妄想スパStory

白瀬の駄文スパ小説(お仕置き小説)を載せています。
基本妄想爆発です(笑)
オタ趣味もあるので、
そういう系のブログも書きます。。

スパンキングに興味がない方、苦手な方は自己責任でバックお願いします。


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※こちらの作品は、「黒執事」二次創作のスパ小説となっております。
 原作中のシーンを利用したストーリーのため、
 原作をご存じない方には少しわかりにくい部分があるかと思います。
 恐れ入りますがあらかじめご了承ください。
 また、二次創作が苦手な方、原作のイメージを壊したくない方はバックお願いします。
 
 
 
 

「フフッ・・・よくお似合いですよ、『お嬢様』。」

 

「セバスチャン、黙れ・・・。」

 

ファントムハイヴ家の若き当主、シエル・ファントムハイヴは絶賛不機嫌であった。
普段からニコニコ笑うようなことはなく、常に仏頂面と言われているのだが、

今はいつにも増して虫の居所が悪そうな顔をして、眉間の皺は深い。

 

「僕はまだ納得していないぞ・・・」

 

その原因は。

 

「どうしてこの僕が女装してこんなドレスなど着なければならないんだ!」

 

シエルが今身にまとっているのは、モスリンたっぷりのピンクのドレス。
ドレープが豊かに入り、きめ細やかに編まれたレースもふんだんに使われている、

いかにも「女の子らしい」ドレスである。
更に髪型はいつものショートカットではなく、ツインテールのウィッグがつけられ、

更にドレスのデザインとお揃いのヘッドドレスとしてミニハットもついている。

 

セバスチャンにあっという間に着付けられ(コルセットで時に苦しい思いもしながら)、

至った完成形を鏡で見て固まるシエル。
それを見てセバスチャンが吹き出したのが冒頭の場面。

 

この案を聞かされ、あれよあれよと進む準備に最初は当然抵抗したが、

有無を言わさず着付けられ始めてしまった時に一旦は諦めの感情が生まれていた。
しかし、からかい口調で「お嬢様」等と言われておとなしくこの状況を受け入れるなど

出来るはずがなく、なりを潜めていた不満が再燃する。

 

「ファントムハイヴだとバレずに潜入するには、

その格好が一番だと何度もご説明差し上げたはずですが。」

 

これからシエルたちが向かおうとしているのは

ロンドンを騒がせている連続殺人鬼の犯人と思しき人物が主催しているパーティー会場。
パーティーに潜入して犯人である決定的な証拠を掴もうという算段だ。

 

しかし、社交界で「ファントムハイヴ」と言えば名の知れた存在。
更に多少裏社会にも通じるような貴族であれば、

ファントムハイヴ家が裏社会の秩序を守る番犬であることも知っている者は多い。
そこで、変装が必要だろうという話は満場一致であった。
だが、なぜかいつの間にやら「変装」が「女装」にすり替わり、

仕立屋を呼ばれ、気づけばあっという間に衣装が用意されてしまったのだ。

 

「ただ変装すればいい話だろう! 女になる必要がどこに・・・」

 

シエルが改めてセバスチャンに噛みついていると、

突然一人の女性が部屋に飛び込んできた。

 

「きゃーっ シエル!! 思った通り! 可愛いっっ」

 

「は、離せマダムっ」

 

いきなりシエルに抱きついたこの女性は、

通称マダム・レッドと呼ばれるシエルの母方の叔母にあたる女性。
社交界に顔が利く彼女が今夜のパーティーの招待をもぎ取ったのである。

 

「私姪っ子が欲しかったのよねー♪ もうほんっとに可愛い!!」

 

「そんな理由で僕にこんな格好を・・・!!」

 

「あら、似合ってるんだからいいでしょう?

それに、主催者のドルイット子爵、守備範囲バーーーーーリ広の女好きらしいから、

その方がお近づきになれるチャンスが広がって都合いいわよ☆」

 

「なっ・・・!?」

 

まさかの提案にまた固まるシエル。

その背後から、セバスチャンがシエルの耳元で囁くように声を掛けた。

 

「仰っていたではありませんか。どんな手段も使うんでしょう?
フフッ・・・さぁ、それでは皆様、参りましょう。」

 

「貴様・・・っせ、セバスチャンなんだその格好は・・・」

 

からかうような物言いに文句を言ってやろうとシエルが振り向いた先にいたセバスチャンは、いつの間にやら着替えを済ませていた。
意表を突かれて文句も引っ込んでしまった。
いつもの燕尾服とは少し異なった出で立ちで、

一番目を引くのは、普段かけていないチェーン付きのメガネだ。

 

「本日、私はお嬢様の家庭教師、という役でございますので。
今この瞬間から、任務を完了してお屋敷に戻るまで、私はお嬢様の『家庭教師』です。
よろしくお願いいたします、『お嬢様』。」

 

「なんなんだ全く・・・」

 

意外にも形から入る我が執事に、シエルはため息をつくのだった。

 

 

 

「全く・・・ 連日連夜パーティー三昧・・・ 貴族の連中は揃いも揃って脳天気な暇人ばかりだな。
こんなに無駄に集まって、一体何が楽しいんだ。」

 

パーティー会場に着くやいなや、うんざりする、と吐き捨てるシエルに、

セバスチャンは苦笑いする。

 

「お嬢様だって貴族でしょう。お嬢様のような方の方が、社交界では珍しいのでは?」

 

まぁ、お嬢様がパーティーをお嫌いなのは人が多い、だけではないようですが、と

含みを持って笑うセバスチャンを、シエルは睨み付ける。

 

「うるさい黙れ。とっととドルイット子爵に接触して、仕事を終わらせて帰るぞ!」

 

「張り切るのは結構ですが」

 

一刻も早くこの場から立ち去りたい、と意気込むシエルに、セバスチャンが言った。

 

「無鉄砲に行動を起こして、あっさり捕まる・・・なんてことなさらないでくださいね。
毎回私の足手纏いばかりで・・・」

 

嫌みったらしく言ってくるセバスチャンに、シエルの眉間の皺が深くなる。

 

「貴様・・・誰に向かって口を利いている。」

 

「クスッ 私は事実を言ったまでですよ。

まぁ、お嬢様がお気をつけて行動してくださればそれでよいのですが。」

 

「そんなこと・・・言われずとも分かっている。」

 

馬鹿にするな、と言い放つシエルに、セバスチャンも応戦する。

 

「おや、そうですか。ではお約束ですよ、敵の前では用心して行動する、と・・・」

 

「家庭教師気取りも大概にしろ。そんな当然のことを僕に説教するな。」

 

「クスクス・・・当然、ですか・・・では当然のことなのですからしっかりお守りくださいね。」

 

「・・・フンッ・・・!」

 

そのとき、シエルの表情が一変した。
嫌みな微笑みを浮かべるセバスチャンからシエルがそっぽを向いたとき、

その視線の先にターゲットの姿が映ったのだ。

 

「・・・いらっしゃいましたね。」

 

セバスチャンも表情を変える。

 

しかし、それと同時にパーティーフロアに生オーケストラの音楽が鳴り響き始める。
そして、今まで談笑していた貴族たちが各々男女のペアを組んで踊り始めてしまった。

 

「チッ・・・広間がダンスフロアに・・・」

 

先ほどまで視界に捉えていたドルイット子爵も、すぐさまダンスの群れの中に入ってしまった。
人一倍煌びやかな衣装を着ているので見失うことはないが、

動き回っていて迂闊に近づけない。

 

「仕方ありませんね。とりあえずダンスに紛れて、子爵の側まで行きましょう。さぁ、お嬢様。」

 

そう言ってセバスチャンから差し出された手を見て、

シエルはまさか、という目でセバスチャンを見つめる。

 

「公の場で僕に踊れと言うのか? お前と?」

 

シエルの疑問に、セバスチャンは涼しい顔で返す。

 

「おや、お忘れですか。今私はお嬢様の家庭教師、ですから。

今宵限りは公の場で、お嬢様とのダンスを許される身分なのです。」

 

「うっ・・・そうだった・・・」

 

「さぁ、参りますよ、お嬢様。」

 

「うわっ・・・!!」

 

半ば強引にセバスチャンに腕をとられ、シエルとセバスチャンもダンスを始めた。
といっても、ダンスが苦手なシエルはほぼセバスチャンに振り回されるがままだ。

 

そう、シエルのパーティー嫌いのもう一つの理由、

それはパーティーに付きもののダンスの腕前が壊滅的、だからだった。

 

今日も、この時のために、とここに来る前に付け焼き刃で女性役の社交ダンスを教えられたが、

男性役でさえままならないのに、女性役なんてハードルが高すぎた。
セバスチャンに振り回され続け、曲が終わる頃にはシエルは疲れ果てぐったりしていた。

 

「全く・・・だらしがないですね、これくらいで。」

 

「ハァハァ・・・」

 

肩で息をするシエルを、セバスチャンが抱き起こす。

 

「さぁ、お嬢様。いよいよ本題ですよ。」

 

セバスチャンにトンと肩を押され、一歩進み出たシエルの先には、一人の男性がいた。

 

「駒鳥のように可愛らしいダンスでしたよ、お嬢さん。」

 

「!」

 

それは今回のターゲット、ドルイット子爵その人だった。

 

周りの様子を伺いながらシエルをエスコート(振り回)してダンスをしていたセバスチャンのおかげで、
子爵にしっかりシエルをアピールでき、また側にいくことが出来たのである。

 

「お嬢様、私は何かお飲み物をお持ちします。・・・しっかり子爵を誘惑してくださいね。
くれぐれも、先ほどの・・・」

 

「分かっている。早く行け。」

 

意外としつこいセバスチャンに、シエルは追い払うように指示を出す。

 

「・・・御意。」

 

セバスチャンはそう言って恭しく頭を下げると、二人の側から離れていった。

 

「どうだい? 今夜のパーティーは。楽しんでいただけているかな?」

 

そう言って、子爵はシエルの手を取ってレースの手袋をしたシエルの手の甲に軽くキスを落とす。

顔も急接近。
なるほど、確かに女性たちを虜にする美青年と言われて納得する整った顔立ちだが、
そんなことに興味がない、しかも同性のシエルにとっては顔を近づけられることはもちろん、

ましてやキスなんてされても気色悪いだけである。
シエルは子爵にバレないように、キスをされた方の手を後ろ手に回し、手の甲をドレスで拭った。

 

「すてきなパーティーに、感動しています。でも・・・私、ずっと子爵とお話したかったの。」

 

「ほぅ?」

 

「ダンスもお食事も、もう飽き飽き。」

 

「我が儘なお姫様だねぇ・・・もっと・・・楽しいことをご所望かな?」

 

(!! こいつっ・・・)

 

子爵が体を接近させ、腰に手を回してくる。
シエルは鳥肌を立てないように、無意識に振り払わないように、全神経を集中させた。

 

「(全てが終わったらすぐに始末してやるこの男・・・っ!!)
え、えぇ、子爵はご存知? もっと・・・楽しいこと。」

 

「ふふっ、もちろん。」

 

含みを持たせたシエルの言い方に、優美に微笑んで返す子爵。
その返答から、どうやら子爵にもその「含み」が伝わっているようだ。

 

「ほんとうですか? 是非、私にも教えてください。」

 

「本当に・・・知りたいのかい?」

 

両手を握られ、また顔を近づけられ、のぞき込むようにして問いかけられる。

 

「えっ・・・えぇ、本当に!」

 

これ以上過度なスキンシップが来ようものなら耐えられる気がしない。
仕掛けられる前に仕掛けてやる、とシエルはかなり積極的に子爵にねだった。

 

「君には・・・少し早いかもしれないよ?」

 

「(チッ・・・粘るな・・・そう簡単に案内できないということか。)

私、もう一人前の『淑女』ですのよ? 子爵・・・ね?」

 

精一杯の微笑みに、小首をかしげる仕草も加える。
シエルの駄目押しは、果たして子爵にしっかり効いたようで、

子爵は「わかったよ、私の駒鳥。」とシエルの手を取った。

 

「それでは・・・奥へどうぞ。」

 

そして、重々しいベルベットのカーテンを少し開き、

薄暗い奥の部屋へとシエルをエスコートしていった。

 

(ふぅ・・・とりあえず第一段階完了、ですね。)

 

セバスチャンは、その様子を少し離れたところから伺っていた。

 

(さて、では、次の指示を待ちますか。)

 

お約束を守っていただけるとよいのですが・・・、と、

肝心な所で抜けている主人に思いを馳せていた。

 

 

 

「これから、行くところは、ものすごくいいところだよ。」

 

シエルの手をしっかり握って、ドルイットは薄暗い通路を進んでいた。

 

「いいところ・・・それって、どんな・・・」

 

腕を引かれていたシエルが、可愛い子ぶってドルイットにそう問いかけようと近づいた時だった。
顔に白いものが近づいてきて、口元と鼻を覆われる。

 

「しまっ・・・!!」

 

しまった、と気づいたときにはもう遅く、意識が遠のいていく。

 

気を失ったシエルを横たえ、腕の中に抱きながら、

ドルイットは不敵な笑みを浮かべ、もう聞こえていないであろうシエルに優しく囁いた。

 

「そう・・・とてもいいところだよ・・・」

 

 

 

「・・・!!」

 

どれぐらい気を失っていたのか。
気がついたシエルが目を覚ましたのは、檻の中だった。

 

「うぅ・・・」

 

まだ少し頭がクラクラする。
手首と足首をそれぞれひとまとまりに縄で縛られ、思うように身動きが出来ない体を何とか起こす。
目の前には、とても頑丈そうな鉄の檻の格子。

 

「妙な薬を飲まされて、気を失ったところを、捉えられたというわけか・・・」

 

「おぉ、駒鳥が目を覚ましたようです! お集まりの皆さん!」

 

ドルイットの声がする。

見ると、檻の外で数十人の仮面をした観客を前に、

自分も同様に仮面をしたドルイットが口上を述べていた。

 

「次はお待ちかね、今宵の目玉商品でございます!

観賞用として楽しむもよし、愛玩するもよし、儀式用にも映えるでしょう。
ばら売りするのもお客様次第!」

 

「闇オークション・・・

ドルイットの奴、殺した奴らのパーツを、ここで売りさばいていたというわけか・・・」

 

これで証拠も掴んだな・・・と、シエルが右目を隠している眼帯に手を掛ける。

 

「スタートは1000から!」

 

眼帯を外し、右目を見開くと、そこに映るのは悪魔・・・セバスチャンとの契約の印。

 

「セバスチャン。僕はここだ。」

 

シエルが静かにそう口にした瞬間。

 

「!!?? なんだっ!?・・・うっ・・・!」

 

会場を照らしていた数多の蝋燭の灯が一瞬で消え、会場が闇に包まれる。
ざわめくドルイットや会場の声も、一瞬上がって即座に消えた。

 

そして、数秒後、再び蝋燭の灯がともって会場が照らされると、
ドルイットをはじめとした闇オークションの参加者たちが一様に倒れて気を失い、
シエルは檻から救い出されているという、灯りが消える前とは全く違う光景が広がっていた。

 

「やれやれ・・・本当に捕まるしか能がありませんね、貴方は・・・」

 

倒した者たちの傍らに跪いていたセバスチャンが立ち上がり、呆れ顔でシエルに近づく。

 

「呼べば私が来ると思って不用心が過ぎるのでは?」

 

そう言うセバスチャンに、シエルはフン、と言い放つ。

 

「僕が契約書を持つ限り、僕が喚ばずともお前はどこまでも追ってくるだろう。」

 

「・・・ええ。もちろん。どこまでもお供しますよ。最期まで・・・ね。

私は嘘はつきません。人間のようにね。」

 

そう言って、セバスチャンはニヤリと笑う。
その不適な笑みに、シエルは面白くなさそうな顔をしながらも、

不遜な態度のまま、それでいい、と頷く。

 

「お前だけは俺に嘘をつくな。・・・絶対に。」

 

「・・・イエス、マイロード。」

 

シエルの言葉に、セバスチャンが跪いて答える。

それを見届けると、シエルは、とにかく、と話を変えた。

 

「この件はこれで終了だ。呆気なかったな。」

 

「えぇ。既にヤードにも連絡してあります。じきに到着するでしょう。」

 

「なら、長居は無用だな。おい、セバスチャン。早くこの縄を解け。」

 

檻からは出されたものの、なぜか手首と足首をそれぞれまとめられた縄は解かれていなかった。
これでは歩くどころか、身動きを取れば倒れてしまう。

何でこんな中途半端に、とシエルが抗議の目線をセバスチャンに投げると、

セバスチャンは、ええ、ですがその前に、と突然切り出した。

 

「坊ちゃんはパーティー会場で私とどんな約束をなさいましたか?」

 

「・・・はぁ? 何を突然・・・」

 

突然の問いに顔をしかめるシエルを余所に、セバスチャンは続ける。

 

「『敵の前では用心する』、そう約束しませんでしたか?

坊ちゃんは『そんな当然のことを説教するな』等と仰っていたかと思いますが。」

 

まだそれを言うか。しつこい・・・と、シエルがうんざりした様子で投げやりに返事をする。

 

「またそれか。それが・・・なんだ。」

 

「その結果がこれですか?」

 

「っ・・・」

 

痛いところを突かれ、シエルが少し顔を歪める。

 

「用心した結果、裏に連れてこられて、情報を引き出すどころか一瞬で薬を嗅がされ捕まって、

後は私を喚んで、ただそれを見ているだけ・・・と。」

 

つらつらと淀みなくシエルの不甲斐なさを詰るような言葉を並べ立てるセバスチャンに、

シエルはイラッとして吠えた。

 

「・・・何が言いたい。証拠の現場は押さえられたんだから何も問題ないだろう!」

 

「それはそれ、これはこれ、ですよ。坊ちゃん。」

 

しかしそんなシエルの抗議もセバスチャンは取り合わず、更に言い募る。

 

「あれだけ大見得を切っておきながら、あっさり敵の手に落ちるとは・・・

私、呆れを通り越して感心してきてしまいました。」

 

「貴様っ・・・」

 

「そんなお約束を守れない坊ちゃんには、

どんなお仕置きが有効かと私なりに考えたのですが・・・」

 

「はぁ? お前何を・・・」

 

更に近づいてくるセバスチャンの行動や言葉の真意を掴みかねて、シエルが訝しむと、

セバスチャンがニヤリと笑った。

 

「やはりこれ、ですかね。」

 

「おい・・・うわぁっ」

 

ドサッ

 

近づいてきたセバスチャンに軽く足を払われ、

足首を縛られたままで不安定だったシエルは体勢を崩した。
突然のことに、かばう間もなく、転ぶ・・・! そう思ったが、転んだ痛みはやって来ず、
その代わりに気がつくとシエルは不可思議な体勢にされていた。

 

「セバスチャン! 何の真似だ!」

 

跪いた、片足を立てた体勢のセバスチャンの膝の上に横たわるような体勢で、

腰の辺りはセバスチャンに押さえられている。
屈辱的な格好にシエルが声を上げると、

セバスチャンはクスッと笑って、シエルが凍り付くようなことを言い放った。

 

「お約束を守れなかった坊ちゃんに効くお仕置きですよ。お尻百叩きです。」

 

「おっ・・・はぁぁっ!? 冗談じゃない、家庭教師ごっこはもう終わりだ!」

 

シエルがふざけるな、と膝から下りようとするが、

手も足も縛られたままで、しかも押さえつけているのはセバスチャンだ。
抵抗らしい抵抗になるはずもなく、無様にバタバタと藻掻くだけになってしまった。

 

「家庭教師『ごっこ』? 冗談? まさか。」

 

シエルの叫びは一笑に付され、そして、それは始まってしまった。

 

バシィィィンッ

 

「いっ・・・!! おい、セバスチャン!!」

 

シエルのお尻に、セバスチャンの平手が振り下ろされた。

 

平手はドレスの上からだったが、布をたっぷり使い、バッスルまで入っているはずなのに、

それを者ともせずにしっかり痛みを与えてくる。
さすが悪魔、といったところだが、そんな悠長に感心している場合ではない。

 

「言ったでしょう。私は嘘はつきません、と。

お約束を守れなかったお仕置きとしてお尻百叩き、しっかり受けて頂きますよ。坊ちゃん。」

 

バシィィィンッ

 

「痛いっ!! セバスチャン、下ろせ! 命令だ!」

 

バシィィンッ

 

「っあぁ!」

 

「お仕置きが終わったら下ろして差し上げます。」

 

バシィィンッ

 

「ふざけるな今すぐ下ろせ! 主人の命令が聞けないのか!」

 

バシィィンッ

 

「おや、お忘れですか。

私は本日、お屋敷に戻るまで『お嬢様の家庭教師』という役割だと申し上げたはずですが。
家庭教師が生徒の躾をするのは至極当然のことですよ。」

 

バシィィンッ

 

「うぅっ・・・もうさっきから僕のことを『坊ちゃん』と呼んでいるくせに白々しい・・・っ」

 

恨みがましくセバスチャンを睨み付けるシエルに、セバスチャンはからかい口調で答えた。

 

「おや、私は気を遣って差し上げたつもりだったのですが・・・

ただでさえ恥ずかしい格好をしている上に、
こんな恥ずかしい体勢で恥ずかしいお仕置きをされて、

更には『お嬢様』呼びでは坊ちゃんがあまりにもお可哀想かと思いまして。
ですが・・・ご希望なら戻して差し上げましょうか? 『お嬢様』。」

 

「っ・・・いい! やめろ!」

 

「かしこまりました。『坊ちゃん』。」

 

バシィィンッ

 

「くぅっ・・・」

 

あえて「恥ずかしい」を連呼して、羞恥心を煽ってくるセバスチャンに、

のせられては駄目だと分かっていても反応してしまう。

シエルは悔しさに唇を噛んだ。

 

バシィィンッ バシィィンッ バッシィィンッ

 

「うぅっ…くっ…あぁっ…!」

 

バシィンッ バシィンッ バシィィンッ

 

「いっ…っく…いたぃぃっ」

 

もう何を言っても、百叩きが終わるまで解放されない、
そう悟ったシエルは、己のプライドにかけてこれ以上無様な姿は見せまい(もう十分屈辱的なのだが)と

必死に耐えようとするものの、何にしたって痛すぎる。

 

当然手加減はしているのだろうが、

先ほどから平手が打ち下ろされる度にお尻がジンジン痛み、

徐々に熱を持ってきているのがわかる。
だがしかし、痛いながらも、むやみやたらに痛みを与える拷問のような暴力的な痛みではなく、
状況を冷静に考えられる理性を留められる程度の痛みなのだ。

 

シエルにとって「お仕置き」になる絶妙な痛さを与えてくる辺り、

自分の限界点まで見透かされているようで余計に腹が立つ。

 

バッシィィンッ

 

「うぁぁぁっ!」

 

そんなことを考えていた罰だと言わんばかりに、このタイミングでさらに強い平手が降ってきた。
咄嗟にシエルは背を反らし、縛られた足を跳ね上げる。
しかし、それを咎めるようにセバスチャンは同じ痛さの平手を連続で降らせてきた。

 

「ほら、あまり暴れない。」

 

バッシィィンッ バッシィィンッ バッシィィンッ バッシィィンッ バッシィィンッ

 

「っあぁっ…いっ…いたいっいたいいたい!

そんなこと言うなら手加減しろこの馬鹿力ぁっ!」

 

痛みが治まる前に次の痛みが降ってくる連打はかなり堪える。
セバスチャンに暴言を吐いて睨み付けたシエルの目は涙目だ。
しかし、セバスチャンは全く調子を変えない。

 

「おやおや、この期に及んでその口の悪さ… 感服いたします。

反省が微塵も感じられませんね。」

 

「っ…そんなことっ…」

 

普段の完全執事モードの時とは少し違う、

悪魔を感じさせるような目で見つめられてシエルが一瞬怯む。
その隙に、セバスチャンは畳み掛ける。

 

「大体、暴れない、というのは坊ちゃんのための忠告ですよ。」

 

「忠告…だと?」

 

「お忘れですか、この状況を。今ここにいるのは私と坊ちゃん二人きりではありませんよ。」

 

「!!! や、やめろセバスチャンっ…」

 

あまりに想定外の事態すぎて周囲の状況をすっかり忘れていたシエルは、

突然現実を突きつけられて顔を真っ赤にする。
そう、今この空間はシエルとセバスチャン二人きりではない。

 

「いくら失神させたのがこの私とはいえ、殺していませんからね。
坊ちゃんがあまり大声を上げて暴れると、皆さん目を覚まされてしまうかもしれませんねぇ。」

 

「や、やめろっ…」

 

バシィィィンッ

 

「いたぁぁっ」

 

「それに…」

 

セバスチャンは、更に追い打ちをかける。

 

「私が匿名でヤードに通報を入れてからもうすぐ10分経ちます。」

 

「っ!!!」

 

息をのむシエルの耳元で、セバスチャンは意地悪気に囁いた。

 

「あんまり坊ちゃんが駄々を捏ねてお仕置きを長引かせたら、

ヤードの皆さんに見られてしまいますねぇ。
あのファントムハイヴ伯爵が女装をして、

執事の膝に乗せられてお尻叩きのお仕置きをされているところを…」

 

そんなことになれば、もうヤードに今までのように偉そうな顔はできませんねぇ、と

愉快そうに言われ、
羞恥心を煽られ我慢ならなかったシエルは声を荒げた。

 

「か、からかうのも大概にしろ!!

ここにいる奴らを目覚めさせないことも、ヤードにここに立ち入らせないことも、

お前の力を使えば容易いことだろう!」

 

「それは確かにそうですが。しかしどうしましょうかねぇ…
坊ちゃんは反省する気も、素直にお仕置きを受ける気も全くないようですし…」

 

「なっ…」

 

「お仕置きの効果を高めるためにも、ここはもう少し…」

 

「や、やめろセバスチャン…」

 

いつもならふざけるなと一喝して済むところだが、
だが、今のセバスチャンは、本当にやってしまいそうで、

怖くなったシエルが嘆願の感を込めて言うが、セバスチャンは取り合ってくれない。

 

「いえ、やはり懲りていただくためにも…」

 

もう、しょうがない、そうするしかない、愚図愚図していたら余計悪い方向に転がってしまうかもしれない。
決心したシエルは口を開いた。

 

「わかったセバスチャン! わかったから!」

 

必死のシエルの叫びに、セバスチャンはフッと表情を緩めて問う。

 

「おや、何がお分かりになったのですか。」

 

「…今日は、用心が足りなかった。反省している…」

 

バシィィンッ

 

「くぅぅっ…」

 

「ええ。そうですね。それで、どうするんですか?」

 

「え…」

 

問いの意味がいまいち掴めず焦るシエルに、

セバスチャンは幼子を相手にするように言葉を区切って尋ねる。

 

「…お仕置きを、素直に、…?」

 

「…う、受ける…」

 

完全な子供扱いにもう羞恥心が限界で顔を伏せるシエルに、

セバスチャンはフフッと少し笑って、よくできました、と呟くと、また平手を振り上げた。

 

バシィィンッ

 

「うぅっ…ちょ、ちょっと待てセバスチャンっ…」

 

一発で涙交じりのうめき声をあげたシエルは、

既に次の平手を振り上げていたセバスチャンに制止の声を上げた。

 

「…何ですか、坊ちゃん。素直にお仕置きを受けるのでは?

もしもうダメだなどと言うならやはり…」

 

「違う、受ける、受けるからっ…」

 

眉を顰めてみせるセバスチャンに、シエルは必死で言った。

 

「あ、あまり…痛くするな…」

 

そんなお願いをしている自分が恥ずかしいのか、言葉尻は消え入るようである。
しかし、そんなシエルの決死のお願いだったが…

 

「却下です。坊ちゃん。」

 

「なっ…」

 

きっぱり否定され、シエルは絶望に目を見開く。

 

「坊ちゃんのリクエストを聞いてしまったらそれは『お仕置き』になりません。
坊ちゃんは『お仕置き』を素直に受けると仰いましたよ?」

 

「なっ・・・こっ・・・このっ・・・」

 

その声音は冷徹で、でもどこか面白がっている節も感じられて。
悔しさと痛みにシエルは震えながら吐き捨てた。

 

「このっ…悪魔めっ…!!!」

 

 

 

 

結局、それからシエルは先ほどまでの痛みと全く変わらない痛みの平手で

百叩きの残りをきっちり叩かれてから
ようやくセバスチャンによって縄を解かれ、部屋から脱出した。

 

叩かれたお尻はしばらく痛み続け、

その間シエルはいつもよりも少し用心深くなり、

傍若無人振りは多少なりを秘めていたとか、いないとか…。

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「まぁ、とにかく。
・・・履いてるもの、自分で下ろしてここにおいで。」

「は・・・うぇっ!?」

流れで頷いてしまいそうになって、
すんでの所で気付く。
今、とんでもないことを言われてるんじゃないだろうか。


「いや・・・あの・・・幸村・・・部長? 
今、その・・・なんて・・・」


「聞こえなかったの? 
履いてるもの下ろして、膝に乗れって言ってるんだけど。」


「そっ・・・そんな無茶なっ・・・!」

その内容に慌てて赤也が首を振る。
が、幸村も譲らない。


「何? じゃあ赤也は、
俺にわざわざ下ろせって言ってるの?」


「いや、別に下ろさなくても・・・」


「真田に100叩きされても懲りなかったんだから、
制服の上から叩いたって何の効き目も無いだろ。」


「いや、そうでもないと・・・」


何とかこの最悪の事態を回避しようと、
赤也は明後日の方向を見ながら、必死に言葉を発する。
そんな赤也にしびれを切らしたのか・・・


「赤也。」


不意に、幸村が静かな声で名前を呼んだ。
静かな声だが、それまでのものとは違う。
赤也がおそるおそる幸村を見ると、
幸村の顔から、いつの間にか笑顔は消えていて。


「いい加減にしろ。本気で怒るよ?」

「ひっ・・・」


その言葉の冷たさといったら。
赤也は焦って幸村のそばに駆け寄った。


「ほら、さっさとする。」


「っ・・・」


「返事がない。」


「はい!」


とはいうものの・・・だ。
赤也は、恥ずかしさと恐怖からなかなか行動に移せない。
幸村のそばに駆け寄っても、
幸村は赤也の手を引こうとも、ズボンを下ろそうともしない。
あくまで赤也自身がやることを求めている。
真田だったら有無を言わさず膝に乗せてしまうだろう。
いっそそれの方がどれほど楽か。
幸村は、精神的に一番辛い方法を知っている。


「赤也。何度言わせれば・・・」
「い、今やります!」

だが、これ以上愚図れば本格的に幸村を怒らせてしまう、
それぐらいは分かる。
赤也は、ガバッと下着ごとズボンを下ろすと、勢いで膝に乗った。
もう自棄になったように。
それを見て、幸村が苦笑する。

「クスッ・・・何だい、それ・・・」
「だっ・・・だっ・・・」

バチィィィィンッ
「てぇっ!? ちょっ・・・ちょっ・・・ぶちょっ・・・」

バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ

不意打ちのように突然厳しい平手が落ちてきて、
赤也は悲鳴を堪えきれなかった。
ちょっと柔らかい空気で苦笑とかしながら、
しっかり厳しい平手なんだからひどい。

「ってぇ・・・ひどいッスよ・・・ぶちょ」

ベシィィィンッ
「っあぁぁぁ!?」

「ひどい? よく言うよ、
ひどいのは赤也と、赤也のテストの点数だろ?
改めて言うけど、何だい、18点って。」

「いやだって・・・」

バチィィンッ バチィィンッ バチィィィンッ

「うぁぁっ ちょっ・・・いってぇぇっ」

「さっきから『でも』と『だって』は言うのに肝心の言い訳は無しかい?
聞いてあげるって言ってるんだから言えばいいじゃないか。」

「いや、でもそれは・・・」

ベチィィンッ

「ぎゃぁっ」

「それとも何だい? 
言い訳自体が言えないような内容なの?」

「ぇ」

「・・・・・・へぇ、そう。
ならなおさら、言って貰わないといけないな。」

図星をさされると、分かりやすく反応してしまう赤也。
赤也の変化から、それが肯定だと分かった瞬間、
幸村はスッと近くの机に手を伸ばし、何かを手に取った。
赤也からは見えない。
だが、振り下ろされたそれが与える痛みは強烈だった。

ビッシィィィンッ

「うぁぁぁぁっ!? な、何をっ・・・」

慌ててグイッと体をひねると、
目に飛び込んできたのは竹の物差しだった。

「なっ・・・なっ・・・」

「何? あぁ、これ? ほら、俺、真田と違って『力が無い』から、
このままずっと赤也のお尻叩いてたって威力無くなっちゃうだろ?」

(嘘つけー!!!!)

テニス界で『神の子』なんて言われてる幸村が、
『力が無い』なんてそんな馬鹿な話あるわけがない。
平手だって十分痛いのに、なのにっ・・・と、
赤也は心の中で悪態をつき、もう泣き出したい気持ちになる。

「ほら、さっさと言いなよ。」

ビシィィンッ ビシィィンッ ビシィィンッ

「あぁぁぁっ!? ってぇぇぇっ」

そんな赤也の気持ちは知って知らずか、
幸村は衝撃の物差し1発目とさして違わぬ威力を次々と落としてくる。
しかも、

「言わないんなら、ずーっとこのままだね。
というか、本題のテストの赤点の方のお仕置きに全然入れないし。
クスッ 赤也のお尻、いつまでもつのかな。
大変なことになるね。」

なんて(黒い)微笑み全開で言ってくるものだから、
赤也はあえなく陥落した。

ビシィィンッ ビシィンッ ビシィィィンッ ビッシィィンッ

「ぎゃぁっ・・・ぶちょっ・・・タンマっ・・・言うッス、言うから タンマァァァッ」




そして、何とか物差しを止めてもらって、
赤也は洗いざらい告白した。
テスト期間に入ってもほとんど勉強していなかったこと、
一夜漬けで乗り切ろうとしたこと、
それで結局テスト中に寝てしまったこと・・・




「・・・って・・・わけ・・・なんス・・・けど・・・」

言い終わって、赤也がおそるおそる振り返ると・・・

「ふーん、そう・・・赤也・・・最初に言ったよね?」

「・・・え?」

「言い訳して、それで俺が納得できなかったら・・・
それ相応の代償は覚悟しとけって。(ニッコリ)」

(だ、だって部長が言えって!!!)

なんてことは言えるはずもなく。

「その言い訳も含めてきっちり『物差しで』お仕置き。
やっぱり大変だね? 赤也のお尻。」

ビッシィィィンッ

「ってぇぇぇぇっ!!」

こうして、止まっていた物差しが再び振り下ろされた。









「っく・・・グスッ・・・ってぇぇ・・・」

あれからしばらく叩かれて、
赤也のお尻は真っ赤を通り越すくらいの勢いで腫れていた。
幸村は一息つくと、物差しをカタンと元あった机に戻す。

「ほら、じゃあ、これからどうするんだい?」

バシィンッ

「ふぁっ」

平手に戻り、力もだいぶ抑えられているが、
それにしたって痛い。
赤也は涙混じりの悲鳴をあげるが、
そこで折れてくれるほど立海の部長は甘くない。

「言えないなら、また物差しからやり直すかい?」

バシィィンッ

「ふぅえ゛っ!? 無理っ 無理無理無理ッス・・・
もう赤点とりませんからぁっ」

「そのために勉強はどうする?」

バシィィィンッ

「ってぇぇぇ・・・ちゃんと前から・・・ひくっ・・・します・・・」

「・・・」

「あ・・・あの・・・」

「・・・まぁ、これくらいでいいか。終わり。」

唐突に終わりは訪れ、赤也は解放された。
膝から下ろされたが、痛すぎてまともに立ち上がれない。
制服をあげるのも忘れ、そのまましゃがみ込んだ。
涙も、止めようとするのに止まらない。
許されてホッとしたからか、何なのか。自分でもよく分からない。
いつまでも泣いているなんてかっこ悪い
と思うのに、
ずっと涙が流れてくる。

「ヒクッ・・・ッエ・・・」

「クスッ そんなに泣いて・・・」

フワッと笑って赤也の頭を撫でる幸村の微笑みは、
先ほどの黒い笑みとは違う。それにも安心する。

「だってっ・・・痛すぎッスよ・・・物差しっ・・・
部長怖いしっ・・・ヒクッ・・・」

「フフッ、あの程度で『怖い』なんて・・・
赤也はまだまだ子どもだね(笑)」

サラッと言われたその一言に、赤也はフリーズする。

「え(『あの程度』!? 『あの程度』って・・・)」

「あ、泣きやんだ。良かった良かった。」

赤也の目の縁に残る涙をぬぐって、クスクス笑う幸村。
赤也はというと、そうして笑う幸村に同調して笑いながら、
頭の中で必死に言い聞かせる。

「あ、はっ・・・アハハハ・・・(じょ、冗談ッスよね、冗談冗談!)」

「それにしても・・・」

幸村が、少し真面目な顔に戻って言う。

「少しは身に染みて思っただろう? 
真田の言うこと聞いておけば良かった、って。」

「え・・・それは・・・もう・・・」

赤也はそう言いつつ、まだしまっていないお尻に手を当てる。
かなりの熱を持っていて、
自分がちょっと触れるだけで痛みが走る。
これに比べれば、
前回の真田のお仕置きは、まだ甘いものだった。

「それなら良かった。
この俺がわざわざお仕置きしたんだから、少しは懲りてくれなくちゃね。
本当に、あんまり真田を困らせるなよ、赤也。
真田はああ見えて苦労性なんだから。」

幸村が笑いながらそう言うと、
なんとその話題の張本人が部室に入ってきた。

「一言余計だ、幸村。」

「副部長!」
「あ、おかえり。真田。」

2人を見て、真田はため息をつく。
それから、しゃがみ込んでいる赤也の腕を引っ張り、
赤也を立たせた。

「全く・・・赤也。
早くその情けない格好を何とかしろ。」

「あ・・・ッス・・・」

赤也は恥ずかしそうに、
痛みに顔をしかめつつズボンをあげる。
そんな赤也を尻目に、
真田は今度は幸村に向き直った。

「それから幸村。
何が『顧問の先生が呼んでる』んだ。
職員室に行ったら逆に『何か用か』と聞き返されたぞ。」

「え?」

「クスッ・・・それにしては、戻ってくるのに時間掛かったね。」

「馬鹿を言うな。あの状況で平然と中に入れるか。
肌を叩く音と、赤也の悲鳴が断続的に聞こえてくれば、
何が行われているかくらい想像つくだろう。」

「何? じゃあドアの前でずっと待ってたの?」

「あぁ。察しはついたが、ほっといて帰るわけにもいかんだろう。
・・・それにしても・・この程度のことで幸村を煩わせるわけにはと思って、
お前には何も言わなかったんだが・・・」

「分かるよ。テスト返却日の昼休みに、
職員室に呼び出されて、帰ってきたらため息ばっかりついて・・・」

「そりゃあため息つきたくもなるだろう。」

「だから君に代わって俺がお仕置きしてあげたんだろう?」

「そういうことは事前に言ってくれ。驚くだろうが。」

「事前に言ったら君は絶対
『お前がそんなことする必要ない』とか言って止めるじゃないか。」

「む・・・」

「あ、あの・・・」

目の前で繰り広げられる2人の会話に
全くついていけない赤也は、おそるおそる口を挟む。

「何の話を・・・」

「あぁ、俺、『真田が匙を投げた』って言ったけど、
それが嘘だったって話。」

「へ?」

「俺は別に幸村にお前の仕置きは頼んでいない。
幸村が自分判断でお前の仕置きをしたということだ。」

「えぇっ!?」

「だから、あのお仕置きは『真田の代わり』じゃないんだ。
ごめんね、赤也。
真田からのお仕置きはまだ終わってないよ。」

「えっ・・・えぇぇぇぇぇっ!?(泣)」

まさかの幸村の告白に、赤也が再び涙目になる。

「あれだけ赤くなった尻はさすがに叩けんぞ。」

「フフッ じゃあ、それこそ鉄拳制裁にすれば? 
俺、ほっぺたはぶってないから、まだあいてるよ。」

「フム・・・一理あるな・・・」

「えっ!? ちょっ・・・副部長!?」

再び自分に近づいてくる真田。
赤也が焦ってとっさに目をつむる・・・が。
衝撃は落ちてこない。

「・・・え?」

「冗談だ。するわけないだろう。」
「クスクスッ」

「じょ・・・冗談キツイッスよ~~~」

赤也は、ようやく立ったばかりなのに、またへたり込む。

「でもまぁ・・・次から冗談じゃないけどね?」

「え?」

「次赤点なんてとったら・・・
真田の鉄拳制裁の後に俺から物差し100叩き、
それからおまけに部活でも基礎練10倍にしてあげるから(ニッコリ)」

「だ、そうだ。」

「ぜーーーーったいもうとりませんっっ!!!」

「クスクスッ」
「是非そうしてくれ。」

赤也の大絶叫の誓いが、部室に響き渡ったのだった。
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※こちらの作品は、「テニスの王子様」二次創作の
 スパ小説となっております。
 原作を知らなくても
 ある程度ストーリーが分かるように構成しているつもりですが、
 あらかじめご了承ください。
 また、二次創作が苦手な方、原作のイメージを壊したくない方は
 バックお願いします。








「あーあ、まーたやっちまった・・・」

赤也は、部室のパイプイスに身を投げ出し、絶賛後悔中。
その内容はと言えば・・・
お決まりの、テストの件だった。
前回、英語の赤点でこっぴどく真田に叱られた赤也。
二度とその過ちは繰り返すまいと思い、
今回、勉強はしたのだ。・・・一夜漬けで。
普段勉強する習慣など皆無で、
さらに英語に関して言えば、
教科書を開いたら途端に睡魔に襲われる赤也としては、
たとえ一夜漬けとはいえテスト前に勉強していったのだから、
自分的には頑張った方だと言える。

が、一夜漬けはまずかった。
普段でさえ、
英文を突きつけられれば
数秒で眠りの世界に行ってしまうのだから、
一睡もしていない状況で
大量の英文が羅列されたテスト用紙を目の前にすれば・・・
結果は明白だった。
案の定、気付けばテスト終了5分前、
あえなく撃沈したのだった。




そして、テスト結果が判明した今日、
当然のごとく赤也は真田に呼び出され、
こうして部活終わりの放課後、
日も落ちかけている中ずっと待っているわけで・・・

「今日俺・・・殺されるんじゃね?(汗)」

前回、あれだけ死ぬほど叱られて・・・と、
赤也が冷や汗を流していた時。

カチャッ

ドアノブが回る音がした。
ドアに背を向けて座っていた赤也は、
とにかく謝ろうと、立ち上がって振り向いた。
・・・が、そこに立っていたのは
赤也の予想していた人物とは違った。

「さっ・・・え?」
「クスッ・・・お疲れ。赤也。」

「ゆ・・・幸村部長?」

部室に入ってきたのは、幸村だった。
赤也は肩すかしを食らったような心持ちになる。
沈黙が苦手な赤也は、
気を取り直して、何気ない会話を振ってみた。

「あ、着替えッスか?」

「ううん。着替えはまだかな。
まだ一仕事残ってるからね。」

「一仕事・・・部長業、ってヤツっスか?」

「んー・・・平たく言えばそうかな。
正確には副部長業代行。」

「副部長?」

何か含みを持たせるようにそう言った幸村に、
さすがの赤也も怪訝そうに首をかしげ、幸村を見つめる。
すると、幸村はニッコリ笑ってとどめの一言。

「もっと正確に言えば・・・真田代行。
心当たりあるはずだよ。
ねぇ、赤点常習犯の切原赤也クン?」

「なっ!?・・・ま、ま・・・さか・・・」

「はい、そこに正座。」
「っ!!」

床を示され、反射的に言われるがままに正座する赤也。
入れ替わりで、
先ほどまで赤也が座っていたパイプ椅子に幸村が座る。

「ついに真田が匙を投げたよ。
ダメじゃないか、あんまり真田を困らせちゃ。」

「いやー・・・それは・・・」

「今回は18点だっけ?」

「ぜ、前回より上がったッスよ!?」

「同じだろ。赤点なのは。」

「うっ・・・」

そうバッサリ切り捨てられれば返す言葉がない。

「というか、前回あれだけ真田に叱られて、
それなのに下がったなんてふざけたこと言われたら、
俺がこんな穏やかにお説教とかしてるわけないだろ。」

(っ・・・黒い・・・黒いオーラが見えるっ・・・)

穏やかな口調で、ニコニコ笑っていても、
言葉の節々に冷たさを感じる。
赤也は、体温が下がっていくのを感じた。

「それにしても、前回12点で今回18点・・・? 
クスクスッ 呆れて笑うしかないよね。」

「いやっ・・・でもっ・・・
今回のにはちょっとしたわけがっ・・・」

「へぇ。言い訳かい? いいよ。言ってご覧。でも・・・」

幸村は一度言葉を切ると、
またニッコリ笑って先ほど以上にどす黒いオーラを放って一言。

「この俺にわざわざ言うほどの言い訳なんだから、
それで俺が納得できなかったら・・・
それ相応の代償は覚悟してるんだろうね?」
「っ!!!」

赤也は固まってしまった。
よく考えてみれば、「テスト中寝ちゃいました~」なんて言い訳言ったら、
よけい怒らせるに決まってる。
しかもその流れで、一夜漬けで何とかしようとしたことがバレれば・・・
何も言うことができなくなってしまった赤也を見て、
幸村は容赦なく続ける。

「言わないのかい? それなら続けるよ。
この前、真田は平手で100回だったらしいね。
その程度じゃ赤也は何ともないんだ?」

「なっ・・・何ともないわけっ・・・」

「まぁ、とにかく。
・・・履いてるもの、自分で下ろしてここにおいで。」

「は・・・うぇっ!?」

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「越前? どういうつもりだったんだ?」


「あー・・・えっと・・・」




土曜日、休日部活後の部室。

夏で日が長いとはいえ、7時を回れば辺りはだいぶ暗い。

今日は他校で練習試合だったため、

部室にもコートにも、2人以外の部員の姿はない。


青学テニス部1年、スーパールーキーの越前リョーマは、

只今絶賛大ピンチな状況に陥っていた。


リョーマを目の前に立たせ、

パイプ椅子に座っていつも以上に眉間に皺を寄せているのは
青学テニス部部長の手塚国光。


そして、リョーマがこのような状況に追い込まれたのは、
もう何度目か分からない「寝坊からの遅刻」だった。

リョーマ自身も、さすがに今回はちょっとまずかったと少しは思っていた。

普通の練習での遅刻も結構日常茶飯事で

その都度お説教&グランドを走らされていたわけだが、
一度だけ練習試合に遅刻したことがあった。

その時の手塚の怒り方は相当で、「次は許さない」と言われていたのだ。

そう言われたのが約1ヶ月前。
遅刻自体は2週間前の休日練習にもしているので、

ここのところ隔週ペースで遅刻していることになる。






「どういうつもりだったのかと聞いているんだが?」


「いや・・・寝坊ッス・・・」


普段は先輩相手にもかなり尊大な態度をとっているリョーマだが、
今の手塚の威圧感は半端ない。

怒りのオーラが目に見えるようだ。


「俺はこう何度も何度も寝坊して遅刻するのは

どういうつもりなのかと聞いているんだ。」


「あー・・・それは・・・まぁ・・・」


「俺は、お前が寝坊で遅刻するたびに再三注意してきたはずだが?」


「・・・・・・」


「しかも、今日は練習試合だった。

以前練習試合に遅刻した際、『次は許さない』と言わなかったか?」


「っ・・・」


「覚えていなかったのか?」


「・・・」


言われた。確かに言われたが・・・。

リョーマは、元来説教を黙って聞いているような性格ではない。
神妙に聞いていたが、そろそろ限界だった。


「別にっ・・・いいじゃないッスか・・・

試合自体には間に合ったんだし・・・・・・っ!」


そう、確かに試合『自体』には間に合ったのだ。
ただ、集合時間に間に合わず、

各校のコートでのウォーミングアップに間に合わなかった。

リョーマからしてみれば、

確かに遅刻はしたが、試合に穴を開けたわけでもなく、
ウォーミングアップが出来なかったのは自分だけなのだから・・・

という思いがあった。


何とか耐えておとなしく聞いていたが、本音は隠せなかった。
つい口をついて出た一言。
だが、それを聞いた途端、

手塚の眉間の皺が深くなり、眉がピクッと動いたのを、リョーマは見てしまった。


「ほぉ・・・」


(これ・・・ヤバイ・・・? でもっ・・・)


クールなふりを装うが、内心穏やかではない。

いくらリョーマでも、いくら「傍若無人」なんて言われても、

やっぱり手塚は怖い存在なのだ。


「よく分かった。・・・・越前。

お前は以前の俺の注意を大したものとも思わず、
今日も遅刻したあげく、

今日のことは試合に間に合ったのだから別に良いと思っている、ということだな?」


「っ・・・」


そう改めて言われると・・・だが、もう後には引けない。


「っ・・・そうッスよ。だから何?」


更に、手塚の表情が険しくなる。

ここで否定して、謝れば良かったのだろうか。
そうすれば、少しは状況が良くなったのだろうか。
いや、もう手遅れだったか。

こういう時、リョーマは自分の性格が少し恨めしくなる。
謝らなければと分かっていても、素直に言葉に出来ない。
口をついて出るのは、つんけんしたぶっきらぼうな言葉だけ。
それで「生意気」だの「傍若無人」だの言われる。
でも、そういう性格だから、自分ではどうしようもない。


「・・・どうやら、別の方法が必要のようだな・・・。」


リョーマは、ゾクッと悪寒を感じた。
手塚の纏う空気が変わった感じがした。


「越前。こちらに来い。」


「っ・・・なんで・・・?」


「来い、と言ったのが聞こえなかったのか?」


そう言われても・・・。
行かないとまたまずいだろうと分かってはいても、

足が動かないのは素直に従うのが癪だからか、
それとも単純に何をされるか分からない恐怖からか。

いっこうに動こうとしないリョーマに、

手塚がしびれを切らして立ち上がり、リョーマのもとまで歩み寄る。
そして、リョーマの右腕を強引に掴んだ。
それでようやく、リョーマも我に返って慌てる。


「ぶちょ・・・何してっ・・・いった・・・離してっ・・・」


そのままパイプ椅子まで戻り、気づいたら・・・

リョーマは手塚の膝の上に押さえつけられていた。


「何するんスか! 部長!」


「言って分からないなら実力行使するしかないだろう? 

体に教えてやる。仕置きだ。」


「何を・・・


バシィィンッ


ってぇっ!! 部長!?」


リョーマが「意味が分からない」と言おうとしたのを遮って、

手塚が平手を振り下ろした。
ユニフォームのハーフパンツの上からとはいえ、

テニスで鍛えた手塚の力は相当で、そこそこ痛い。
しかし、それよりも、

それによってリョーマは今自分がどういう状況になっているのか思い知ってしまい、
耐え難い羞恥を感じる。

が、手塚はそんなのおかまいなしだ。


バシィンッ バシィンッ バシィィンッ


「いっ・・・ちょ・・・ぶちょっ・・・こんなの・・・離せっ・・・」


何とか抵抗を試みるが、元々相当な体格差な上に、
パイプ椅子に座っている手塚の膝の上、

という不安定な体勢でまともに抵抗ができない。

それどころか、そんなリョーマを見て手塚は溜息をひとつつくと・・・


「ちょっ・・・なにしてっ・・・」


ハーフパンツと下着に手をかけ、一気に引き下ろしてしまった。

これにはリョーマも黙っていられず、最大限の抵抗を試みる。


「離せっ・・・離せよっ・・・・」


「仕置きだと言っただろう。おとなしくしていろ。」


バシィィンッ


「いっ・・・」


明らかに先ほどとは変わった痛み。

焦って手を後ろに回したが、


「おとなしくしろと言ったはずだ。」


と、あっさり背中に縫い止められてしまった。


バシィィンッ バシィンッ バシィィンッ バシィィンッ


「くっ・・・いっ・・・うぁっ・・・ぶちょっ・・・いぃっ・・・」


「確かに試合には間に合った。だが、それでいい、というわけではないだろう。」


淡々とお説教を始める手塚。

口調は怒っているが、語気を荒げるようなことはない。
だが、何にしたって振り下ろされる平手が痛すぎる。


バシィィンッ バシィィンッ バシィィンッ バシィンッ バシィィンッ


「いっ・・・んんっ・・・ってぇっ・・・あぁっ・・・」


「満足にアップする時間も、自分の調子を確認する時間もなくて、

万が一のことが起きたらどうする?」


手塚は、遅刻したリョーマの試合順を後にずらして、

空いた時間でアップをするように命じた。
リョーマは「別に大丈夫だ」と不満だったが、そこは渋々従ったのだ。


パァァンッ バシィィンッ バシッ バシィンッ バシィィィンッ


「いってっ・・・うぁぁっ・・・いぃっ・・・うっ・・・」


「お前は不満そうだったが・・・。

選手にとって怪我がどれだけ大変なことか、知らないはずはないだろう。」


バチィィンッ バシィンッ バシィンッ バッシィィンッ


「うぅっ・・・ぁぁっ!・・・もっ・・・無理っ・・・ぶちょっ・・・」


そろそろ痛みを耐えるにも限界が近づいてくる。
・・・が、手塚は耳を貸してくれる様子もなく。


「それに、一度注意されたことを繰り返すな。

そもそも、遅刻は一度だってダメだろう。
そういうことを続けていると、信用をなくす。」


バシィィンッ バシッ バシィィンッ パァァンッ バッシィィンッ


「くぁっ・・・ぅぅっ・・・いっ・・・ったぁっ・・・」


「一度信用をなくすと取り戻すのは大変だ。

『遅刻をしない』というのは、部のためでもあるが、越前。

お前自身のためでもある。」


バシィィンッ バシィィンッ


「うぁっ・・・ぁっ・・・わかったっ・・・わかったッスからっ・・・」


「何がだ。」


バシィィンッ バッシィィンッ


「いったぁっ・・・もっ・・・遅刻しないしっ・・・注意されたら守るからっ・・・」


「あぁ。」


バシィンッ パァァンッ バシィィィンッ


「んぁっ・・・いってっ・・・ぅっ・・・今日はすいませんでしたっ・・・だからっ・・・」


『もうやめて』。

そう言おうとしたら、手塚に遮られた。


「やっと分かったようだな。」


(終わった・・・?)


一度手塚の手が止まり、

リョーマがハァハァと息を上げながら、そう思った時。
最悪の言葉が耳に飛び込んできた。


「なら後はしばらく、先ほどの態度の悪さを反省していろ。」


「なっ・・・!!」


手塚国光。彼の厳格さはやっぱり本物だった。









「いたぃっ・・・ぶちょっ・・・もうっ・・・無理っ・・・」


それからひとしきり叩かれて、お尻が真っ赤になった頃。


「・・・もういいだろう。立て。」


手塚が突然手を止めて、リョーマを立ち上がらせた。

リョーマは、うっすら涙目で、ズボンを上げる。

『絶対泣かない』と思っていたのだが、結局涙混じりの悲鳴をあげてしまった。


「これで少しは懲りただろう。」


「ッス・・・」


ズボンの上からお尻をさすりながら、うつむき加減で答えるリョーマ。
どうにも、恥ずかしさと気まずさで手塚の顔をまともに見れない。


「・・・明日から一週間、部活の前にグラウンド10周。」


「はぁっ!?・・・・・・あ、いや、ちが・・・」


とっさに出してしまった声に、リョーマは焦る。
弁解しようとするが、それより前に手塚が少し笑ったような表情になって、


「冗談だ。」


と言った。


(分かりづらいっ・・・)


普段滅多に冗談なんか言わないくせに・・・。

と、リョーマは心の中で文句を言う。


「お前は青学の柱になるんだろう。

これから部の中心になっていく者が、
遅刻などというくだらないことを繰り返していてどうする。」


「ッス・・・」


「越前。お前は実力がある。些細なことで自分の足を引っ張るな。」


「・・・はい・・・」


手塚は、パイプ椅子から立ち上がる。


「期待しているんだぞ。

俺も、他のレギュラーも。お前が立派な柱になることを、な。」


そう言って、部室を出て行った手塚。


(っ・・・何、それ・・・。)


そんなことを言われたら、もう遅刻できないじゃないか。

結局、手塚にはかなわないリョーマなのだった。


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「んっ・・・」


練習試合が終わったのは午後2時頃だったが、
白石が目を覚ました時には、

日も傾き掛け、保健室の窓からは夕焼けが見えた。

白石が眠っている間に、

小石川が片付けが終わったので部員を帰らせた、と連絡に来て、

部室の鍵を千歳に渡し、
その後渡邉が顔を出して、

「千歳がついてるなら大丈夫やな」

と言って、後は任せた、と帰って行った。


「目、覚めたと? もう大丈夫か?」


「あぁ、だいぶよぉなったわ。千歳・・・悪いな・・・」


「ったく・・・あんだけ言ったんに。無理したらいかんって。」


「すまん・・・」


千歳に叱られ、少しシュンとして謝る白石。
しかし、千歳は今回はそれで許さなかった。


「あかん。みんなに心配かけたんよ? 

特に金ちゃん。泣きそうな顔しとったばい。」


「そうか・・・」


一番、それは避けたかったのに。

力なく相づちを打って、そのまま黙ってしまう白石。

長い沈黙を破ったのは、またしても千歳の言葉。


「白石。今の白石に必要なんは何やろね?」


「・・・は?」


質問の意味がくみ取れず、聞き返してしまう白石。
そして千歳が言ったその答えは、白石には信じがたいものだった。


「お仕置き、やね。」


「なぁっ・・・!?」


まさかの答えに、絶句する白石。
が、お構いなく近づいてきた千歳は、白石の腕をとる。
慌てた白石は、ガラにもなく抵抗した。


「待って、千歳、それは・・・っ」


「何? 白石、いつも金ちゃんに言うとるんじゃなかと? 

人に心配かけたらいかんって。」


「うっ・・・せやけどっ・・・」


いつも自分が言ってることを引き合いに出されたら、反論できない。

白石が言葉に詰まると、

千歳は有無を言わさず白石をベッドから引っ張り出した。
そして、自分がベッドの縁に座り、その膝の上に白石を横たえる。


「ほんまに待ってって・・・っ」


お仕置き、しかもよりにもよって膝の上。
抵抗しようにも、体格、パワーともに千歳には適わず、

白石はおとなしくジャージと下着を下ろされるしかなかった。
恥ずかしさで、顔が赤くなる。
しかし、その恥ずかしさも、

1発目を受けたところでそれどころでは無くなってしまった。


バッチィィィンッ


「うぁぁぁっ」


痛い。とてつもなく痛い。白石は焦った。

千歳は、身長に比例して手の平も大きい。

一撃で、白石のお尻全体をカバーしてしまうような大きさだ。
ということは、痛みが休む間もなくお尻全体を襲う。

それに相まって、千歳のパワー。
その痛みは、白石が想像していたものを遙かに超えていた。


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「いたぁっ・・・ちょっ・・・ちとせっ・・・うぁぁっ」


「何ね?」


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「いたぃっ・・・ほんまに・・・いたいってっ・・・くぅぅっ」


痛みに顔を歪ませる白石に、千歳はさらりと一言。


「お仕置きは痛かもんやって、いつも白石が言うとるんじゃなか?」


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「うっ・・・それはぁっ・・・ったぁっ・・・そうやけどっ・・・」


「やったら、我慢しないとあかんね。」


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「あぁぁっ! うぅっ・・・くぅっ・・・」


自分がいつも言っていることを返されるのだから、たまらない。
反論できないし、恥ずかしいし、情けないし。

それに、痛みもすごい。

千歳は、一定の強さの平手を、何があっても止めない。
白石が何か言っても、自分が何か言うときも、決して止めない。


痛くて、恥ずかしくて、情けなくて、辛くて。
必死に耐えていた白石にも、そろそろ限界が訪れていた。


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「ちとせぇっ・・・ほんまっ・・・謝るからっ・・・やからっ・・・」


「ん?」


バチィィンッ バチィィンッ バチィィンッ


「いぁぁっ・・・もっ・・・とめてっ・・・うぁぁっ・・・ほんまにっ・・・あかんっ」


「・・・」


ここで、始めて平手が止まった。
白石のお尻は満遍なく赤く染まり、見るからに痛そうだ。


「ハァハァハァ・・・」


肩で息をして、どうにか涙をこらえている白石。
ここまで来ても、まだ耐えようとしている白石。
そんな白石を見て、千歳は声をかけた。


「・・・ずっと・・・ずっと、『完璧』である必要はなか。」


「・・・え?」


千歳の言葉に、白石は涙で潤む目を見開いた。


「もちろん、プレイスタイルとしての『完璧テニス』は、

それこそ白石のテニスやし、これからも続けて欲しか。
それが白石らしいのテニスやって、そげんことは分かっとる。」


千歳は、白石のお尻を軽くポンポンと一定のリズムで叩きながら、

白石に語りかける。


「ばってん、それはプレイスタイルの話ばい。

本人まで、ずっと『完璧』である必要はなかよ。」


「千歳・・・」


「白石も俺らと同じ中学生たい。失敗もするし、苦手なこともある。
疲れるときだってあるし、サボりたいときだってあるとよ。それが普通ばい。
それば無理矢理押し殺して、いつでん平気なように振る舞って、

そんで俺らに心配ばかけんようにするなんて・・・
そげん気ぃ遣う必要なか。

俺らは仲間ばい。仲間には弱みも見せて良か。
辛い時に助け合って、支え合うんが仲間たい。


「っ・・・」


「こぎゃん風になる方がよっぽど心配ばい。

もっと・・・もっと俺たちを頼ってくれんね。」


「ち・・・とせ・・・」


千歳の言葉が心に染みる。
気づけば、白石の瞳から涙がこぼれ、頬を伝っていた。


「あかん・・・っ・・・せっかく・・・泣かんようにしてたのにっ・・・

そんなん言われたらっ・・・」


気づいた白石が焦って、顔を伏せる。

そんな白石の肩を、千歳が優しく叩いた。


「我慢することなか。今まで、えらいいっぱい我慢してきたんやけん。」


「うっ・・・ち・・・とせっ・・・」


「今日はいっぱい、泣いてよか。それのがすっきりするばい。」




白石は、保健室のシーツに顔をうずめて、しばらく泣いた。


思えば、2年の時からシングルス1を担い、部長に選出されて。
その頃から、ずっと白石は部員の前で『完璧』で居続けたのだ。
辛いことも、苦しいことも飲み込んで。
弱った姿は決して他の部員に見せないで。


心にため込んだ辛さ、苦しさをを洗い流すように、

涙はずっと瞳から流れ続けた。






「ふっ・・・う・・・」


しばらくして、白石が落ち着いてきた頃。

千歳は、声をかけた。


「白石。お仕置き途中たい。」


「へ?・・・・・・あぁ、そうか・・・。

嫌なこと思い出させんといて欲しかったわ・・・」


せっかく泣いてすっきりしたのに、と白石は溜息をつく。
ここで終わりにしてくれていいのに・・・と、少し千歳を恨めしく思う。


「反省したと?」


「あぁ。十分。」


「なら、言うことは?」


「あー・・・」


答えは分かっている。だって、それは自分がいつも言わせる言葉。
だが、自分が言うとなるとやはり気恥ずかしい。
それでも、自分の為にここまでしてくれた千歳に対して、

言わないわけにはいかない。

白石は一瞬黙って、それからはっきり言った。


「千歳・・・・・・ごめんなさい。」


「ん。さすが白石やね。そしたら、3回。」


「あぁ。」


仕上げの3発に備えて、白石が体に力を入れる。

そこへ、今日最強の3発が降ってきた。


バチィィンッ バチィィィンッ バッチィィィンッ


「うぁっ・・・いぃっ・・・ったぁぁぁっ!」



これにて、白石のお仕置きは終了したのだった。





「千歳・・・」


終わった後、少しお尻を冷やして身支度を整え、

荷物を取りに2人で部室に戻ったとき。

白石は千歳を不意に呼んだ。


「ん? 何ね?」


「・・・おおきに。嫌やったろ? 俺なんかお仕置きするの・・・」


お仕置きは、する方も辛い。

それは、普段する側である白石自身が十分分かっていた。
ましてや、同学年の自分をするのは、千歳だって複雑だったはずだ。


「・・・まぁ、そーやね。だけん、白石はいつでんやってるやろ?
そいに、白石楽になったみたいやけん、やって良かったばい。」


千歳は白石を見てニコッと微笑む。


「あぁ・・・めっちゃ痛かったけどな。お仕置きされて、俺も良かったわ。
あのままやったら、また同じ事繰り返してたやろし。」


「せやね。・・・まぁ、また必要になったらいつでも言うて。」


「いらん、もう絶対いらん。

今日は必要やったと思うけど、

いくらなんでも千歳、痛すぎるわ・・・(苦笑)」


白石がそう言うと、2人は顔を見合わせて笑うのだった。

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