75年前の6月、戦時下に一冊の本が出版された。『学生に与う』。非合理・反知性の軍国主義に染まりゆく世相の中で、学生に支持され、瞬く間に十数版を重ねた。戦後もロングセラーを続け、学生、青年の必読書の一つとなった。

 著者の河合栄治郎は、軍国主義に抗して論陣を張り、軍部に立ち向かった。そのことで、最終的に東大教授の職を追われた。弾圧の中、3週間あまりで一気に書き上げたのが『学生に与う』だった。

 同書で河合は学問、教育の目的を「人格の陶冶」と位置づけ、「人格」を成長させる学生生活の在り方の一つとして「師弟」を説いた。「弟子はあくまで誠実をもち続け、最後まで師の跡を追う愛着と執拗さがなければならない」と。

(中略) 

 まことに「師弟」こそ、人格を陶冶し、尊極の人生を生きるための源泉である。

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