「使いみちのない風景」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

映画を観る前にと「ノルウェイの森」を再読中。


月灯りの舞

本棚の裏側に潜んでいたその本は、
クリスマスカラーである。

懐かしい。


が、「ブックオフ」の100円のシールが……。


そんなこんなで、息抜きに村上春樹のエッセイなども
読んでみる。
こんな生活、理想だと思う。


「使いみちのない風景」

村上 春樹:文/稲越 功一:写真
中央公論社 (中公文庫) /1998.8.18/514円

月灯りの舞

僕らの中に残っているいくつかの鮮烈な風景、
でもそれらの風景の使いみちを僕らは知らない
―無数の旅を重ねてきた作家と写真家が紡ぐ、
失われた風景の束の間の記憶。


文庫版新収録の2エッセイを付す。カラー写真58点。
<裏表紙より>


「使いみちのない風景」(1994年刊)の文庫版で、
「ギリシャの達人カフェ」(ドゥマゴ通信NO.13 Bunkamura)
「猫との旅」(「anan」1984.4.27号)を収録。



世界を旅する著者の「旅」の概念や
「風景」に関する想いや捉え方に
美しい風景の写真が添えられているフォトエッセイ。


あまり深く考えずにさらりと読める本。


だが、著者は深く物事を考えている。


旅行好きと言われている著者だが、
「本当のことを言えば、旅行が好きじゃない」という。


「もし人間を放浪型と定着型----あるいは狩猟型と農耕型というべきか
 のふたつのカテゴリーに分類することができるなら、
 僕はかなりの確率で後者の方に属することになると思う
」と語る。


じゃあ、どうしてそんな定着型の人間があちこちと移り住むのかというと、
「結局のところ僕は『定着するべき場所を求めて放浪している』
 ということになるのではないかと思う」と。


何も物語が始まらない風景の断片。


それはどこにも結びついていなくて、何も語りかけてこない。
そんな風景を著者は「「使いみちのない風景」と呼ぶ。


「昔そんな題のアントニオ・カルロス・ジョビンの曲があった。
 原題は“Useless Landscape”といったと思う。
 歌詞の内容までは知らない。でもそのタイトルの語感は僕を奇妙にひきつけた。
 『使いみちのない風景』、なんて素敵なタイトルだろうと僕は思った。」
とある。



著者がギリシャの小さな島に移り住んでいた時の話がある。
港のカフェではみんな海と空と雲を眺める日々。


そんな日々の中で一度は小説を放棄するが、
その島を出て、少し賑やかな別の島に移って
「執拗にリアリスティックに、休むことなく小説を書き続けた」とある。


「その小説はやがて完成し、結局『ノルウェイの森』という
タイトルをつけられることになった」と。



私もギリシャに旅した時、エーゲ海の島から
海を眺めたことがあるが、何もかも忘れて、
その風景の中に溶け込みたいと思った。


使いみちのない風景 (中公文庫)/村上 春樹
¥540
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