旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


テーマ:
古川 日出男
アビシニアン

出会うのは、三者三様の痛みを抱え、痛みを克服する術をそれぞれの手段、それぞれの手法で勝ち得た人々。

義務教育終了後、全ての過去を棄て去った少女は、都心には珍しい巨きな緑地をかかえた公園に還る。
そこにはかつて彼女の家の飼い猫だった、アビシニアンの雄猫がいるはずなのだ・・・。
アビシニアンと再会を果たした彼女は、猫の生態に学び、猫と共にバードサンクチュアリに築いたシェルターの中で、季節を過ごす。
去勢された飼い猫であったアビシニアンは野性味溢れる動物として生き、彼女もまた嗅覚を研ぎ澄まし、独自の体感を発達させる。

そうして、ある日、彼女は強烈なイメージを得る。それは焚書。野生の言葉、ほんとうのことばを識った彼女に、以降、書かれた文字は必要のないものとなる。


大学生の青年は、突然襲い来る偏頭痛の発作に苦しんでいた。それは圧倒的なイメージの奔流であり、言葉にして表す事、他人に対して説明する事が出来ないもの。
発作が何なのか全く分からなかった彼に、ある日開いた雑誌の偏頭痛の特集は啓示となる。それはことばの可能性。
正体不明のものを理解可能なものとするために、青年はシナリオ書きに熱中し、多様な声を聴く事を始める。


青年と彼女はダイニングバー「猫舌」で出会う。彼女に物語る事で、青年のシナリオは加速する。それは顔のない少年と声の物語。顔のない少年は、「顔がない」ゆえに世間から、また両親からすらも識別されず、彼と共にいるのは彼が生れた時から聞こえる声のみだった。物語が進む中、その声からも断ち切られた少年は、最後ににおいを知る少女に見出される。顔がなくとも、においを識る彼女に、少年の識別は可能だ。


ダイニングバーの経営者であるマユコから、彼女に与えられたのは「エンマ」という名前。「エンマ」から青年に与えられたのは「シバ」という名前。

言葉とは、文字に書かれたものだけではない。体で知る言葉、においで知る言葉・・・。真実の言葉とは、体感を伴うものなのか?

マユコのエピソードはちと余計かなぁと思いつつも、古川さんの独特のイメージの奔流をどっぷり楽しめた。物語の力を信じている作家さんの物語は楽しい。
目次
Ⅰ 二〇〇一年、文盲
Ⅱ 無文字
Ⅲ 猫は八つの河を渡る
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小路 幸也
東京バンドワゴン

東京の下町、お寺のやたらと多い辺りのどこかにある、三代続く古本屋、築七十年になる<東亰バンドワゴン>。右から左へと書かれた<東亰バンドワゴン>の看板の下では、時に右から左へと読むことを知らない若者が、「ンゴワドンバなにひがし?」と呟いているのだとか。

この<東亰バンドワゴン>で暮らすのは、実に四世代にわたる人々。おじいちゃん、おとうさん、孫、曾孫・・・。古本屋を切り盛りするのは、まだまだ現役の堀田勘一、七十九歳。それを手伝うのは、元大学講師の孫の紺。古本屋に併設したカフェは、孫の藍子と紺の嫁、亜美が切り盛りする。四世代の人々が暮らすここ、堀田家では毎日が大騒ぎ。近所の人々、古本屋の常連をも巻き込んで・・・。

これは、そんな<東亰バンドワゴン>を通り過ぎる、春夏秋冬の物語。

そして、この物語の語り手は、堀田サチ(故人)。このおばあちゃんの語り口が何ともほのぼの。優しい人々が集うこの物語にぴったりなのだ。

目次
春 百科事典はなぜ消える
夏 お嫁さんはなぜ泣くの
秋 犬とネズミとブローチと
冬 愛こそすべて

何かがすっごく優れているとか、そういう物語ではないのだけれど、ほのぼのと安心できる物語。こういう話も好きだなぁ。ドラマ化などに、適している感じ。

春には、近所の女の子の家族の問題を一つ解決し、夏には堀田家の嫁、亜美の実家との仲を修復し、秋には本に纏わる謎を解決し、冬には晴れて、孫の青とすずみが結婚する・・・。

賑やかに、穏やかに大家族の時は流れるのだけれど、実は、この堀田家、所謂普通の大家族ではない。父の我南人(がなと)は「LOVEだねえ」が口癖の根無し草のような伝説のロッカーだし、孫の青は父の我南人が愛人との間に作った子供だし、孫の藍子は頑として父親の名前を言わないシングルマザー。それでも、みんな家族なんだよね。

どうやら、続編もあるようだけれど、藍子に思いを寄せるイギリス人のマードックさんも幸せになれるといいなぁ。すっごい読みたいけど、わが図書館に入るのは一体いつの日なのかなぁ・・・。

小路 幸也
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン
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京極 夏彦

前巷説百物語


下手を打った仲間を庇ったせいで上方にいられなくなり、江戸へと落ち延びたまだ若き日の又市。この頃の又市の生業は双六売りであり、あのお馴染みの御行姿ではない。

これは、又市、如何にして僧形の御行となりにしか、の物語。

目次
寝肥(ねぶとり)
周防大蟆(すおうのおおがま)
二口女(ふたくちおんな)
かみなり
山地乳(やまちち)
旧鼠(きゅうそ)


まだ若く、少々青臭くもある又市が、縁を得て助けることになったのは、損料商いゑんま屋の仕事。蒲団から何から生活に必要な細々とした小物を貸し出し、その損料を取る、表向きはごく普通の損料屋としての顔を持つゑんま屋には、もう一つの顔があった。

それは依頼人が受けた損を、見合った銭で買い取るというもの。人を貸し、知恵を貸し、依頼人の損を丸ごと肩代わりして、穴埋めしてやる。ゑんま屋主人のお甲が言うには、ゑんま屋の商売は堅気相手の商売、裏の渡世のもの達とは、切れた商いだというのだが・・・。

そう、この時点では又市は半端者の無宿人ではあれど、まだまだ堅気。ゑんま屋主人のお甲や仲間たちには、時にその青臭さをからかわれたりもするけれど、お甲は又市のその青臭さに一つの救いを見る。口は達者だけれど、腕っ節は滅法弱く、暴力沙汰を嫌い、人死にが出るのを何より嫌がる。騙り、賺し、何でも御座れ、この頃から小股潜りを名乗る又市、そんなに言うなら、己が上手く纏めてみせよ、というわけ。

堅気相手の損料仕事だとは言うけれど、やはりどこか危うくもあるこのゑんま屋の裏の稼業。それとは気付かず、裏の渡世のものどもの邪魔をしてしまった事から、又市ら、ゑんま屋所縁の者たちにも、一気に危険が迫ることになる。一つの損を見合った大きさで埋める、ところが、彼らはやり過ぎてしまったのだ。損を上回る損は、また次の損を呼び・・・。それは形をつけずには、終わることがない。そうして、又市は僧形の御行となる。「御行奉為―」。

又市の姿、又市の鳴らす鈴にはちゃんと意味があったんだねえ。誰よりも人死にが出ることを嫌っていた又市だというのに、又市はあまりにも多くの死を見なくてはならなかった・・・。辛いなぁ。「巷説百物語」シリーズは、やはり哀しい物語。

巷説百物語シリーズ解説書なるものが付けられていて、年表や地図、巷説相関図があるのは、嬉しいのだけれど、ああ、まだ情報量が足りない!、と思ってしまうのです。普通の本だったら十分だと思うけど、何せ京極さんの本だからねえ。

お馴染みの名前から、この物語のみに出てくる名前まで。後の物語である、その他の物語に名前が出てこないことから、それとは知れるけれど、飄々とした元・侍の山崎寅之助なんかは、如何にも惜しかったなぁ。後の山岡百介を思わせる、本草学者の久瀬棠庵なんかも、どこかに落ちて生延びていないのかしらん。

元々は、「巷説百物語」のみを読んでいて、必殺仕事人のようなシリーズだよね、と一冊読んで見切った気になっていたのだけれど、又市が仕掛ける仕掛けのように、この巷説シリーズ自体が、京極さんの大きな一つの仕掛け。全部読まないと、絶対勿体無いシリーズです。そして、文庫になったら、絶対全巻揃えるんだーーー!!

「前巷説百物語」、まだまだ青臭い又市を満喫しつつ、でも、やっぱり、哀しい、切ない物語でありました。この時代に実際あった、非人という枠についてもきっちり描いてあるところもいい。人の世はまっこと哀しいもの、だけどね。

☆関連過去記事☆
・「続巷説百物語
・「後巷説百物語
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ロアルド ダール, ロズ チャスト, パメラ ペインター, フィリップ ロペイト, アリス アダムズ, M.J. ローゼン, Michael J. Rosen, 岩元 巌, 斎藤 英治, 大社 淑子

猫好きに捧げるショート・ストーリーズ


猫に関連する短編を集めたものだそうだけれど、「猫」という動物の特性のためか、実際は猫がメインになっているものは少なくて、都会生活の大人の倦怠の小道具として使われていたり、ちょっとその扱いは自分が期待していたようなものではなく、微妙。

というわけで、関心のある所だけ、拾い読み。全部は読んでおりません。

目次
巻頭口絵 フォトグラフ/トニー・メンドサ
賢いわたし パメラ・ペインター/岩元 巌訳
猫を飼う フィリップ・ロペイト/岩本 巌訳
二匹の猫と ロブリー・ウィルソン・ジュニア/鈴木和子訳
危機 モリー・ジャイルズ/亀井よし子訳
猫が消えた アリス・アダムズ/岸本佐知子訳
土地っ子と流れ者 ボビー・アン・メイソン/亀井よし子訳
シカゴとフィガロ スーザン・フロムバーグ・シェイファー/大社淑子訳
お気をつけて カティンカ・ラサー/亀井よし子訳
絵の中の猫 ライト・モリス/武藤脩二訳
つれあい アーテューロ・ヴィヴァーンテ/亀井よし子訳
漫画組曲 ロズ・チャスト/亀井よし子訳
屍灰に帰したナッシュヴィル エイミー・ヘンペル/岩元 巌訳
暴君エドワード ロアルド・ダール/岩元巌訳
屋根裏部屋の猫 ヴァレリー・マーティン/斎藤英治訳
テッド・ローパーを骨抜きにする ペネロピ・ライヴリー/鈴木和子訳
愛情 コーネリア・ニクソン/大社淑子訳
フェリス・カトゥス ジーナ・ベリオールト/岩本 巌訳
老女と猫 ドリス・レッシング/大社淑子訳
ラルフ ウェンディ・レッサー/斉藤英治訳
ふれあいは生き物の健康にいい メリル・ジョーン・ガーバー/斉藤英治訳
こっちを向いて、ビアンカ モーヴ・ブレナン/岸本佐知子訳

 解説 岩元 巌


シカゴとフィガロ」あたりまで、あとはロアルド・ダールと岸本佐知子さんが訳しておられる「こっちを向いて、ビアンカ」を読んだのだけれど、やっぱり圧巻はロアルド・ダールによるものかな。

あとは、巻頭の写真(惜しむらくは白黒なのだけれど、猫の色々な表情が見られて実にいい! おっかないのもあるけど・・・)と、「漫画組曲」が面白かった。「漫画組曲」は、猫族四種1.ペットになりうる家庭向けの猫族、2.完全な妄想症の猫族、3.外国産「大枚申し受けます」猫族、4.摩訶不思議な猫族)と猫にささげる難問奇問世界一運の悪い猫猫のためのジャンクフードにせ猫三態を図解しています。こういうユーモア、好き~。

さて、ロアルド・ダールによる「暴君エドワード」。

エドワードとは、妻のルイザと暮らす中年の男性。二人の前に現れたのは、冷ややかな黄色い目と、銀色の毛を持つ大きな猫。ピアノ演奏を趣味とするルイザのピアノの音に、その猫は異様とも思える反応を示す。ルイザはその猫を、フランツ・リストの生まれ変わりだと信じるのであるが・・・。
30頁ちょっとと小品だけれど、なかなか締まった構成だと思います。良き夫であり、これまでは妻のルイザと上手くやって来た事が示唆されるエドワードだけれど、うん、暴君といえば暴君なわけだ。
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星野 智幸
植物診断室

新聞の書評で気になって借りてきた本。

子供にはなぜか懐かれるのだけれど、孤独を好み、独身、散歩というよりは、徘徊という言葉が似合う趣味を持つ中年男性、寛樹。実家の母親の決まり文句は、「誰かいい人はいないの」。

子供に懐かれる特性を買われ、妹夫婦に紹介されたのが、DV夫から逃れて離婚したばかりの山葉母子。母である山葉幹子は、息子・優太に、父親とは異なる大人の男性のロールモデルを示したいというのだが・・・。

世にいう「成長」が自分には欠落していると感じる寛樹ではあるが、幹子の「面接」に合格し、山葉母子と友好を深める事になる。知らない道を歩く楽しさを優太に教え、自分の住む(転勤になった同僚から譲り受けた)タワーマンションのベランダに造り上げた、「自然林」を見せ・・・。それは幹子曰く、本物の匂いがする二十一階の森。

絆を深める寛樹と山葉母子であるけれど、山葉家の合鍵を貰う段になっても、寛樹は幹子が自分の役割を、子供との関係だけに縛っていると不満を持ち、爆発してしまう。ぼくの居場所はどこなのだ?

しかしながら、居場所とは自分で要求するものではなく、いつの間にか形作られるもの。既に幹子と優太の信用を勝ち得ていた寛樹と彼らの交流は、それでも続く。自らが子供を持たなくても、寛樹が新しい大人の男性像を示すことで、根茎で繋がるスギナ、杉の子のように、寛樹は未来とも繋がっていく・・・。

タイトルにある「植物診断室」とは、寛樹がしばしば通う、植物診断師による一種の療法を行うところ。一旦、生物の生れる前の地球に戻り、微生物になり、魚になり、動物へ、植物へと姿を変える。今、自分はたまたまヒトへと生れついたけれど、そこに至るまでには沢山の分岐があり、植物になっていたとしても、何の不思議もない。そうして診断師は、植物となったその人間の未来の姿かたちを、探ってみるのだという。

とはいえ、結局、人間はその人間でしか有り得ず、自らのアイデンティティに確信を持ったラストにおける寛樹は、もう植物診断室へは行かないだろうという予感を得る。多少、不健康ではあろうけれど、この「植物診断室」という部屋の描写は、ちょっと魅力的でありました。

うーん、全体の感想としては、ちょっと息苦しいかなぁ。もう一冊くらい読まないと、作家さんの判断は出来ないけれど、こういった生き辛さを書いた作品は、ちょっと苦手かも 。多少身につまされるんだけど、解決策が微妙というか・・・。
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T.S. エリオット, 田村 隆一, エロール ル・カイン
キャッツ―ボス猫・グロウルタイガー絶体絶命

T.S.エリオットといっても、私にとってはエリック・シーガルによるアメリカの青春群像劇、『クラス』に出てきたなー(フィクションなので実際には関係ないのだけれど、主人公が名門エリオット家の末裔という設定で、いとこのトムがノーベル文学賞を受賞したという記述がある)、というくらいなんだけれど、著名な詩人なわけですよね。

そんなT.S.エリオットは児童向けの誌もかいており、彼の死後、これが大ヒットミュージカル『キャッツ』の原作になったのだとか。私は今回、この原作本を借りてきたつもりだったのだけれど、それはまた別の本で、『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法("Old Possum's Book of Practical Cats")』というらしい。うーん、これはこれで、また借りてこなくては。きっと、基本設定はこちらに書いてあるのでしょう。

今回、私が借りてきたのは、エロール・ル・カインによるユーモラスな絵も美しい、『ボス猫・グロウルタイガー絶対絶命』。訳者も詩人、田村隆一氏!

目次
ボス猫・グロウルタイガー絶体絶命
ピークとポリクルの大げんか
ジェリクルの歌


■「ボス猫・グロウルタイガー絶体絶命」
「テムズ川のテロリスト」を名乗る、あばれん坊のグロウルタイガーがテムズ川にやってきた。
テロリストの噂を聞いたみんなは戦々恐々。
でも、グラマー美人に魂を奪われたグロウルタイガーの船に、シャムネコの大群がひたひたと忍び寄る・・・。表紙の真中の絵が、グロウルタイガーとシャムネコ。

片目の黒猫、グロウルタイガーがかっこいい。グラマー美人の色香もまた良し。

■「ピークとポリクルの大げんか」
犬同士の喧嘩に、グレート・ランパス・キャットが割って入った!
火の玉の目と大あくび。迫力のランパス・キャットに犬たちの喧嘩もおしまい。

ピークとポリクルも、表紙の左下と右下に鎮座してます。


■「ジェリクルの歌」

これ、ミュージカル『キャッツ』の歌になかったっけ?

のほほんとしたジェリクル・キャットの表情と(でも、みんな少しずつ違うんだけどね)、言葉遊びのような詩が楽しい♪
ジェリクル・キャットがお出かけするこの月の夜、月からしてジェリクル・ムーンなのだから、月までもが猫の顔なんだー。

シルクハットにステッキ持った、表紙の左上と右上にいる猫がジェリクル・キャット。

猫、それぞれの設定については、最初にも書いたように『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法("Old Possum's Book of Practical Cats")』を読まなくては! そして、T.S.エリオットとエロール・ル・カインのタッグでいえば、魔術師キャッツ―大魔術師ミストフェリーズ マンゴとランプルの悪ガキコンビ 』もあるようですよ。こっちも探して読もうっと・・・。

エリック シーガル, Erich Segal, 田辺 亜木
クラス〈上〉
エリック シーガル, Erich Segal, 田辺 亜木
クラス〈下〉

☆関連過去記事☆
イメージの魔術師 エロール・ル・カイン
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ヘルマン ヘッセ, フォルカー ミヒェルス, Hermann Hesse, Volker Michels, 岡田 朝雄

岩波書店 同時代ライブラリー


美しく、感じの良い表紙なのだけれど、残念ながら表紙絵が出ません。本書の中にもふんだんに使われている、手彩色の銅版画からキアゲハと、これはヘッセのサインなのかな。

目次
幼い日の思い出

アポロウスバシロチョウ―フィーアヴァルトシュテッテ湖畔の旅の一日
告白
アルプスヒトリ
葡萄酒の中の蛾
クジャクヤママユ
失望の人
インドの蝶
青い蝶
マダガスカルの蛾
晩夏の蝶

ある詩集への献詞
蝶について
晩夏
キベリタテハ
砂に書いたもの
三月の太陽
晩秋の旅人

編者あとがき―フォルカー・ミヒェルス
解説―岡田朝雄
訳者あとがき


蝶を切り口にヘッセを語る本書。ヘッセ自身による文は、エッセイから詩まで。これに、画家ヤーコプ・ヒュープナーの美しい銅版画が散りばめられるという作り。銅版画がないものは、訳者の判断により写真を載せたということだけれど、幾分かのっぺりしてしまう写真よりも、画の方が繊細で綺麗。

ヘッセは勿論、蝶が好きだったのだろうけれど、本書の内、結構なページを編者あとがきや解説が占めていて、編者や訳者も蝶には一家言ありそうですよ。

しかし、同じように羽のあるものだし、偏見といえば偏見なのだけど、蝶に比べれば私は蛾が苦手。解説によると、英語ではbutterflyとmorthという、蝶と蛾を別々に表現する特別な言葉があるけれど、ドイツ語では蝶と蛾を含めた「鱗翅類」という意味の言葉しかないそう(Schemetterling、Falter:久々にドイツ語辞書でも引っ張り出そうかと思ったら、どこかにいってしまっていて調べられず)。

アルプスヒトリでは、このヒトリガに狂奔する「虫屋」たちの姿が描かれるのだけど、私にはただの毒々しい蛾に見えてしまう・・・。蝶の美しさはまだ分かるけど(とはいえ、触ってあの鱗粉を手に付けたくはないけれど)、蛾のぼってりとした身体(?)や毒々しいまでのあの色使いにはやっぱり慣れない・・・。

ヤーコプ・ヒュープナーの絵は、私は十分美しく思えたのだけれど、解説によると、本書に載せられたものは、フリードリヒ・シュナック編『小さな蝶の本』及び『小さな蛾の本』から複写されたものであり、複製のため原画の美しさと精密さが出ていないとの事。本物はどれだけ綺麗なのかしらん。
というわけで、amazonで見つけた、『蝶の生活』。図書館で予約してしまいました(そして、例によって表紙が出ない~)。中身が楽しみです。

☆関連過去記事
ヘルマン・ヘッセを旅する
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篠藤 ゆり

旅する胃袋
アートン

目次
初めての旅
 [レシピ]ホーモック・プラー
故郷の味
 [レシピ]楊貴妃のデザート
いざ桃源郷へ
 [レシピ]薔薇の香りのプディング
彼岸の一碗
 [レシピ]チベット風餃子(モモ)
豊穣の食卓を求めて
 [レシピ]海老と春雨の蒸し物
赤い米が実る村
 [レシピ]筍とかぼちゃの種の和え物
     潰しナス
その味覚、禁断につき
 [レシピ]スルメとレンコン、豚スネ肉のスープ
サウダーヂを抱きしめて
 [レシピ]パルミット(椰子の芽)のサラダ
     フェジョン豆のサラダ
砂漠で眠ると人は
 [レシピ]オクラのクミン風味の炒め物
     きゅうりとトマトのライタ(ヨーグルト風味のサラダ)
エーヤワディー千年王国
 [レシピ]モヒンガー風にゅうめん
ジブラルタルの南、サハラの北
 [レシピ]魚貝のサフランスープ
あとがき 


今回、ほぼメモのみ。目次を記録しておきたかったのです。

インドを旅すると決めてからは、毎日、カレーを食べる練習をしたりだとか(元々は辛いものが苦手だったそう)、そういったちょっと不思議な努力や、食べ物を通じて仲良くなったその土地の人々との出会いが描かれている。

渋沢 幸子さんによる『イスタンブール、時はゆるやかに 』もそうだったのだけれど、何でそんなにその土地の人と仲良くなれるのかなぁ、とちょっぴり嫉妬心まで出てきてしまう。

うーん、女性の旅行記にはこういうのが多いですよね。

言葉が通じる日本人同士でも、こんな風にはなかなか仲良くなれないものではないかしら。一緒にご飯を作ること、自分の国の料理、普段の家庭料理に興味を持ってもらえることは、仲良くなるための近道なのかもしれません。
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ニコルソン ベイカー, Nicholson Baker, 岸本 佐知子
フェルマータ

訳者の岸本さん目当てで借りてきた、ニコルソン・ベイカーの本。

妄想力が爆発していた岸本さんのエッセイ(→「
気になる部分 」)同様、こちらの本も物凄く変わってました~。

 もしも、時間が止められたなら?

基本設定はこれです。ワン・アイディアといえば、ワン・アイディア。

自由に時間を止める事が出来、全ての物たちが静止した状態の中、一人、自由に動く事が出来たならば、人それぞれやりたい事、やれる事は違うでしょう。

でも、この物語の中、主人公で自伝的記録をものしている途中のアーノがする事と言えば、そう、この文庫版の表紙にあるように、女性の服を脱がせたりなどの、セクシャルな行為ばかり。

アーノは、どんなタイプの女性であれ、それは純粋に女性の美を礼賛するための行為だと言うのだけれど・・・。

<襞(フォールド)>の中に入り、好き勝手に、時や他人の身体、人との関係性を弄くるアーノ。これ、amazonなどを見ると、基本的に男性目線の妄想なので、女性には不評では・・・、という意見が多かったように思うけれど、私は結構楽しんで読んじゃいました。まぁ、近くにアーノのような男性にいて欲しくはないけれど。ワン・アイディアだけど、流石に最後まで同じ展開というわけではなく、ラストの17、18章があるので、食傷せずに済んだというのもある。

アーノは実際に時を止めているわけだけれど、本来は過ぎ去っていってしまう、何でもない一瞬一瞬を愛おしむような、時を手の平で優しく撫で擦るような感触が新鮮でした。ま、やってる事は、セクシャルな妄想を実行に移しているという、ほんとけしからん事ばかりなんだけどね。

訳者の岸本さんのお遊び(? というか、訳語の工夫か)も、随所に見られまして、成長物語(ビルドゥングスロマン)をもじった性腸物語(ディルドゥングスロマン)という名の張形とかね・・・。この訳語でも分かるように、途中に挿入されるアーノ自身による猥文(ロット)は、ほとんどポルノ小説なので、そういうのが大丈夫な人じゃないと、ちょっと読むのは辛いかも。

俗語はそれなりに触れたことがあると思っていたんだけど、乳房を<ジャマイカ>っていうのは知らなかったな~。何からきているんだろう??? 英語に堪能な方ならば、岸本さんの訳やルビを更に楽しめるのかもしれません。

*私が実際読んだのは単行本なのですが、表紙絵が出てきた白水μブックスのソフトカバー版を載せています。35歳、派遣社員(テンプ)のアーノ。アーノっぽさが良く出ている表紙だわ~。

白水社

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菅井 靖雄
こんなに面白い江戸の旅―東海道五十三次ガイドブック
東京美術

日本橋から始まって、三条大橋に至る東海道五十三次の旅。江戸から京都までは、通常、徒歩で15日。この15日間の旅には、さまざまな難所がある。そういった街道情報や、宿近くの名所・名物、また歴史・伝説・事件などを紹介する本書は、まさに江戸時代のガイドブックとも言えるのかも。

宿賃や川渡しのお代も出ておりまして、その物価の換算は、幕末に近い19世紀前半の米相場と現代の米価比を基準にしたとのこと(その換算によると、宿場の宿賃、200文は約4400円に相当する)。

目次
はじめに
かしこい旅の用心集
カラー特集
 早泊まりの早立ち
 旅は道連れ世は情け
 旅は憂いもの辛いもの
 備えあれば憂いなし
◎日本橋
1品川宿~53大津宿
◎三条大橋
特集1 宿・立場・間の宿
特集2 関所通行の心得
特集3 宿と飯盛り女
特集4 駕籠、馬、船渡し、徒歩渡し
特集5 覚えておきたい鳥居の種類
特集6 官製地図「五街道分間延絵図」を手に入れよう
旅の参考図書あれこれ
索引


見開き二頁を使って説明される宿のあれこれ。
箱根の宿の記述には、山本一力さんの「
牡丹酒 」における関所の描写を思い出した。

自分に身近な土地から読み始めても良いのかも。
近くにこんな伝説や事件があったとは、などと新たな発見があるやもしれません。
(ま、わたくし、大分すっ飛ばして読んじゃった感はありますが・・・)
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