自然界にはない金属音は昔の人にはとても神秘的に聞こえたらしい。鈴や鐘の音は神々がすむ他界とこの世をつなぐ霊力があると思われていた。神社で鳴らす鈴の音も参拝者を清め、神霊を呼び起こすものという

 そんな鈴や鐘の音に魔よけの呪(じゅ)力(りょく)があると思われたのも同じ心の働きによるのだろう。背景には人工的な音が野生の獣を追い払うのに役立つという経験があったのかもしれない。今も山に入る時はクマよけの鈴が必需品とされている

 昨年、クマによる死者が相次いだ秋田県で今年もクマの出没が続いている。先日は61歳の女性がクマに襲われたとみられる状態で見つかり、その後亡くなった。女性は日ごろ山に入る際は鈴を携帯し、この時も腰につけていたという

 実は秋田県では昨年の死者が出たケースも含め、クマよけの鈴をつけていながら被害にあう例が相次いでいるという。山菜採りではしゃがんだ姿勢で鈴が鳴らないままクマに遭遇することもあり、鈴の効果自体も過信は禁物らしい

 この季節、地元で人気なのはネマガリダケと呼ばれるタケノコで、実はクマも大好物という。やぶの中で人とクマとが鉢合わせとなる危険はもともと大きいが、怖いのは昨年来人を襲ったクマが人も鈴音も恐れなくなったことだろう

 地元の自治体は住民に入山の自粛を強く求めている。それにしても鈴の音に慣れ、その呪力を恐れなくなったクマの続出は何を告げているのか。人間の方が慣れを捨て、敏感にならねばならぬ時だろう。 

【5/31 毎日新聞・余録】
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 「創価学会は、絶対的幸福境涯に至る軌道の上を走る、いわば“列車”です。これに自ら乗れば誰でも幸せになれます」。ある壮年部員が会合でユニークな例え話をした。「ただし、途中下車したら駄目ですよ」

 今は苦しみのトンネルの中だとしても、信心で前に進む限り、幸福の目的地へ近づける――話を聞いた皆が納得したに違いない

 海沿いの岩手県釜石市に生まれ育った婦人部員は、東日本大震災の津波で自宅を失った。“なぜ……。幸せの道から外れたのだろうか”。そんな彼女を励まそうと、内陸の花巻市から同志が何度も足を運んだ

 その真心に再起を誓った彼女はその後、縁あって花巻市に転居し、先の同志と喜びの再会を。“学会から離れない限り、幸福の直道を歩んでいける”と実感した彼女は今、自身と同じく見知らぬ地に避難した友を励ます側に回り、充実の日々を送る

 岩手県が生んだ宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』(集英社)には、「ほんとうの幸」といった言葉が随所に出てくる。話が進むと、それが「みんなのほんとうのさいわい」という趣旨の言葉に変化していく。旅はにぎやかなほど楽しい。そして山越え谷越え、目的地へ進む過程そのものに、充実があり、満足がある。幸福を目指す広布旅も同じだろう。 

【5/31 聖教新聞・名字の言】
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