ために、スタンリーたちは豪邸で生活するわけにはいかず、「ツイてない」まま貧乏生活を送っている。スタンリーの父さん、発明家スタンリー三世が現在熱中しているのは、おんぼろスニーカーを再利用する方法」だ。

さて、少年スタンリーは、やってもいない盗みのせいで、「グリーン・レイク・キャンプ少年院」に送り込まれる。グリーン・レイクとはいうものの、湖とは名ばかり。その昔、百年以上も前には、テキサス一のとても大きな湖があったのだが・・・。荒れ果てた不毛の大地で、熱と埃にまみれながら、スタンリーたち収容された少年は、毎日ひとつ穴を掘る。更生のためであると、所長たちは言うのだけれど、これは一体何のため?

この「キャンプ」では少年たちは、奇妙なあだ名で互いを呼び合う。スタンリーに付けられたのは、<原始人>というあだ名。<原始人>スタンリーは、一族に伝わる呪いの言葉、あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ!」を吐きながら、ひたすら穴を掘り続けることになる。

イェルナッツ一族に伝わる呪いの言葉は、実はあながち間違いではない。スタンリーのひいひいじいさん、ラトヴィア生まれのエリャ・イェルナッツと、マダム・ゼローニの約束。山のてっぺんにある、上に向かって流れる小川。更にはスタンリーのひいじいさんが襲われた、<あなたにキッスのケイト・バルトロウ>が生まれることになった、グリーン・レイクの町でかつてあった悲しい恋の話。後にケイトとなるキャサリンの作る絶品スパイス入りピーチジャム、キャサリンと恋に落ちたサムのタマネギ畑。タマネギの匂いを嫌う、恐ろしい黄斑とかげ。<巨大な親指>(ビッグ・サム)に見える、山の上の巨岩。

一体何のことやら?、と思うこれらの断片が、全て重なり合ってピタリとハマる。

「ああ、もしも―」キツツキはため息ついた。
 「木の皮がほんのちょっぴりやわらかければ」
  その下で、ひとりぼっちの腹ぺこオオカミ、
   じれて、吠えたよ、おつぅ~きさまに。

「ああ、もしも―」
 ああ、もしも―。月は語らず、ひたすらに、
  映し返して、陽を、影を。
   立ち上がれ、疲れた狼、力をこめてふりかえれ。
    翔べ、小さき鳥よ、宙はるか、
     たったひとりの、わたしの天使。

あなたはどちらの歌が好きですか? 私は意味が分からないけど、おつぅ~きさまに」というフレーズが気に入ったので、上に引いた方。原語だとどうなっているのかなぁ。

ぐるぐる回って、ぴったりハマッて。奇妙な味わいだけれど、非常に面白く魅力的な物語。スタンリーの名前も回文だけれど、物語そのものも回文調の趣き。

この本は、「
喜八log 」の喜八さんの記事で知り、図書館で借りてきたものです。
ご紹介、ありがとうございました。

 ■喜八さんの記事はこちら→『


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

■「みすじゃん
。」のおんもらきさんの記事にリンク

コメント

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1 ■おもしろそう。

小説嫌いの私でも、なんだかこれは
ちょっと読みたくなるようなお話。
本の厚さによっては、私も図書館で借りてこようかな~と思いました。

読者登録ありがとうございました!!
スノーボード筋肉痛で身体の節々が、ミシミシと音を立てています。

2 ■>sama-samaさん

ボードからお帰りなさい♪
筋肉痛、大丈夫ですかー。笑

これ、講談社”ユース・セレクション”に収められていて、児童書なんですが、なかなか面白いですよ。
図書館で見かけたら(児童書なので、区分けされてある図書館だったら、もしかしたら子供の方に分類されているかも?)、是非読んでみてくださいなー。
リンク貼ってる喜八さんの記事によると、この『穴』は映画化もされているそうです。

3 ■表紙が

童話風に見えますが、あらすじを読むとそうでもないようで・・・。
ちょっと惹かれる内容です。

4 ■>midareutiさん

いらっしゃいませ~。
児童文学なので、童話風のところもありますが、うーん、表現が難しいけれど、他にはない新しい感覚でした(○○風という表現が出来ません)。
お近くにあったら、手にとって見てくださいね♪

5 ■こんばんは

つなさん、こんばんは。
『穴』は素晴らしい小説だと思います。
翻訳版が出版された頃、知り合いの図書司書さんに勧められて読みました。
あまりに面白かったので驚きました。
作者のルイス・サッカーさんの本は残念ながら4冊しか翻訳されていません。
英語でドンドン読めばいいのですが、最近グータラで・・・(そういえばクリスティの『ABC』も買ったけれど全然読んでいません(汗))。
映画版も面白いですよ。
機会がありましたら鑑賞してみてください~。

6 ■>喜八さん

こんばんは。喜八さんも司書さんのご紹介だったんですね。司書さんのお知り合いだなんていいな♪ また、いい本があったら、是非教えてくださいね~。
む、四冊翻訳って事は、あと三冊しかないわけですね。とりあえず、これの続編を探してみたいと思います。映画もいいのですね。ええ、機会がありましたら♪
喜八さん、英語本、頑張って(笑)くださいねー。

7 ■「顔をなくした少年」を読みました。

ご紹介いただいた「顔をなくした少年」を読みました。
よく書けているし、なによりもおもしろいですね。
うっかり電車を乗り越してしまいました。

8 ■>ディックさん

面白かったとのこと、良かったです!
(電車を乗り越すのは良くないですね。だいじょぶでしたか?笑)
いやー、人様に本をオススメするのは、いつも緊張します。
ディックさんの記事、楽しみにしてますね。
そのときには、こちらからまたトラバさせて頂きます♪

9 ■他の作品も

面白そうですね。
「顔をなくした少年」ですか・・・、探してみます。
トラバ&コメントありがとうございました。

10 ■>nanikaさん

他にも、スタンリーがグリーン・レイク・キャンプ少年院を生き抜くための知恵を教えてくれる、「道」という本もありますよー。
→http://ameblo.jp/tsuna11/entry-10017887030.html
「顔をなくした少年」は、「穴」の荒唐無稽さはありませんが、それでもやはり思白い作品です♪
私は「穴」のDVDを見たいなぁと思ってはいるのですが、まだ果たせていません。
*トラバ返し、ありがとうございました♪

11 ■おこんばんは

読みました~。面白かった!
私が借りた図書館では児童書コーナーに置かれていて、ちょっと探すのに手間取りました。年代関係なく楽しめる本だと思うので、もったいない気もしますね。

12 ■>rizwordsさん

これ、面白かったでしょう~!
わーい、良かった♪
そうそう、このルイス・サッカーの本は、ジャンルとしては児童書らしくて、図書館などではそっちに分類されちゃうんですよね。
文庫化されているのは、結構大人っぽいつくりだと思うのですが。
トラバどもです。この後、お返ししますねー。

13 ■無題

最近じゃ、FC2同士ですらちゃんとTBが飛ばない時があります。
TB問題さえなけりゃFC2最高なんですが…。

2008年に最初に読んだ翻訳モノ。なかなか面白い作品で幸先がよいです。
よくわからん話だなぁ、と最初は思ってたものの、結末でしっかり全部つながってびっくりしました。

他にも何作かあるそうで。またしばらくしてから読みたいです。

14 ■>おんもらきさん

トラバ問題、年越ししちゃいましたねー。笑
いつか良くなるといいのだけれど。

さて、「穴」。
綺麗に繋がりますよねー、これ、大好き!

そして、サイドバー見たら、おんもらきさんは次は奇想コレクションにいっておられるようで。
あのシリーズ、私も気になってるんですが、まだ読んだことないんですよねー。読みたいなぁ。

そうそう、このシリーズは、他に「道」と「歩く」があります。「道」はちょっと形式が違うのであれなんですが、「歩く」は最近読んで、やっぱり楽しかったです。「道」の寓話的な感じとはまた違うのだけれど、なんともアメリカ的でした。

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