月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記


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スペインの旅のお供の文庫本はコレ。

「名もなき毒」
宮部 みゆき (著)
文藝春秋(文春文庫)/2011.12.6/848円


月灯りの舞

今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの
原田(げんだ)いずみは、質(たち)の悪い
トラブルメーカーだった。
解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、
経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。
折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が
注目を集めていた。
人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く
吉川英治文学賞受賞作。 解説・杉江松恋
           <裏表紙より>



久しぶりの宮部みゆきだったが、さすがに
深みのある人間描写。
それに社会派と言われる下準備、物事のからめ方も
自然である。


タイトルの「毒」は比喩的なものもあるが、
実際の毒殺事件の本当の「毒」ともからめている。


殺意とまではいかずとも、悪意を持った人が、
何の落ち度もない人を陥れたり、
最悪は命を奪ったりすることが
意外に簡単であることのこの社会の無防備さと
人のもろさを感じる。


常識のない人、歪んだ心の人、心に毒をもった人には
「誠心誠意」などという概念は通じない。


しかし、これは常識あるひと昔前の世代に通じる話では
ないかとうすら寒くなる。

一般的に常識ある社会においては、それらの人が
「異端」として、取り正され、批判されるけど、
今は逆に社会の方が歪んでいるのか、
ともすれば、これらの人のどこが歪んでいるのかすら判断
できない人もいるのではないかと思われる現代の社会。


心に闇を抱えた人、心が歪んでしまった人は、
なぜそうなったのか、何が原因なのか、
カウンセラーはその「トラウマ」を探り、対処方法を
考えるが、その原因がないということの怖さ。



トラブルメーカーであり、人をに迷惑をかけることで、
自分の存在価値を認めてもらおうとする女。
彼女は感情をコントロールできずに、
行動はだんだんエスカレートしていく。



理解はできないが、そんな人に関わったら、
災難であることは解る。


そんな彼女によって人生を振りまわされる両親が不憫で
ならないが、一か所だけ、不自然な箇所があった。
兄の結婚式で彼女がスピーチをして、兄の結婚をぶち壊すシーン。
ここはそんな展開になることに違和感があった。
話を最大最悪にするための展開ではあるが、不自然かも。




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「危険な斜面」

松本清張:著
文春文庫/2007.11.10/524円


月灯りの舞


紫のコートと身のまわりの品を持ったまま、

彼女は行方が知れなくなった。

そして死体に…愛欲と野心の悲劇を追う表題作のほか、

興趣溢れる推理小説六篇を収める。
<解説より>



原作は短編で昭和34年(1959年)の作品。


30代の女は 70代の大企業の会長の愛人で
麻布の立派な自宅に住まわせてもらっている。


女は会長の企業のパーティで、10年ぶりに昔の男と再会。
男は40代で会長の企業の一社員で既婚者(婿養子)。


男と女は密会を重ねる。
女は会長に口添えして、男を出世させる。


男というものは絶えず急な斜面に立っている。
爪を立てて上に登って行くか、下に転落するかだ―。



男は女を上に昇る為のクイだと思っていたが、
女は男の足をひっぱり始める。


女は「子どもができた」と嘘をついたり、
男に様々な要求をし、独占しようとする。


「彼女は70の老人の嫌らしい玩弄(がんろう)にその皮膚を
 投げ出す義務があった。
 皺だらけの指と、醜い唇の這いずりにくらべ、
 秋場文作は成熟した男性の技巧と余裕を持っていた」



 「出世のために使っていた器具が勝手なことを言いだしたのだ。
  あまりに野関利江に愉悦を与えすぎたのであろうか。
  それは愛情ではなく、性愛であった。
  それだけに女は秋場文作の血をよろこび、
  体内に潤って満ちてくる男の生理に疲労に近い満足を
  味わっているのであった」



女が疎ましくなった男は女を完全犯罪で殺害。


寝台特急「さくら」がトリックに使われる。

男は完ぺきだったはずだ。



しかし、女にはその男とつき合う前に20代の若い男がいた。
40代の男に惹かれていくうちに、20代の男とは疎遠になって
いく。


しかし、20代の男はまだ女を愛していた。
自分と抱き合った時の睦言で女が口にした「名前」を
頼りに、犯人をつきとめ、追いつめていく。


自分が愛した男に殺された女は、
自分が捨てた男に犯人をつきとめられる。


今だと無理だろうなという犯罪であり、
犯人探しではあるが、「昭和」の懐かしさを
十分に感じさせてくれる作品。



危険な斜面 (文春文庫)/松本 清張
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「さよなら渓谷」

吉田修一:著
新潮社/2008.6/1470円


月灯りの舞

きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。
その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱える
とてつもない秘密を暴き出す。
取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。
長い歳月を経て、“被害者”と“加害者”を
結びつけた残酷すぎる真実とは―。
            <帯より>



隣家で起こった幼児殺人事件。
母子家庭の母親が4歳の息子を殺したのか?
息子は近くの渓谷で発見された。


これは秋田のあの事件をモチーフにしているのだろうが、
この事件は単なるきっかけに過ぎず、
メインはその事件の隣に住む男女にあてられる。


その事件をきっかけに、男の過去があばかれて行き、
男と女の関係に迫って行く。


女の存在さが何であるかが謎の一つであり、
ミステリとして一気に読ませ、事件の女と男女の過去とは別の軸で
描かれている。


被害者であるはずの女は、その過去から逃れることはできず、
人生の不幸ばかりを歩んでしまう。

過去の過ちが未来を封じてしまう。


許してしまえば楽になれるのに、許す事も攻め合うこともできない二人。


「幸せになるために一緒に暮らしているんじゃない」


その男の言葉は重くせつない。


あのひと夏の“過ち”が男と女の運命を狂わせる。
不幸になってしまうが、巡り合わない方がよかったのか?
出会っていなければ、幸せでいられたのか?



愛する人の過去を全て受け入れることができるか?
過去の過ちを許す事ができるのか?


そんな人間の「業」を考えさせられる話であるが、

最後には希望の光が差し込む終わり方で、

いい余韻が残る。


冒頭の下着姿の男女の寝姿の描写はエロティックだった。



さよなら渓谷/吉田 修一
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現在公開中の映画「ふたたび swing me again」
原作文庫本。


この映画、香川の大島ロケ。
「ハンセン病」という重いテーマだから、
あまり香川ロケをアピールしていないのかな。


でも、原作では違う場所なのだけど、原作に登場する
女の人が「高松市出身」というくだりもある。


そして、これは第5回日本ラブストーリー大賞の
「エンタテインメント特別賞」受賞作。


著者はフリーの助監督で、北野武、原田眞人、長崎俊一など
個性的な監督の現場で経験を積んだ方。
様々な映像作品に関わりながら、テレビドラマや映画の
脚本も手がけていて、今回の映画の脚本も著者自身。


映画を観る前にまずは原作をと読んでみた。


「ふたたび swing me again」
矢城 潤一 :著
宝島社文庫/2010.7.6/457円


月灯りの舞

かつてハンセン病を患い、55年間隔離生活を送っていた健三郎が、
家族のもとに現われた。
戸惑う孫の大翔(ひろと)に、健三郎は墓参りの付添いを頼む。


それは健三郎の子を産んで死んでしまった恋人・百合子の墓のはずだった。
だが、そこに彼女の名はない。
病に引き裂かれてもなお55年間想いつづけた恋人。


百合子は生きているのか?会えるものなら、ふたたび会いたい。
健三郎は大翔と、百合子をさがす旅に出る――。
                  <裏表紙より>


前半は、ひきこもりの高校生 大翔(ひろと)の
ひきこもりの日常が綴られる。


それは読んでいて、胸が辛く、苦しくなる。
「静」でありながらずっしりと重い。


ひろとが好奇心を「外」に向けたことから、
物語は一転する。


中盤から「動」が始まる。


そして、メインテーマである祖父の登場で、
ページをめくるのがもどかしくなるほど、
結末が気になるように進んでいく。


ひきこもりの孫に対して、
ひきこもらざるをえなかった祖父をもってくる。
これはもう最強の対比である。



ハンセン病という重い十字架を背負った祖父。
でも、孫に何か諭したり、説いたりもしない。
まして、己の運命を嘆くでもない。
むしろ、最初は「金」で孫を動かす。


前半は、これが「ラブストーリー? エンタメ大賞?」と
思ったが、後半、エンタメぶりに翻弄された。


そして、深い深い愛の物語であったことを知る。


ラストはジンとしたけど、悲しみの泣はでなかった。
これが最良の結末だと感じたから……。


互いに相手を想うあまり、スレ違うことがある。
愛するあまり、相手の幸せを考えて、自分の我を通さない愛もある。
みんな優しすぎるのだ。
みんな相手を一番に想いすぎるのだ。



原作では高校生の設定のひろとだが、
映画では大学生の設定になり、ひろと自身もジャズ研で
トランペットを吹くという設定で、
音楽色が強くなるんじゃないかなと思う。


そして、原作の後半部分がメインの
ロードムービーになるのだろうな。
とっても楽しみである。



★映画「ふたたび swing me again」の感想
http://ameblo.jp/tsukikagenomai/entry-10715499040.html



月灯りの舞
今月のヤマハの会報誌「音遊人」
『私の一曲』には
映画「ふたたび swing me again」
で主人公を演じる 鈴木亮平が
載っている。


マイルス・ディビスに

に憧れる
役どころらしいので彼の
「Human Nature」があげられている。

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ふたたび swing me again (宝島社文庫)/矢城 潤一
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読もう読もうと思いつつ未読だった本。
映画化されるというので慌てて
今さらながら、上下巻一気読み。

最後は、泣けて、翌朝には目が腫れていた。


「悪人 (上)」
吉田 修一 :著
朝日新聞出版 (朝日文庫)/2009.11.6/540円


月灯りの舞

九州地方に珍しく雪が降った夜、土木作業員の清水祐一は、
携帯サイトで知り合った女性を殺害してしまう。
母親に捨てられ、幼くして祖父母に引き取られた。
ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。
そんな彼を殺人に走らせたものとは、一体何か―。
              <裏表紙より>


「悪人 (下)」
吉田 修一 :著
朝日新聞出版 (朝日文庫)/2009.11.30/540円

月灯りの舞

馬込光代は双子の妹と佐賀市内のアパートに住んでいた。
携帯サイトで出会った清水祐一と男女の関係になり、
殺人を告白される。
彼女は自首しようとする祐一を止め、一緒にいたいと強く願う。
光代を駆り立てるものは何か?
毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した傑作長編。
                 <裏表紙より>



新聞小説だったので、章ごとに視点が変わる。


登場人物のそれぞれの立場、それぞれの思いが
細かく描写されていて、誰もが記号化された人物ではなく、
そこに息づく人たちとして感じられる。


九州が舞台で、地方ならではの閉塞感や息苦しさ、
田舎の娯楽のなさなどが、苦しいまでに伝わって来る。


虚言で見栄っ張りで、若い女特有の自己中心的振る舞い。
出会い系で次々と男と関わりもてはやされることの
優越感から、平気で人を傷つける振る舞い。


だからといって殺されてもいいことではないが、
軽率な行動は「殺されるかも」というリスクを
覚悟していなければならない。


でも、そんな女でも、父親にとっては可愛い娘であり、
「うちの娘に限って」と信じ切っている。
犯人への憎しみ、カタキをとりたい復讐心は渦巻く。


孤独に慣れていて、人と関わることを苦手としている人でも、
一度人とふれあい、そのあたたかみを知り、
人と関わることの楽しさ、幸福感を味わうと
もう、一人ではいられなくなる。


人を想う、愛するという、今までかんじたことのない「想い」が
自分の中に眠っていたことを知り、目覚めると、
愛さずにはいられない。
求めずにはいられなくなる。




ラストは、私が「彼」の立場なら、
迷わず彼と同じ行動をとったであろうが、
「彼女」の立場なら逆のことをしただろう。


最後は切なくて、哀しくて、
人の愚かさ、人生の悲哀があふれ、
じっとりと泣ける。



映画化は『フラガール』の李相日(り・さんいる)監督。
主役は妻夫木くんでヒロインは深津絵里。

これは観たい。

早く観たいっ。
でも、秋公開だ。
まだ遠い。



「AがBを殺害」という事実だけがあったとしたら、
Aの行為は「悪」ではあるが、
Aが「悪人」かということは決められない。


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「断崖―松本清張初文庫化作品集〈2〉」
松本 清張:著, 細谷 正充:編集
双葉文庫/2005.12.20/600円

月灯りの舞

巨匠・松本清張氏の膨大な作品の中から、
文庫未収録のものを収録。
短・中編5編を収録。



「濁った陽」は一番ミステリー色が強く、
これぞトリックだという感じ。


ある劇作家が、シナリオライター見習いの美女と
汚職にからむ事件を追う。
自殺を他殺と見破り、アリバイを崩し、
事件の真相に迫る。


釣りをする人や魚に詳しい人はすぐに
トリックに気づくかも。


この話も断崖と海が登場。



自殺者はコートを着て飛び降りるか、脱ぐか?



自殺する者はコートを着て飛び降りるものなのだとか。
水を含んで浮かび上がらないようにするため。


「ゼロの焦点」2009年版では、男はコートを脱いで、
遺書を岩で押さえ、横にコートを置いていたが……。



表題作の「断崖」はとても短い話。
自殺志願の若い女性が、老人に助けられる。

老人の性を描いていて、ミステリ要素というより、
官能小説要素が強い。
エロかった。


でも、「老人」といっても60歳である。
これが書かれた時代は60歳は老人だったかもしれないが、
今は60歳はまだ若いよね。


男も女も性欲に支配されることは決して悪いことではないし、
性は生きるに通じることだと思う。
でも、性の衝動ゆえに生を断つこともあるといいう皮肉な悲劇。



他は戦前に起きた宗教弾圧事件をモデルに、
暴走する国家権力へ警鐘を鳴らした「粗い網版」など。


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「このミステリーがすごい! 2009年版」
第一位の作品の文庫版。


「向日葵の咲かない夏」
道尾 秀介:著
新潮社 (新潮文庫) /2008.8.1/629円


月灯りの舞-向日葵の咲かない夏
夏休みを迎える終業式の日。
先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。
きい、きい。妙な音が聞こえる。
S君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。
一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」と訴えながら。
僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。
あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
               <裏表紙より>

多くの人が言うように、好き嫌いの別れる話であり、
正統派ミステリーとして読むと、ちよっと肩すかし。


ちよっとホラーというか、オカルト的な要素が
あるかな。


「生まれ変わり」をすんなりと受け入れられる人には
違和感のないお話。


でも、この独特の世界観に慣れるまで、
私もちよっと違和感があり、話に入り込むのには
時間がかかった。


だって、冒頭から、
死んだS君は「蜘蛛」として転生してて、
登場してるんだもん。
で、蜘蛛がしゃべるんだもんなー。


後は誰が何に転生してるんだろって、
勘ぐって読むようになるしね。


文字の力による小説だね。


犯人らしき疑わしき人の絡ませ方とか
ミスリードする部分も多く、
いくつかの謎の提示としては、どれもが
なんだろうと、先を読みたくなる。



話の展開としては惹きつけて、上手いなあと思うし、
小学生が事件の全容を解明していく視点も
おもしろい。

だけど、感情的にちょっと受け入れられない
部分がかなりあるかな。


「母親」が数人登場するが、これが生理的に
ダメな人は多いかも。
男の人の視点だなあという感じ。


猫好きの人は絶対に読まない方が
いいと思う。
もう、かわいそうすぎる。


犬好きさんは……犬っておりこうだなあと
再認識するかも。




でも、好きな人なら、
死んだら、どんなイキモノでもいいから、
生まれ変わっても
逢いに来てほしいなあと思う。


向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)/道尾 秀介
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久しぶりに一気読みしてしまったスゴイ本。


ミステリ要素と人間の愛が凝縮された
読み応えたっぷりの話題の本。


「告白」
湊 かなえ:著
双葉社/2008.8.5/1400円

月灯りの舞-告白

愛美は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです。
         <帯より>



4歳の愛娘を亡くしたシングルマザーの
中学校の教師が、終業式に事件について「告白」する。

その中身は犯人がこのクラスの中にいるというもの。


第1章の「聖職者」は、この主人公の女性教師の
「告白」で始まり終わる。
この短編が第29回小説推理新人賞を受賞。


そして、短編連作の形で、それぞれの章ごとに
「級友」「犯人」「犯人の家族」の立場から
モノローグ形式でつづられる。


一つの事件なのに、それぞれ別の人が語ると
違ってとらえたり、見え方が変わってきたりする。
そして、真相にたどりつく。


その章立ての仕方が絶妙ではりめぐらせた伏線と
感情の受けととらえの対立や葛藤などの対比のさせ方の
見事なこと。



第6章まであるが、どの「告白」も肉薄していて、
どの人物にも感情移入できてしまうのだ。

筆力というか、著者の人間心理描写力の圧倒的
リアル感にひれふしてしまう。


性別も年齢も立場も違うそれぞれの人物が
そこに存在しているかのように
見事に著者は「演じている」のだ。


特に第4章「求道者」には涙してしまった。
事件の当事者である中学生男子の告白である。


そして、第5章「信奉者」も少年の告白、

胸が痛くなり、やはり泣けて泣けて仕方ない。



愛は利己的である。
親子愛であれ、夫婦愛であれ。
愛するがゆえに、その愛を貫くことが
誰かにとっての「怒り」だったり「憎悪」になる
ことだってある。


息子が母を想う愛、母が息子を想う愛、
欲しようとする、解ろうとする、
だけどそれがうまくいかなかったり、
すれ違ってしまったりする。

こんなにも互いに愛し合っているのに

間違った方向に進むこともある。



後味は悪いが、心に深くつきささる。



デビュー前にシナリオの賞もいくつか
受賞されている方で、今回小説で大きく
花開いた。


シナリオで培われた「構成力」と「台詞力」が
こういう形式でうまく活かされ、
「表現力」が加わったら、こんなにも深く
おもしろい小説が書けるんだと、本当に圧倒された。


いじめやひきこもり、人間関係で疲れたり、
悩んでいたりする人が読んでみると
相手の気持ちを知るヒントになるかもしれない。



★映画「告白」の感想 2010.6.5

http://ameblo.jp/tsukikagenomai/entry-10555408777.html



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「闇の底」


薬丸 岳:著
講談社/2006.9.8/1500円


月灯りの舞-闇の底

幼女殺害事件のたびに、性犯罪の前歴者が首なし死体となって
発見される連続殺人事件が起きる。
「死刑執行人、サンソン」を名乗る犯人の正体と真の狙いは何か!?
                    <帯より>



少年事件を題材にした『天使のナイフ』で
江戸川乱歩賞受賞した薬丸岳の書き下ろし。

随分前に買っていたのをやっと読む。


一気読みさせるおもしろさ。


性犯罪で妹を殺された過去を持つ刑事がメインで、
何人かの刑事や、被害者側、性犯罪を犯したが
世に放たれた人など何人かの男が登場。


そして、犯人は「男」という表記で登場する。
登場人物の中から、その「男」が誰なのかを
推理していく。

「男」は平和な生活を営みつつも、
性犯罪を犯したものを心より憎み、
司法で裁けなかった性犯罪者たちを「私刑」と
称して残忍な方法で殺害。


そして、驚愕のラスト。
刑事との対決があるものの「完全犯罪」をとげる。


設定としておもしろい本ではあったが、
読み終えて、男の性衝動の深さに愕然とする。


まさにタイトル通り、「闇の底」へと突き落とされる。



性犯罪は再犯率が高く、矯正できないという。
殺さない限り、何度も過ちを繰り返す。

幼女を狙う犯罪は卑劣極まりないというのに、
簡単に欲望を果たさせるため後を絶たないし、
検挙率も低い気がする。


刑を与えられることで抑止力をもたないのだろう。


正月早々暗澹たる気持ちになる本であった。

なんで私は正月早々こういう本を読むのかと思いきゃ、
去年の正月も「ジョニーは戦場へ行った」のDVDを観て
暗澹たる気持ちになってるし、小説は
「三面記事小説」(角田光代:著) を読んでる。

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少し前に女子中学生に薦められて読んでいたが、
ネタバレしないで感想を書くのが難しく、
書きそびれていた本。
今一番ティーンズに人気の作家 森 絵都の本。
初めて読む。


「カラフル」
   森 絵都:著
   文藝春秋(文春文庫)/2007.9.4/505円


カラフル

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。
だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真の体にホームステイし、
自分の罪を思い出さなければならないのだ。
真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が
見えてくるようになるのだが…。
                 <裏表紙より>



死んだはずの「ぼく」の魂にむかって天使が言った。
「おめでとうございます、抽選にあたりました!」。


……こんな書き出しで始まるファンタジーなんて、
苦手だと思ってた。


砂糖菓子のようにフワフワと甘い感じなのかなと
思ってたら、噛んだら苦かった! ってとこ。


さすが、若い女子に人気の作家さんだ。
サクサク読める。


それでいて、たらーっと流れて、だから何?
と言うのではなくて、スンスンと砂がたまるように
心に感じるものが積み上がっていく。
これが今どきのブンガクなのか。


「命は取り返しがつかないから、大切にしよう」
なんて、声高に説教めいて語るより、
この本を一冊読んだ方が、「生きていこう」って
思えるかもしれない。


自殺した「真」の身体に“魂”として入り込んだ
「ぼく」が、真の自殺の深層に迫っていく。


そして、真の家族や友達、真が大事にしていた絵など
にふれていくうちに、「ぼく」も成長していく。
不思議なメルヘンが、赤裸々でビターな部分を伴い
リアルになっていく。


幸せそうに見えた家族の裏側、
兄「満」の本当の想い、
想いを寄せていた女の子の実態、
本当に自分のことを理解してくれていた人の存在。

いろんなことが見えていく。


14歳の少年は、家族、兄弟、初恋、友達、部活動……
何がうまくいっていれば、充実している青春と
いえるのだろうか?


何が支えになるのか、
何があれば生きていけるのかなど
考えさせら、最後はせつなくて涙する。


一つ年下の女の子が中年男とラブホに入るのを
目撃した日、母親がフラメンコ講師とラブホから
出るのも目撃する「真」のシーンがある。


この街にはラブホは一つかいっ!
と突っ込みたくなるが、そんなことはどうでもよく、
少年にとって、
片思いの相手より母親のそういうところを
観ることの方が許せないのだとある。


そして、その女の子は、セックスして
お金をもらうことを悪びれてもいない。
むしろ、誇らしく思っている。

自分の商品価値を知っている上、
セックスそのものの快感もあるのだと。

女の子より男の子の方が純情なんである。




一個人 10

「一個人」10月号

今月の特集は『人生、最高に面白い本』。
大人のための読書案内で、硬派な本が並ぶ。

『平成個性派 女流作家の時代』のところでは
ちょうど、森 絵都のインタビューがあった。


リアリティをもたせるために身体感覚の
取材を大切にする話とか、短編と長編の
書き方の違いとか、語られていて
とても勉強になる。



この前、映画化されたオリンピック出場を
目標に飛び込みにかける少年たちを描いた
「DIVE」も森絵都原作だ。


この映画を観た友が
「すごく、よかったよー」というので、
何がよかったのか聞いたら、
少年の裸体が瑞々しかったのだとか。

ショタコンかっ!
そんなヨコシマな気持ちで観ていたのか!!


でも、「ダイブ」を「バイブ」と聞き違えた
私はもっとヨコシマ……。


ちなみにこの「DIVE」、
友が見た時は観客三人だったそうで、
一人はオッサンとか。
絶対、そっち系だよねーと決めつけた私たち。
オジサン、そっち系じゃなかったら、ごめん。


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