釈尊が初説法の地・鹿野苑へ向かう途中のこと。ウパカという修行者に出会い、対話が始まった

 “仏様”の言葉だからすぐに納得した――わけではなかった。ウパカは「そうかもしれないね」と皮肉交じりに頭を振り、去ってしまったという。仏教学者の中村元氏は、仏でさえも「伝道に関してやはり失敗があったということは、興味ある事実」と(『中村元選集決定版第11巻』春秋社) 

 鹿野苑に着いた釈尊は、かつての修行仲間5人のもとへ。数日がかりの対話の末、ついに最初の一人、コンダンニャが教えを理解する。釈尊は感嘆の声を2度も上げた。「ああ、コンダンニャは悟ったのだ!」。やがて他の4人も続いた。なお、先述のウパカも後に釈尊に帰依したとされる

 仏典が伝える釈尊の、なんと人間らしい姿か。「仏」だから、何か特別な力を持っているわけではない。正道を広めたいという誓いの強さ、友に幸福になってほしいという慈悲の深さ、心を通わせようとする誠実と忍耐。仏の「力」といっても、そこに尽きよう

 御書に「力あらば一文一句なりともかたらせ給うべし」(1361ページ)と。自身の持てる精いっぱいの力を振り絞って、対話に挑もう。その人こそ、仏にも等しい、広宣流布の偉大な勇者である。 

【6/14 聖教新聞・名字の言】
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