今後は「危険ドラッグ」に――警察庁などが、事件・事故の原因となる「脱法ドラッグ」の新たな呼び名を発表した。「絶対に使ってはならない」ことを強調する効果を期待している。

 事象は、言葉で定義されて初めて、何らかの意味を持つ。同じ現象でも、言葉一つで意味は変わる。例えば、サッカーの観客が「ファ ン」ではなく「サポーター」と呼ばれることで、〝イレブンを支える12番目の選手〟の位置付けを与えられたことも、一例だろう。
AD

【恋のチャンスは】

テーマ:
『恋のチャンスは、熟れている時にもがなければならない果物のようだ』 

※仕事も恋も気持ちがもっとも高まっているときに、アタックしなければならない。熟れた果物と一緒で、木から落ちたら二度とチャンスはない。 

ヴェルレーヌ(フランスの詩人) 

AD
 ジョン・ハーシェルといえば南アフリカのケープタウンの天文台から南半球の天体観測をした英国の天文学者である。1835年のある日、米ニューヨーク・サン紙は彼が画期的な望遠鏡を作り、月の観測で驚くべき発見をしたと報じた。

 その連載記事によれば、月には森があり、羊のような一角獣、火をおこすビーバー、そして何と翼を持つ月人がいたというのだ。もちろん記事はすべてでっち上げだが、同紙は飛ぶように売れ、世界一の発行部数を記録する。いかさまがばれたのは何週間も後だった。

 当のハーシェルは騒ぎを知らずに観測に打ち込んでいたが、後に届いた捏造(ねつぞう)記事を結構楽しそうに読み、こう言った。「自分はこんな名誉に応えられそうにない」(「詐欺とペテンの大百科」青土社)。19世紀前半にはまだ人々が「月人」の存在を信じたわけである。

 今や生物の存在はおろか天体自体が冷えて固まった死の星と思われていた月である。ところが中国地質大学や国立天文台の研究チームが月周回衛星「かぐや」の観測記録などを分析したところ、月の中心部は1300~1900度の熱を持ち続けているらしいという。

 もともと月は地球の引力によって伸び縮みしているそうだ。「かぐや」で観測されたその変形の大きさは中心部に熱く軟らかな層があることを示していた。熱は変形による摩擦で生じているのである。「月は今も冷え切っていない生きた星」と研究チームは指摘した。

 「かぐや」が撮ったのは一角獣や月人のいない荒涼(こうりょう)たる月面だが、実は内に熱をひめて脈動していたことをつきとめた。地球の連れ合いの息災がうれしい。
AD