【耐える心に】

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『耐える心に、新たな力が湧くものだ。全てそれからである。 
心機一転、やり直せばよいのである。  
長い人生の中で、そのための一年や二年の遅れは、モノの数ではない。』 

本田宗一郎(実業家) 



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 ジョン・マッケンローといえば、1970年代から90年代にかけてテニス界を代表した米国の選手である。速さと力に加えて、多彩なショットを武器に4大大会で17個のタイトルをさらった

 ダブルスにも好んで出場した。4大大会の初優勝は18歳の時、幼なじみの女子選手と組んだ全仏オープンの混合ダブルスで達成したものだ。近年のトップ選手の多くは体力の消耗を避け、シングルスに専念する

 判定への抗議や奔放な言動で「悪童」とも呼ばれたが、激しく攻撃的なスタイルはダブルスでは一変した。互いの個性を頭に刻み、呼吸を測りながら試合の駆け引きを楽しむ。人としての幅の広さが見えてくる気がした

 マッケンローの連想が浮かんだのは、卓球の世界選手権混合ダブルスで石川佳純(かすみ)、吉村真晴(まはる)組が優勝したからである。日本勢の頂点は実に48年ぶりだった

 同じ93年生まれだが、学年は石川が一つ上。ペアを組んで6年だという。身長157センチと177センチ。体格が異なる2人は卓球台の前では流れるように体を入れ替えた。シングルスでのとがった雰囲気は影を潜め、美しいリズムがあった

 体格差を考えれば、男女が一緒にプレーするスポーツはごく限られてしまう。東京五輪では卓球の混合ダブルスに加え、いくつか男女混合種目の追加が決まった。男女の協業による化学反応の妙を競い合うのは、興味深い。種目増は運営側には歓迎ばかりではないだろうが、スポーツを楽しむ目を肥やしてくれるに違いない。 

【6/18 朝日新聞・天声人語】

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