「プーさんの鼻」
俵 万智:著
藝春秋/2005.10.25/1238円
俵万智最新歌集。
短歌は私と愛しい人とのあいだに生まれる。
新しい生命を育てるよろこびに満ちた日々。
俵万智、待望の344首。
<帯より>
帯のいわさきちひろの赤ちゃんの絵が
表すように子どもの歌が圧倒的に多い。
著者もあとがきで「ちょっとどうかと
思うほど たくさん作ってしまった」と
のべている。
どれほど息子を愛しているか、
子育てがどんなに素晴らしいものかを
歌い上げていて、
読む人の心をあたたかくさせる。
子どもの歌以外は、年下の男のことや不倫を
素材にしたものがある。
あるあると思ったのがこの二首。
●不良債権のような男もおりまして
時々過去からかかる呼び出し
●照れくさい言葉を君はカタカナで
言う癖があるアイタイコンヤ
笑ったのが
●「これもいい思い出になる」という男
それは未来の私が決める
「最後から二番目のキッス」
林 あまり:著
河出書房新社/1991.5.14/1200円
今日から明日へと壊れてゆく地球都市の、
世紀の終わりの光景に鋭く皮膚をさらして、
新鮮に彼方へ超える"予感"の詩歌。
<帯より>
産むあてのない娘の名まで決めている
狂いはじめは覚えてこう
<表紙より>
俵万智の母性的な短歌と裏腹に産まない性を
詠んだものが多い林あまりの歌集。
大好きな歌人 林あまり、久しぶりに読んでみる。
●くちびるでくちびるつつむ
はじめから成立しない誓いはたてず
●ジャズほどもかなしくはない
帰るべき家を持つひと見送るキッス
<本書より>
あとがきで著者は
「恋愛には、いつも終わりの予感がつきまとう。
誰かを愛している時間、そして共にいることの
できる時間はとても幸せだけれど、同時にこの
幸せをいつか失うのではないかという思いが
常に湧きあがってくる。」と書いている。
だから、その“予感”を書くのだという。
書くことで形になってつぶさに見つめることが
できるので怖さが安らぐのだという。
この部分はとっても解る。
私も常に、最悪の結末を想定している。
別れる辛さのショックをやわらげるためにだ。