1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>
2016-06-24 19:15:22

Brexit

テーマ:社会・政治・国際
23日英国で行われた、EU離脱か残留かを問う国民投票で過半数が離脱に投票した。


brexit5

23日夜10時に投票が締め切られた直後の予想では僅かに残留派が勝つと報じられたが、開票が進むにつれ離脱派の勝利が確実となった。


労働党の下院議員ジョー・コック女史が暗殺された事件が殉教者として
残留派に有利に作用するだろうとの予測があった。しかし、夜が明けるにつれて離脱が確実となった。


brexit4


5時の開票結果の発表で、EU離脱派51.9%、残留派48.1% と予想以上の差で離脱派が勝利した。

ロンドンのシテーの金融機関にはパニックが襲った。1時間でスターリング・ポンドは10%以上下落。

大手銀行はロンドンを離れパリやフランクフルトに移転するだろう。日本はじめ数か国の株式市場は取引を停止した。UKに投資した大手企業(たとえばトヨタ)は将来に暗い陰がさした。円と金の価値が上昇した。

デヴィッド・キャメロン首相は24日早朝に敗北を認め、辞任を表明した。エリザベス女王に辞任を申請し、ブラッセルのEUに対し正式に離脱を要請する書類を送付する。今後数か月間は不安定に漂う船の舵取りを務めるが、EU離脱交渉には携わらず今後の英国の将来に向けての舵取りは新しい指導者に任せると表明した。


今回の英国の国民投票は大きく次のような問題を明らかにした。

1)EU、ブリュッセルの官僚主義、エリートが決める法律に拠り農業、漁業など現場の伝統的な仕事が規制されてきたことへ異議を申し立て、独立を取り戻そうとの意思表示。

2)都市と農村との相違があからさまになった。ロンドンはじめマンチェスターなど大都市、工業都市はEU残留派が多数を占めたが、例えばマンチェスターの半径100kmの周辺の農村ではすべて離脱派が圧倒的多数を占めた。これはEUが金融と法律による統合であって現場の具体的な問題を反映していないという農民、漁民、労働者、大雑把に言えば貧しい人々が一部のエリートが進めるEUの政策にたいしNOを突きつけ勝利したことになる。

3)EU始まって以来の縮小と後退の結果を生んだ国民投票だが、UK内にも将来分裂の危機を生むことになった。例えばスコットランドと北アイルランドはEU残留派であり、離脱を決めた英国と同じ道を進むことはできず、再度国民投票を行い、独立が実現する可能性もある。

4)離脱派の主な動機には難民・移民問題がある。英国はシェンゲン協約に署名していないので現状でも移民規制はできるのだがドイツのメルケル首相が行った難民に対し国境を開くという政策がEUの主流と見做され、仕事を奪われるのでは? とか労働条件が悪化するのでは? とかの危惧を生み出し離脱を選択させた。

5)EUのメンバーの中に英国に続いて離脱を図る国、例えばフィンランド、スウエーデン、デンマークなどの北欧諸国が離脱する可能性が増える。

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2016-06-11 23:55:17

朝市

テーマ:フランスの地方都市
今日もまた雨が降りそうな空模様。雨が降り出さないうちに隣町トウッシーの朝市に行った。途中、集中豪雨をくぐりぬける。幸い、市に雨は降ってなかった。



朝市7


トウッシーの朝市に来たのは1年ぶりくらいだ。

ウチから20kmで他へ買い物に行く通り道なので良く通るけど、土曜の朝市にはずっと来てなかった。採りたての野菜が欲しくなったので買いに来た。

しばらく来ないうちに数軒の家の外壁が塗り替えられ雰囲気が変わっていた。


朝市6


スカボローフェアーの歌詞が浮かぶ……。


スカボローの市へ行くのかい?

パセリ、セージ、ローズマリーそれにタイム

そこに住むある人によろしく言ってくれ

彼女はかつての恋人だったから



朝市3

以前はもっと野菜を売る店が多かったが、服や靴、帽子、それにチーズや焼き鳥を売る店が増えている。生きた鶏もゲージに入れて売っている。


朝市5

一羽のアヒル(?)を巡ってネゴがはじまる。


朝市4


野菜を売る店は人気で列を作り辛抱強く順番を待たなければならない。

順番の列の最後がどこかわからないこともあるので割り込みをされ嫌な思いをすることもある。

「おつぎはどなた?」と売り方が訊いたら、すかさず、「セ・モワ(わたし)」と叫んで注文する。遠慮は無用だ。



朝市編集


昨日はユーロ(欧州カップ)開幕戦でフランスは負けたことのないルーマニアに苦戦を強いられ、1-1引き分けかとハラハラする中、残り1分でデイミトリ・パヤットがみごと15mほどのシュートを決めた。フランスを救った英雄と大喚声だ。終了のホイッスルが鳴ると本人も感動の余り泣いていた。

もうじきバカロレア(大学入試資格試験)が始まる。高校3年生は一生に係わる大事件だ。小中学校も夏休みに入るせいか子供連れを多くみかけた。
AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2016-06-05 21:30:07

増水と原発

テーマ:社会
フランスはUSAにつぐ世界第2の原発大国だ。その数56基。 日本より数基多いだけ。裏を返せば、日本がそれだけ原発を多く作ったということ。

日本の原発はほとんどが海岸にあり、冷却水を海水に依っているが、フランスはほとんどが河畔にある。

私が住んでる村からフランス1の大河ロワール河まで20キロ弱。そのロワールの河岸に、ここからそれぞれ50キロほどのところに原発がある。ダンピエールとベルヴィルだ。ロワールの流域にはほかにも下流にサン・ローランとかシノンとか全部で12基の原発が稼働している。


原発1

セーヌの河畔でパリに一番近いのはノジャン・シュル・セーヌでパリの50km位上流にある。

このたびの大雨でロワールもセーヌも氾濫しそうになった。セーヌ河には上流のトロワ近郊に数個の調整池があり、首都パリには洪水でメトロなど地下設備に浸水し害を与えないようしているが、今回の増水は調整池が支えきれなくなったことを示している。

パリのRER(郊外急行)の一部に浸水しC線は運休となった。ルーブルとオルセー美術館は浸水のリスクのある階の美術品を上の階に避難し、昨日は臨時休館となった。

両河川の増水は1910年以来106年ぶりのものだ。印象派の画家シスレーは1910年の洪水を油彩に残している。

ロワールの水位が土手の高さに迫るのを見て、まっさきに思ったのは原発のことだ。フランスの原発は大丈夫か?

福島第一の二の舞となることはないのか? 

フランスは幸い現在までチェルノブイリ、福島級の原発事故を起こしていないが、小さい事故は数回起こっている。

1999年、ボルドーの近く、ジロンド河河口のブレイエ Blayais にある原発が川の増水と風速140km/hの強風に押された高潮により一部が冠水し緊急停止した。原発の海側には防潮堤が築いてあったが、強風に煽られた高潮がそれを乗り越えて原発の設備へ押し寄せた。この時の危険度は2とされてフランスでこれまでの最高の事故となっている。

我が家に近いダンピエールの原発はロワールの増水のリスクをどうみているのか?

ロワール河は過去たびたび洪水を起こしているので、増水の予想は決して想定外などということはありえない。過去の増水時の水位をレフェランスとして原発設備が乗っている基盤を高くしてあるらしい。

外部電源が途切れた場合の非常電源としてデーゼル発電機を備え、周囲を水で囲まれ、軽油の補給が出来なくなる場合を考えて3日分の備蓄がしてある。しかし、このデイーゼル発電機が、福島の場合のように水に浸かって動かなくなった場合どうするか? それへの明確な答えは、現在探した範囲ではみつかっていない。

外部電源が途絶え、自家発電も不可能、冷却水ポンプが動かなくなり炉心の温度がぐんぐん上がり……福島で起こった悪夢、メルトダウン。

最悪のケースに備えて、フランスでは各原発内の非常救急チームに加え国の救急チームを派遣する、というのが今のところ見つかった対応策。

フランスは原発に関しては大統領権限なので、国民も他の代議士連中も議論を交わすことがない。

日本がなぜ今の様な原発大国になったのか? 私が日本を離れた1974年には片手の指で数えられるほどしかなかった。

石油危機が2度あった。そしてUSAでスリーマイルズ・アイルランドの原発事故が起こった。

アメリカはこの事故を機に国内の原発建設を禁止した。なのに日本は逆にこの事故後、目白押しの原発建設が始まったのだ。

USA国内で市場を失った原子炉建設とその関連企業は海外に顧客を求め、その輸出先の第一が日本!となった。

自国では危険なため建設禁止。海外に活路を見つけろとやっきになる原発メーカー。ウエスチングハウス、GE……。

絶対安全だよ、とウソをついて、原爆の被害に遭った世界で唯一の民族の土地へ危険な原発を輸出する。

利益追求のアメリカ企業のお先棒を担ぐ亡国の輩が日本の政財界・産業界を牛耳っていた。正直X太郎、Tu n’as qu’à sonnerというふたりの善意の仮面を被った悪が居た。なかでもX太郎はほんとうにバツで、周囲が安全を確かめてから、というのを押し切り、学者の顔だけ並べて意見は無視し、湯川秀樹博士は怒って委員会を辞めてしまった。アメリカで造ったんだから、四の五の言わず、なにがなんでも造りゃあいいんだとワンマンぶりで周囲をひっぱりまわした。彼らに追随した政財界・産業人の罪は重いね。

福島第一の土地はもともとは海抜30メートルの高台だった。それをわざわざ削って海水を被りやすくして原発を建てた。なんとまあ!

契約は「ランプサム」といって「一括請負契約」だった。非常用のデイーゼル自家発電機がタービン建屋にあり、高潮や津波で浸水する恐れがあることを見つけた日本人技術者は居た。しかし、ランプサムのため、アメリカの設計をすこしでも変更する場合、設計変更料として
法外な金額を支払わねばならず、発電機の設置個所の変更は見逃された。

外部電源切断、自家発電機水没の為使用不能。想定外だったろうか? 否、ちゃんと知る人は知っていた。アメリカの設計を、地理的条件の違う日本にそのまま押し付けたメーカー。

人災といわずになんだろうか?

「核なき世界を目指す」と、いやしくもいうならば、「ウラン」原発は即座に止めなければならない。核兵器の廃絶とウラン原発を維持し続けることとは明確に矛盾する。その事をAbe 首相は認めねばならない。

なぜなら「ウラン原発」は限りなくプルトニウムを生み続けるのだから。プルトニウムの主要な消費先は核兵器だから。高速増殖炉とかMOXとか核サイクル神話に基づいて作られた技術的に問題だらけ、実現不可能なプロジェクトにいつまでしがみ続ける積りなのか?


もともとウラン原発は核兵器と一体のものとして開発が進められた。

原子力潜水艦に搭載する原子炉としてウランの「固体燃料」が適していたからで、原発の父、ワインバーグは兵器としての原発を開発した。しかし一方でウラン原発の1000分の一しかプルトニウムを生じない、安全で安価で小型な「トリウム」原発を開発し実験炉を1年間連続運転して、商業運転が可能なことを実証してみせた。

しかし、プルトニウムをウラン原発より1000分の一しか生まない、まさにそのために、軍だけでなく、ウラン鉱山主、ペレット製造業者、原子炉製造業者、建設業者など軍産コングロマリットが議会に圧力を掛け、開発予算は廃止され、「トリウム原発」は闇に葬られた。

トリウム原発は常温常圧でトリウムを主原料とした溶融塩を使うのでメルトダウンはありえず、環境へ放射性物質を放出する危険もない。

プルトニウムは僅かに発生するがウランの1000分の一だし、溶融塩のなかで再燃焼させることが出来る。ガンマ線対策と溶融塩を入れる容器を酸に特別強い金属で作る必要があり、これは日本の技術ならできるが、すでにトリウム原発を開発中のインドや中国では作れない金属。

日本の産業界がなぜトリウム原発に眼を向けないのか不思議だ。

造ってしまったものは簡単に替えられないということなのか?
東電の旧副社長の豊田さんだけがトリウムの採用を視野にいれておられた。

地球温暖化の原因となるCO2の排出が無く、小さなスペースで膨大な電力を生み出せる原発は、再生可能エネルギーが火力発電を補い得るレベルに達するまでは、現実的な発電手段と認めるほかない。

しかし、本来人間生活に快適さを実現させるための発電が、過酷な非人間的な生活へと陥れるリスクを、それも何万年もの間、危険を保持し続けるプルトニウムを増産し続ける「ウラン」によって行われるかぎり、われわれはそのような原発を
未来の世代に対しても、廃棄する義務がある。

ウランに代わる「トリウム」原発に眼を向ける時期にきている。







AD
2016-06-02 02:40:35

パリ近郊で河川が氾濫

テーマ:自然
ロワール河が溢れそう。


ロワール

普段、川底が見えるぐらい水位が低いロワール河が、雨続きで氾濫しそう。

甥っ子が遊びに来たので、オルレアン、シャンボール城へ行ったのですが、前日、通った道が冠水して今日は通行止めになっている、とニュースが報道しています。数時間の差で帰れなくなるところでした。

上の写真はジアンという陶器で有名な河畔の町のロワール河に掛かる橋です。ここの町外れにある大きなスーパーにいつも買い物に行ってますが、5日ぶりに行った帰りに撮りました。

冠水で通行止めになった道を
迂回して、普段通らない大型トラックがこの橋を渡っています。

私が住んでる村(サンファルジョー)に水源があるロワン川も増水し、下流のモンタルジスとヌムールでは町の中心部が床の上まで浸水し、停電も重なって住民が避難してると伝えています。1910年の洪水以来、106年ぶりの水害です。

雨はひとまず止みましたが、今晩からまた降り出すそうです。

パリのモンソー公園では、子供たちが雨宿りをした
大きな木に落雷し8人ほど病院に運ばれ数人が重体。

シャブリとかボージョレとかワインの産地では大粒で大量の雹に撃たれ、小さく稔り始めたブドウの実が全滅したそうです。

テロに重ねて労働法改正に反対するストライキ。交通の混乱に加えて天災と、フランスは過酷な試練の最中にあります。




いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2016-05-25 22:55:43

赤穂事件 その④

テーマ:歴史
雨続きだが、気温はそれなりに上がってきたので、生け垣が伸び放題。


banquette



1週間後、晴れ間を見てやっと刈りました。まだ、ちょっと残ってますが……。


垣根



親の仇が愛する人の父という構図は、フランス古典劇のコルネイユの「ル・シッド」にある。

父親から侮辱されたので敵を討ってくれと懇願された青年は、父を侮辱した相手が愛する恋人(婚約者)の父親でやがては義理の父親になる人なので困惑する。実の父親の遺恨を果たすか、愛する人の父親を尊重すべきか? 葛藤がはじまる。

似たような構図はシェークスピアの「ハムレット」にもある。国王だった父親は伯父に毒を盛られて殺されてしまう。父親の亡霊が現れて仇を討ってくれという。
オフェリアへの愛を優先し生きるべきか? 父親の仇を討つべきか?「生きるべきか、死ぬべきか? 」葛藤が起こる。葛藤がライトモチーフとなって劇を引っ張ってゆく。


亡君の仇を討つべきか否かで、お家断絶、ご家老から退職金を貰って赤穂城を後にした旧藩士たちの胸にも多かれ少なかれ葛藤が生じた。討ち入りに加わろうと決めていながら親への慮りと板挟みになり葛藤に耐えきれず自害した萱野三平。芝居になった「お軽、勘平」のエピソードなど。

小学校の4年から6年まではクラス替えもなく、3年間ずっと同じ顔触れで卒業したのだが、私が居たクラスは生徒の数が47人だったので、みんな「赤穂義士」と同じだと、討ち入りの義士に一人ひとり生徒を割り振って遊んだものだ。

赤穂義士は47人か? 46人とすべきではないか? との議論がある。

3・4月に日本に滞在した時に大河ドラマ「最後の忠臣蔵」が始まって、その一回目を観た。

寺坂吉右衛門。 吉田忠左衛門組足軽で3両2分二人扶持、39歳。

足軽が武士(士分)に入るか否か、で義士に入れるべきか否か? なのか、いや、寺坂は大石内蔵助が留めたにもかかわらず討ち入りに加えてくれと懇願し、加わったのだが、吉良を討ちとったあと泉岳寺へ行く途中で行方をくらました。逃亡説といや、討ち入りの実相を内匠頭の正室阿九里(あぐり)、後に瑶泉院(ようぜんいん)と浅野大学はじめ、関係者に伝えてくれ、と大石から頼まれ生き残った説とあるためであろう。

大河ドラマでは、討ち入り前に寺坂に大石は、裏門隊と表門隊との連絡係、斥候をやってくれと命じる。そして、吉良邸での戦闘のすべての場面を実際に眼にしたのは、寺坂だけなのだから、のちのち、世間がどのように討ち入りをゆがめて批評することになるや分らないから、お前が「生き証人」となって実際を伝えてほしい、これは私の遺言だから、と足軽の寺坂に家老がじきじきに依頼する場面があった。

吉良邸の玄関脇に立てた「口上書」には討ち入りの理由を述べたあと最後に全員の署名があり、そこに寺坂吉右衛門の名もあることから四十七士とすべきだろうと私は思う。足軽は位として武士の最下級だったとしても侍の端くれなのだろうから。

いったんは、籠城し城を受け取りに来た軍勢と一戦交えたのちに大手門で全員切腹と決めたのち、大石はやはり城は明け渡すべきとした。


赤穂城1



赤穂の城は、現在は石垣だけで僅かに大手門の傍に櫓が残ってるのみで、草むらばかりの屋敷跡だ。


片岡



海岸に内匠頭の祖父が造らせた平城で石垣の中に、大石や片岡源五衛門の屋敷などがあった。天守閣は土台だけで結局は建てられなかった。


赤穂城2



内匠頭の正室阿九里(あぐり)は幼少の頃、10歳になるかならないかで赤穂へ入り長矩と同棲の後結婚した。その時の持参金が浪士討ち入りの費用に使われたであろうと推定されている。

城の明け渡しとは、浅野内匠頭の祖父が造ったとはいえ幕府に取り上げられてしまう。藩がお取り潰しになると、浪々の身となる藩士へ退職手当を支払わねばならない。城に備え付けの武具なども幕府に取り上げられ、それ以外の船だとか家具を売却する。

阿九里の持参金は製塩業者に貸し付けられていたが、それを返済させ、さらに藩札(藩が発行していた兌換紙幣)を額面の6割で引き取ることを承服させ、藩の解体を処理した。大石の手元に残った金額はおおよそ7000万円と推定されている。

最も多く使われたのが播州赤穂浅野家のお家再興のための工作資金であり、次が江戸の撥ねあがり急進派の暴発を防ぐために使者を派遣するための旅費に使われた。その他、浪士の暮らしが成り立たなくなった時には援助金をたびたび与えた。こうして討ち入り前に大石は手持ち資金をほぼ使い尽くし、手をつけまいと取っておいた瑶泉院の持参金から出た利子を武具購入費に充てた。

映画やテレビドラマで定番となっている赤穂浪士討ち入りの衣装、幕末の新撰組が着ていた白黒のジグザグ模様の羽織、あれも創作で、鉄の兜で頭を護り、鎖帷子を下腹に巻いて切られにくいようにした。赤穂藩は江戸の火消の親玉で、消防隊の衣装で討ち入った、というのが昔読んだ小説にあったが、そんな揃いの衣装を買うだけの金はなかった。ひとりひとりが思い思いの格好をして戦いに備え、兜も浅い小さなもので額を護ったらしい。

吉良邸には討ち入りに備えて、清水一角などの腕利きを雇い入れていたが、士気が圧倒的に討ち入り側が高く、一時間あまりで吉良側の抵抗は鎮圧されてしまった。吉良側で切死にした数12名。赤穂浪士は死者ゼロ。討ち入り時に門から飛び降りて足首をくじいたのと池に落ちた程度で、討ち入り側のチームワークと準備の周到さ士気の高さが勝敗を決めた。

城を明け渡してから討ち入りまで、家老の大石が京都祇園の一力茶屋で遊蕩に耽ったとか、さまざまなエピソードが芝居になっている。浪士が貧困に耐え艱難辛苦のうえ、当初の目的を達したのが、江戸庶民の共感を呼んだ。

大石は当初、浅野家再興を目標とし、堀部安兵衛など血気にはやる江戸詰めの旧家臣を宥めるのに腐心した。安兵衛は大石宛の手紙で「たとえ大学様が100万石の大名になってお家再興がかなったとしても、吉良上野介が生き残ってこの世に居る限り、大学様が世間に顔向けできないじゃありませんか。吉良を討つべきです」と諫めた。

「このままでは、武士の一分が立ちません」という。

この「分」とはどんな意味なのだろう?

「足軽の分際で」とか「分限を知れ」とか言う。そのときの分は限られた範囲、行動を狭く限定する意味に使われる。

しかし、安兵衛のいう「分」は「社会から期待されている武士としての役割、道徳的な職分」といった意味のように思う。

赤穂藩には軍師山鹿素行がいた。赤穂城跡にも素行のブロンズ胸像がある。

山鹿素行は会津若松の生まれ。江戸時代の官学だった朱子学の形而上性を批判したため幕府の怒りを買い赤穂に配流となった。赤穂では素行を師として敬った。

素行は「葉隠れ」に代表される「死ぬべきこと」の武士道とは別の儒教的な「士道」を唱えた。

平安時代からの武士、戦う武士から戦国の世が終わり平和な江戸時代に統治者として生きる教養ある武士を目指し「士道」の理想を唱えた。

「士は農工商の業を差し置いてこの道(武の道)を専らつとめ、三民の内苟も…以って天下の人倫の正しきを待つ。是れ士に文武の徳治不備ばあるべからず」

要は、農工商はそれぞれの家業に忙しく教養を積む時間などないが、専門だった戦がなくなった世の中で武士の役割としては天下の人倫を正しく保つことが職分だ。そのために普段から武芸のみならず文(教養を積み)知徳に励まねばならぬ、とした。

剣道の袴には前に五本のひだがあり、これは五輪五常の道を表すという。五輪とは「孟子」の仁義礼智信。君臣の義、父子の親、夫婦の別(分け合うこと)、長幼の序、朋友の信をさす。

安兵衛さんは、生粋の赤穂藩士じゃなく、スカウトされて堀部家に婿養子として入り、(中山姓はいつのまにか捨てて堀部を名乗るようになった)主君内匠頭にもお目見えした。他所から途中で来ただけに余計に君臣の義にこだわったともいえる。内匠頭の最後、言葉は交わせなかったが今生の別れをした片岡源五衛門から、憔悴し切った主君の最後の姿を聴いた安兵衛は仁義の思いに胸を焼かれた筈である。


弥塀と片岡
    大石神社の入り口にある四十七士の石像。堀部弥兵衛と片岡源五衛門↑


ともあれ、病弱で過敏で被害妄想的かも知れないが藩の財政立て直しの為、恥を忍んで、お公家さんの接待にはこれだけしか出せませんと最後まで頑張りぬいた若き君主が、足利の名門の血筋か知らないが、儀典のどうでもいいような仕来りを後生大事に秘匿することで地位と収入を得ている吉良上野介とかいう糞爺に辱めを受けた。主君長矩は即日切腹、爺はお構いなしの片手落ち裁判。これを黙って受け容れているようでは赤穂に人はいないのか? と笑われる。そう安兵衛は訴え続けた。

討ち入りの夜雪が降っていたとするのはドラマの劇的効果をあげるための創作。子供の頃、かっこいい~と思っていた山鹿流陣太鼓も、そんなもん打ったりしたら近所の屋敷が眼を覚ます。だいいち切り合いの邪魔になる。

揃いの装束ではないが、やはり火消の親玉、内蔵助と主税は火消の装束で、それぞれが戦闘しやすい格好をし、闇夜でも見分けが着くように袖口と胸に白い晒しを縫い付け名前を書いた。暮れ過ぎに日本橋の堀部弥兵衛の借宅へ集まり、未明の午前4時頃、前年に屋敷替えなったばかりの本所の吉良邸へ向かった。

浅野大学が芸州浅野本家お預けと決まり、赤穂浅野家のお家再興が絶望的と判った時点で大石は討ち入りを決めたわけだが、四十七士討ち入りの後、大学は旗本に取り上げられ、播州赤穂浅野家は再興された。

反対に、吉良の養子は諏訪にお預けとなったまま、没し、吉良家は断絶した。

 (赤穂事件について終わります)




いいね!した人  |  コメント(1)  |  リブログ(0)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。