2005-08-15 08:57:56
「黒と茶の幻想」/過去、謎、心、森
テーマ:講談社
恩田陸「黒と茶の幻想」
われわれは過去を取り戻すために旅をする。過去の中にこそ本物のミステリーがある。十数年前の時間と自分を喚起させるメンバー、より深い思索をするのに格好の、俗世と隔絶された目的地。
学生時代の友人である、利枝子、彰彦、蒔生、節子の四人は、彰彦のセッティングで「美しい謎」を持ち寄ってY島への旅へ出る。深い森に分け入り、滝、M岳、J杉を見るために山を登る。Y島の森を歩くことは、それぞれの心の森に入ることでもあった。
日常では交わされない会話が、この非日常的空間で交わされる。普段、日常で交わされる会話って、そんなに意味があるものではないでしょう?「ご飯何食べる?」とか、職場での当たり障りない会話とか。
ここで交わされる会話はこんな感じ。
「今まで見た映画で何が一番好き?」というある意味軽いものから、こんな重いものまで。「ねえ、愛を証明する時ってどうする?」
こんなものもある。「ある人と結婚するかどうか決めるのに、一つだけ質問をしていい。その時、何を質問するか」
各種のバトン企画を見ていても、一見他愛無い質問に見えても、数を限られて答えるのはとても難しい。それはある意味、その人の本質を突くものでもある。限定されることで見えてくることもあるのかな。
ブログのバトン企画は、「答えたい」「知りたい」という双方の欲求があって広がっていくのだと思うけど、日常では聞かれない質問だからこそ、これだけ広がっていくのかなぁと思った。答える際に、「なぜそう考えるか?」と自問することになるわけだし。未知の自分をそこに発見するのかもしれない。
この旅は、利枝子、彰彦、蒔生、節子の四章に分かれ、それぞれの一人称で語られる。この仕掛けによって主観的、及び客観的記述がなされ、一人一人の性格が立ち上がってくるという仕組み。
この旅の核となる大きな「謎」は、一つなのだけれど、「謎」がテーマな旅であるだけに、ちょっとした日常の謎、人生への質問が数多く提示され、解決される。私には、これが結構毒を含んでいるように感じた。謎とその解決には、心理的駆け引きも必要とされるものであるし。
四人それぞれが個性的で、ちょっと食傷気味だったのだけれど、最後の章を最もバランスの取れた「節子」が語ることで、私の中でのバランスが取れたように感じる。最後の文章がとてもいい。全て転じて、正のエネルギーとなったように感じた。
自分の中にも森があって、何か解決されない「謎」がひっそりと佇んでいるのかも、と思った。でも、ブログという一種「非日常」な中で、少しずつわかって来たこともあるよ。
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そういえば、少し前にコメント欄でちょっと盛り上がった髪型の話。こんな記述がありました。
女はこういう超絶技巧をいつ習得するのだろうか。節子の頭の見事な編み込みを、歩きながらじっと見つめる。
(中略)
女は女になるために練習を積む。鏡の中で試行錯誤を繰り返し、女になる技を習得する。女が女でいるためには、さまざまな技術が必要なのだ。
私はこの技術を身につけられなかった模様・・・。関連本である「麦の海に沈む果実」
よりは、設定年齢が近いだけに、こちらの方が楽しめた。恩田陸さんって、人間観察の優れた人なんだろうな、と感じた一冊でした。
しかし、屋久島って一度行ってみたい所なのですが、やっぱり縄文杉を見るのは大変なのかなぁ。
恩田 陸
黒と茶の幻想
*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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1 ■内面との対話
>でも、ブログという一種「非日常」な中で、少しずつわかって来たこともあるよ。
文章を書くことは、自分の内面との対話でもありますからね。わかります。