「猫城」/どこかにあるかも? 猫の世界
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「猫城」
南條 竹則著
東京書籍
無宿人となった詩人である「我輩」は、K大学での講演を切っ掛けに、九州の泉都である、とある温泉地に流れ着く。そこで「我輩」は、隻眼の大きな虎猫(「政宗」と名付けた)に出会う。政宗は、町のそこここに貼ってある、お霊符(「此処に犬猫を捨てるな その家に禍が起こります」&呪いの字を書き付けた霊符)を剥がそうと試みており、彼に助力を請われた「我輩」は、お霊符を引っぺがしてやった。
政宗達に品定めをされた「我輩」は、どうやらそれに合格したらしい。講演料も底を尽きた「我輩」は、彼ら猫の導きにより、神乃輪の「くじら荘」に宿を移す。後からやって来た老人(”猫ひげ”とでも呼んでくれ)には、毎晩美味い料理を振舞ってもらえることになる。
さてさて、うまい話には、通常の場合、裏がある。彼ら猫族の望みとは一体何か?それは猫文字で書かれた巻物「万猫譜」(猫神からはじまって、かくれもない猫族の系譜が綴ってある)に、「神乃輪の猫の歴史」の続きを書けということ!
「我輩」は勿論人間だから、「猫文字」を簡単に解するわけではなく、「猫文字」を理解するまでの努力もまた、涙ぐましい。
更に「万猫譜」とは、実は天のお役人にご婚礼の儀を願い出るための書類であった。天官様に楽しんで頂く、口語体の部分が終わったら、次は駢儷文”ニャンスクリット”で上奏文を書かねばならない。お輿入れまでの時間が迫る。鍋島の猫姫様の嫁入りには、果たして間に合うのか?
またこの輿入れにより、神乃輪の猫達が強力な後ろ盾を得て、猫城が建つことを快く思わない、葱坊主のようなバケモノ<アラダマ>の妨害から逃れ、無事神乃輪の猫達の願いは叶うのか?
最後は「我輩」という一人称は、これのためだったのか、という終わり方。
ま、それは大方予想がつくかものかもしれませんが。
話は荒唐無稽だけれど、温泉の描写、”猫ひげ”の作る料理、美麗な駢儷体”ニャンスクリット”、「万猫譜」に記された猫の話などが、独特のリズムある文体で語られ、面白かった。 南伸坊氏による装丁の、すっとぼけた風のある、「猫殿様」の絵も楽しい。
しかし、これ、「ドリトル先生の英国 」を書いた人とはとても思えないし、更にこの著者は、tujigiriさんが紹介されているような、こんな小説(tujigiriさんの記事はこちら→「酒仙」南條竹則 / 芳醇なる教養ファンタジー )も書かれている方なんですよね。
巻末の著者経歴から抜書きすると、「1993年『酒仙』で第五回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。賞金で中国浙江省にて宮廷料理「満漢全席」の大宴を開き『満漢全席』を著す」そうであります。満漢全席なんて、漫画でしか見たことないよ・・・。tujigiriさんの『酒仙』の記事を読んだ時も、只者ではないな、と思ったのですが、やはりすごい人のよう。お酒にも食べ物にも温泉地にも造詣が深く、且つ「西洋史学科卒業、同大学院英語英文学修士課程終了」ってすごいよね。『酒仙』も読んでみるべきかな。
- 南條 竹則
- 猫城
*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。










