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2005-08-31 10:10:35

「照柿」/狂う、爛れる

テーマ:講談社
高村薫「照柿」

現在三作出ている、合田雄一郎シリーズの真ん中。私はちょっと変則的な読み方をしていて、もう何年も前に「マークスの山」「レディ・ジョーカー」は読んでいるのだけれど、真ん中に当たる本作を飛ばしていた。ちょうど図書館にあったので、借りてきた。
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全編を覆うのは、熱。二人の男の熱、気が狂いそうな暑い夏。照柿という赤色の一種。「熱」のせいか、いつもの緻密で這う様な高村節に、更にねっとりとした感触が加わっている。

二人の男とは、シリーズの主人公でもある合田雄一郎と、彼の幼馴染にあたる野田達夫。

合田雄一郎の「熱」は、刑事である彼が追っている「ホステス殺し」。彼の照柿の色は、線路から見た電車の臙脂色。他の作品では、硬質な石の様な印象を人に与える彼が、すっきりとして容赦ないまでに清涼な彼が、この「照柿」では狂ったように一人の女性に執着する。

一方の野田達夫の「熱」は、彼が勤めるベアリング生産工場の熱処理棟の灼熱。彼の照柿の色は、熱処理棟の老朽化した炉の色。

二人の男を繋ぐのは、佐野美保子という女。高村作品ではいつも女性が描かれないのだけれど(「晴子情歌」を除く)、今回は美保子が重要な役割を果たす。とはいっても、男に惚れられる、というだけでは重要な役割とは言い難いだろうか。彼女の行動に整合性は見られないし、彼女をあらわす言葉は「不機嫌」だと思う。何を考えているのか窺い知れない、深い穴のような女性。熱い男たちとは違い、美保子の存在は冷たさを感じさせる。切れ長の、大きく、冷たく、深い穴のような目を持つ女。白く光るふくらはぎ。

三者の出会いは、悲劇的様相を呈し、それぞれに狂った結末を迎える。

《俺の目、さっきからずっとおかしなっとるんや・・・・・・。臙脂色の雨が降っとる、雨も道路も空も全部臙脂色や、浸炭炉みたいな色や、雨が燃えとる・・・・・・。雄一郎、照柿の雨や・・・・・・》
てりがき。照柿。
ああ、照柿という名前だったか、あの色は。
「ああ、達夫、矢田の家で、庭の柿二つ手にのせて、あんたが教えてくれた色や。照柿いう名前やったな、そうやった」
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ムック本「高村薫の本」「担当編集者が語る創作秘話」によると『照柿』は「ドストエフスキーの『罪と罰』のような作品をお願いできませんでしょうか」との依頼を受けて書かれたものとの事。軟派な本読みの私は、実は「罪と罰」を通して読んだことはないのだけれど、「照柿」はストーリーがどうだというよりも、人の内面をしつこく追ったような本。

「マークスの山」がきて、「照柿」がきて、次に「レディ・ジョーカー」がくるのか、と今更ながら納得した。「照柿」で灼熱の浄化があった後に、「レディ・ジョーカー」がくるのだな、多分「照柿」を読むと、「レディ・ジョーカー」単独で読んだ時も、ぐはっと驚いた、雄一郎の義兄である検事、加納祐介との物語後半部でのやり取りが余計にキた。

高村作品の男性は、大抵整った硬質な外見の内に、どろどろとした感情を秘めている。「照柿」はそういった感情の動きを追ったような作品だった。あと、ほんとはダンテの「神曲」を読んでいれば、もっと深く楽しめるであろう作品。これまた未読なのだった。
高村 薫
照柿
別冊宝島981号「高村薫の本 」

*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

コメント

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1 ■無題

字がギッシリでした・・・

2 ■さっそく・・・

「マークスの山」「照柿」は読んでたのですが
「レディジョーカー」が続くとは知りませんでした~!
さっそく図書館でお取り寄せしなっくっちゃ^^w
私は専ら図書館専門です。
専業主婦なので使えるお金が限られてるし、置き場もない(笑

高村薫さんの本では「李歐」が一番好きです。

3 ■>ishiitsuyoshiさん

はじめまして。すみません・・・。つい、長く長くなるのです。目がお疲れになったでしょうか。汗

4 ■>りこさん

いらっしゃいませ!早速のコメント嬉しいです、ありがとうございます~。

そうなんです、合田シリーズは「レディ・ジョーカー」に繋がるのです。是非、りこさんも「ぐはっ」と驚いてください。笑
私もほとんど図書館専門ですよー。現在、同じく専業主婦です。置き場がない、にも同感です。笑

「李歐」は、美しい李歐に酔いますよね。私が所持しているムック本によると、「李歐」の帯は「李歐よ君は大陸の覇者になれぼくは君の夢を見るから」だったらしいです。ちょっとすごいですよね、でも、私も結構好きです、これ。高村作品、ベストを言えないのです。微妙に違ったよさがあるというか。ロマンだなーと思います。

5 ■懐かしい。

高村薫はデビュー当時から好きだったので合田シリーズは3冊読みました。もう内容はほとんど忘れていますが、「照柿」が印象的でした。でも「マークスの山」が好きですねぇ。
高村さんはだんだん神経質すぎるところが息苦しくて、最近はご無沙汰です^^;。

「李歐」も読みたい読みたいと思いつつ、開くとそれこそ字がびっしりなのに眩暈が。(笑)
トップの方のコメントも高村さんのことを指していらっしゃるのでは?

6 ■>ぐたさん

デビューというと、「黄金を抱いて飛べ」とかですよね。「李歐」は(単行本では「わが手に拳銃を」だと思います。文庫化にあたり、改題したはず)、華やかで艶やかな李歐に、酔いしれることができますよ~♪(ちょっと、ホモホモしくもあるのですが。笑)
合田シリーズ。私は「レディ・ジョーカー」を学生の頃に読んだのですが、「世の中の社長さんって忙しいんだ~」という阿呆な感想を持ちました。<その頃、社長さんは、エバってればいいのかと思ってました。笑

「晴子情歌」もいいですよ。適当なメモしかとってないので、記事はかけないのですが・・・。母から息子への書簡の形で話が進みます。まー、実際は息子が母から、こんな長い手紙を受け取ったらうんざりするだろうなぁ、と思いますが。笑

>トップの方のコメント
ああ!そうだったのかも。ぐたさん、ありがとうですー。で、でも時既に遅し?汗

7 ■こんにちは☆

たしか3冊とも読みました♪
内容まではっきり思い出せませんが、「マークスの山」「レディ・ジョーカー」は面白かったと思います!
また読んでみたくなりました。
本の内容は忘れっぽいのですが、高村薫さんは、私には忘れられないお顔です・・・(汗)

8 ■>amatouさん

こんにちは!おお、高村率、高いですね。でも、なぜだか女性が多いようであります。笑
高村さんの顔は、なんというか写真を見てもなお、「えーと、どっち?」と思いました。だって、お話も割りと骨太だし。amatouさんは直ぐにお分かりになりましたか?性別。
>本の内容は忘れっぽい
ええ、私もですー。笑 なので、ブログを始めたという話も。

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