さまざまな布片を縫い合わせるパッチワークに「ピーターから奪ってポールへ支払う」という名のパターンがある。この言葉、次にポールから奪ったものをピーターへ払うという際限ない繰り返しを暗示している

 色の違う布を互いに入れ替えながら同じパターンを作っていく--その繰り返しをこの古い英語のことわざで言い表したらしい。ところでこのピーターとポールの間でお金をやり取りしている人物、なんでこんなことをしているのか 

 今日では「ピーターからポールへ」は投資詐欺の手口を表す言葉となった。破格のもうけ話でピーターに出資させ、そのお金をすでに出資したポールへの配当金に回す。高い配当に気をよくしたポールはさらに出資金を増やして…… 

 こちらは「大企業へのつなぎ融資」で25%の配当があるとのふれこみで出資を誘っていたという。派手な暮らしやファッションでテレビのワイドショーをにぎわせてきた熊本県の62歳の女が出資法違反の疑いで逮捕された事件である

 警察によれば容疑者は出資した人に紹介料を払って新たな出資者を募り、70人以上から約7億円を集めていた。出資者は会社経営者や役員が多いと聞けば意外だが、そんな人たちの口コミがかえって投資話に真実味を与えたのだろう

 破格の配当、それも秘密の投資話……とくれば、まずペテンと断じて間違いない。だが、いざ甘いささやきを聞くと自分の場合は例外と思ってしまうピーターやポール、つまり人間すべての弱点である。 

【4/21 毎日新聞・余録】
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