「あるもの」と「なきもの」
テーマ:旅ポツポツ
バチバチ、バチン。
それは、静かに燃え続ける。
静かに、静かに、まるで
音を奏でるように、一定のリズムで
燃え続ける。
ポツポツ、
バチバチ、バチン。
天に向かい、静かに燃え続ける。
布にくるまれた、「あるもの」を挟み
無造作に、積み上げられた薪。
それが、幾重にも積み重なり、
折り重なり、高く、高く、
積み上げられていく。
あるものは、色とりどりの布にくるまれ
また、あるものは、質素な布にくるまれる。
「あるもの」は奥の方から、次々に運ばれてくる。
それらはいったん、河の水によって清められ
木々の間に挟まれる。
着火。
みるみる、炎が燃え上がる。
「あるもの」は音を立て
まるで、音楽を奏でるように
燃え続ける。
少しずつ、少しずつ
布の間から、かいまみえるピンク色の
肉の塊。
表情はなく、動くことなく
無言の雄叫びをあげるように
その目は虚空をとらえ続けている。
まるで、この世の全てを背負っているかのように
だが、しかし、何も語ることなく、あらがうこともなく
凛とし、ただ、ただ、燃え続ける。
その目は、
最後の、最後の、その瞬間まで、燃え尽きるまで
虚空をとらえ続ける。
臭いは、ない。
風下だからか。
あるいは、旅を続けるうちに
感覚が磨耗してしまったのだろうか。
臭いを、感じ取ることはできない。
ポツポツ・・・バチン。
小さく、なっていく。
ボクは、石段に腰を下ろし
燃え上がる炎を眺め続ける。
日本にいるときから
ここのことは知っていた。
24時間、絶えることのない炎が
ある場所。
絶えず、休まず、ただ、黙々と赤い炎が
昇る場所。
ここにくれば、何かが、わかるかもしれない。
ここにくれば、何かが、変わるかもしれない。
ココニ来レバ、何カガ・・・
そんな淡いボクの期待は、見事に裏切られた。
何も変わらない。
何もわからない。
ここにきて、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。
空が赤く染まり、夕闇がその色を一層濃くする。
黙々と燃え続ける、炎は
闇を切り裂き、あたりを赤く染め上げる。
ポツポツ・・・
ポツポツ・・・。
次第に、それは形をなくしていく。
次第に、それは小さくなっていく。
灰に・・・なっていく。
高く積み上げれた木々もまた
その高さを失い、土に還っていく。
風が吹く。
風に運ばれて、
灰が、運ばれてくる。
もうない。
もう、その面影はない。
何十年もかけ、
彩られてきた一つの命が
今日も、また、消えた。
目を閉じ、両手の平をあわせ
そっと天に祈る。
・・・お疲れ様です。
・・・いい・・・旅を。
そっと空を見上げる。
空一面には星達が瞬いていて
まるで、しゃらしゃらと音が聞こえるようだった。
・・・綺麗だ。
炎のあった場所に目を向ける。
新しく「あるもの」が運ばれてくる。
絶えることなく、絶えることなく。
そっと立ち上がり、ボクは、静かに
「なきもの」に礼をする。
それは、ボクにとって
旅の終わりを意味していた。

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