包丁研ぎ師月山の包丁研ぎ磨ぎブログ

人として包丁研ぎ師としての日常や発見、気づきなどを書いています。

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もう年末ですね。

寒さも厳しくなり研ぎを好まれる方にはつらい季節とも言えます。

そんな寒い中でも熱を持った方々に連日訪れていただいております。

14日は京都の3つ星料亭の若い2人の料理人さん、昨日は名古屋のお寿司屋さんで今回で4回目の研ぎ講習でしたが、すぐ時間が過ぎてしまいまいました。

さすがに年末で当店も少しバタバタしておりますが、その熱をいただき、冷たい水に負けないように今年も最後までがんばって研いでいきたいと思います。



さてずっと気になっていたのですが、なかなかできなかったことがあります。

それが天然砥石の粒子の写真を撮ることです。

今までも見たことはありましたが、特に写真に撮って比較をしてみようとは思いませんでした。

刃物を研いで仕上がりで確認することが手っ取り早かったからかもしれません。

しかし先日の京都でのオフ会で、天然砥石尚氏がお持ちだった顕微鏡で砥石の表面を見たことがきっかけでやってみようと決意しました。

これで何か違いに気づき研ぎのヒントを得られたり、さらに良い砥石の選別にもなる可能性もあると考えたからです。



今回も見えにくい写真がありますが、解説を入れておりますのでご了承ください。

使用しました顕微鏡はいつものPEAK300倍です。

以下に出てきます粒子のサイズはこのPEAKにレンズに刻まれた物指を元に測定しております。

なおこのPEAK300倍のレンズ内に刻まれた物指の最小サイズは1ミクロン(1000分の1mm)です。



やはり知りたいのは巣板と戸前の違いと、京都天然砥石の魅力にもあるような優良銘柄の梨地や蓮華などはどうなっているのかです。

ただの模様なのか、実際他の部分と比較して違いがあるのかが気になるところです。

今回は研磨成分と言われている石英のサイズや状態に注目して書いております。

ただ誤解をしないでいただきたいのは、あくまで私が所持している砥石での話であり、全ての砥石に共通した話ではありません。

また刃物によって相性もありますので、参考程度になさってください。



まず研ぎに欠かせないのはやはり巣板ではないでしょうか。

私は特に巣板をよく使用し、相性によっては戸前系統の砥石を全く使用せずとも仕上がるケースもあるため、多用する砥石です。

丸尾山白巣板↓

 

全体的に白っぽいですからわかりにくいかもしれませんが、粒子は予想以上に細かいです。

全体的に2クロンほどの粒子があり、ところどころ3~4ミクロンの粒子があります。

約2ミクロンで#8000?とシャプトンさんかどこかの砥石屋さんに書いてあった記憶がありますので、2~4ミクロンの石英ということは#8000~#4000ほどの粗さに近い砥粒と言えます。

ただこの3~4ミクロンの粒子はいびつな形のものが多く、肉眼では粒子の集合体のようにも見えるのですが、パソコンに取り込んで拡大しても残念ながら画素数の関係かきれいに見えないため、粒子が細かい粒子の集合体なのか、一つの個体なのかまではわかりませんでした。

色によっては見えにくいようです。



次に蓮華巣板の蓮華の写真です。

丸尾山蓮華巣板の蓮華↓

 

蓮華部分に非常に非常に多くの細かい石英が固まっていることが見て取れます。

この細かい石英が刃物を研いだときに砥面に多くちりばめられ、研磨力を向上させるのであろうと推測できます。

蓮華巣板が研磨力が強いと言われる理由がここにありそうですね。

ただこの石英の粒子は細かいですが、もし粒子が粗かったら、もし粒子の形状が角張っていたらなど、天然のもののすべてが同じとはいえませんので、蓮華=研磨力が強いとは言えても、仕上がりが良いとは限りませんので注意が必要ですね。



次に黒蓮華です。

丸尾山黒蓮華↓

 

この黒蓮華の特徴は砥面より少し凹んでいることです。

黒蓮華の部分にピントをあわせているのですが、周りがボケています。

黒巣板や黒蓮華をお持ちの方は感じられたことがあるかもしれませんが、砥石の表面に凹みがヒビのようなものが出るケースがあります。

黒蓮華などには酸性の成分があり、その成分が水や鉄分などと反応して凹みなどが生まれているのかもしれません。

その凹んだ中に多くの石英が詰まっているため、酸性の成分と石英が早く研ぎを進めてくれるのではないかと考えます。

また蓮華でも黒蓮華でもその蓮華と言われる部分の石英のサイズが砥面の石英のサイズより小さいように思えます。

酸性の成分や何かの条件でなどの関係で溶かされ、サイズが小さくなっているのかもしれません。

ただ蓮華巣板と同様いい結果だけを出してくれるとは限らないですし、酸性が強いと錆が早く出るケースがありますので、特に黒蓮華はしっかり研いで試すことが大切だと思います。



今回の撮影で一番驚いたのが実はこの砥石でした。

丸尾山卵色巣板巣なし↓

 

以前の剃刀研ぎにも登場した巣板ですが、顕微鏡で見てみると粒子がかなり細かく、非常に均一であることがわかりました。

1ミクロンくらいの細かい粒子が非常に多く、塊も少ないです。

ですが不思議なことに泥が出ると研磨力が増し、仕上がりもよくなります。

水を多めに使えば戸前、泥を出せば巣板といった砥石でしょうか。

ただ申し訳なく思うのが、この砥石であれば剃刀に使えると判断し仕上げに使いブログでも巣板仕上げと言って紹介しましたが、他の巣板では同じ結果を得ることが困難だった可能性があるということです。

巣板は研磨力が強い砥石というイメージがあるかとは思いますが、戸前に引けを取らないばかりか、下手な戸前よりも粒子が細かいものもあるのだと驚いております。

ただこの砥石はかなり特殊であり、見方を変えれば巣板のくせに研磨力がないと低い評価になる可能性もある砥石だとも言えますので、4本目や5本目に選ぶのが良い砥石かと思います。



以下は戸前系統のものとなります。

やはり最終の仕上げを担う砥石ですから、粒子の細かさなどが重要になるのではないでしょうか。

中山戸前黄板↓

 

石英が多く点在しているのがわかります。

剃刀砥なので硬さでツルツルはしますが、研いだ際の研磨力の高さを感じていた理由がわかりました。

特に鑿の研ぎには非常によく、切れ味も良くて切れ感が軽い刃が付き、また研磨力も高いため重宝しています。

ただ石英が多ければ研磨力は増しますが、力を入れると傷が入りやすいことも容易に想像できるため、傷を入れずに仕上げたい刃物の場合の最終仕上げには向かないのかもしれません。



次は優良銘柄にもなっています戸前梨地です。

中山戸前梨地↓

 

上の中山の黄板よりも粒子が細かく感じ、私の目では1~2ミクロン程度の粒子に見えます。

この砥石の特徴は梨地にある石英の集合体でしょう。

この石英の集合体もかなり粒子は細かく、研磨力を上げていると考えられますが、ご覧のとおり梨地の部分の石英は黒蓮華のように凹んでいるわけではないので、刃物によっては石英が密集しているところに刃が当たってしまうことも考えられます。

以前仁淀の小鮎氏が電話にて「剃刀を研いでいて梨地が刃先に当たる」と言っていたのを思い出しました。

おそらく仁淀の小鮎氏はこれを感じていらっしゃったのだと思います。

繊細な刃先を作る作業には少し向かないケースもあるのではないかと思います。

ただ名倉を使うことでこれらの障害も改善できるのかもしれませんね。



最後は御廟山戸前です。

御廟山戸前↓

 

何度撮っても石英が反射するのか粒が大きく見えてしまうのですが、この砥石はかなり粒子が細かいです。

また写真上では石英が中山黄板の3分の2くらいですが、肉眼では半分くらいに見えます。

反射の関係で量が多く見えるのか、肉眼で拾いきれない細かい石英も映しているのかはわかりませんが、実際研いでみると地金は研げるのですが鋼を削る力は弱く感じます。

この御廟山は通常出回っているものとは異なり柔らかいのですが、研磨力が低く感じるのは石英の関係なのか、泥の関係なのかは写真だけではわかりませんでした。


今回巣板と戸前に色以外で差を感じたのは粒子くらいでした。

差とは言っても肉眼で見た感覚でだいたい1ミクロン程の差であろうというものですから、それ以上はこの顕微鏡の限界で見ることはできません。

ここから先はゼロコンマが付くミクロンの世界ですから、もっと倍率の高い顕微鏡で見ないとわからないですね。

結局今回の撮影では巣板と戸前の仕上がりの差などに切り込む何かをつかむことはできませんでした。

その巣板と戸前の差は粒子のサイズなのか、雲母などの別の成分がなのか、砥石の硬さの違いなのかはたまた・・・。

その個体差が天然の良いところですが、結局は刃物にも個体差がある以上、研いで試すのが砥石選びに一番大切な行動なのかもしれません。

ちなみに天然砥石の石英のサイズを見たり、均一性を確認するには顕微鏡は役に立つと言えそうです(-^□^-)

顕微鏡をお持ちの方は一度試されてもいいかもしれませんね。

最後に人造の#1000の砥石の写真を載せておきます。

 

もう少し肉眼で見るとゴツゴツして岩のようですが、それでも比べて巣板は間違いなく仕上げの砥石ですね。



さぁあともう少しで新年ですので悔いの残らないようにがんばります!!

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