地域の絆を築く人々
テーマ:ブログ昨年から日本を席巻しているキーワードは、「絆」です。たしかに、人は一人で生きるのではなく、家族や友人や地域の人々や職場での仲間などとのつながりがあってはじめて生かされ、生きる喜びを味わえるのだと申せます。昨春の大震災以来、私たち多くの日本人にとって、そういう心情が浮かびあがって参りました。ここで、絆といっても、決して自然に出来上がり、強まるものではなく、これは私どもが一人一人大切に編み上げ、つくりあげていくものではないでしょうか。
去る2月4日、立春の日の午後、東京は千駄ヶ谷の会場で、「こころを育む総合フォーラム」の平成23年度の表彰式とシンポジウムが開かれました。全国各地から、こころを育むという活動に共感し、そういう運動を実践しておられる方々、そしてこの運動に関心を寄せて下さっている方々が集まって下さいました。その中で優れた運動をしておられる団体や個人の皆さんを表彰して、「こころを育む活動」を全国的に進め、広げ、続けるきっかけにしていただこうという趣旨です。この催しは2008年から続いておりますが、次第に全国からの反響も大きくなって参りました。
今年の表彰式やシンポジウムの模様は、パナソニック教育財団のホームページでも紹介 しておりますのでご覧ください。今年の全国大賞を受賞されたのは、三重県の北部にある、いなべ市の石榑の里コミュニティでした。「子どもは地域の宝、地域全体で子どもを守り育てる」という目標をかかげ、石榑小学校を拠点にして様々な活動を展開しているグループです。しかも、各種の活動をネットワークでつなぎ、トータルとして地域が活性化するよう、よく考えられた仕組みをつくっています。そして、大人も子どもも無理なく運動に参加することができる、柔軟な組織づくりになっているのが特徴です。
ここでは10年前に小学校が建て替わるのを機会に、地域の人々が英知をあつめて意見を集約し、学校に地域スペースを設け、地域住民による学校支援から地域の絆つくりにまで発展させていったのは、素晴らしい取り組みです。校舎を利用した子どもの居場所づくりのボランティア、子どもの通学や地域の交通の「見守り隊」、大勢の市民や大学生も参加する大がかりな「石榑の里まつり」などなど、工夫と創意に満ちた活動も続きます。しかも、企業とも連携をし、加えて環境活動の実践を通じて資金も編み出すという工夫ぶりです。
昨年の熊本市の「オバパト隊」も地域のご高齢の女性たちがそれぞれの専門性をはっきしながら、子どもたちを見守り、地域を安心、安全なものにしていく優れたプロジェクトでしたが、今年も、地域社会に役立ちたいという大人たちがつくりあげた見事なプロジェクトだと思います。そこには、賢明で社会貢献をいとわず熱い気概にみちた大人たちが存在していることが伺われ、深い感銘を受けました。小学校を拠点とする活動は、住民になじみやすいのですが、子どもが成長しても絆が途絶えがちにならないような工夫が必要です。この新たなコミュニティが、その目標と手法を確立し、これからも継続できる運動にしていっていただきたいものです。
この全国大賞以外にも、地域のブロック大賞、あるいは奨励賞など、素晴らしい取り組みがあちこちでなされていることに感銘をうけました。それぞれの内容も、ホームページ でご覧下さい。
この日のシンポジウムには、被災地の岩手県で、全国から学生ボランティアをつのり、震災地の子どもたちの居場所をつくり、学びや遊びの機会をつくっているグループの指導者も参加してくれました。これは、被災地の岩手県立大学の山本克彦先生で、すでに中越地震のころから活躍している方です。先生の熱意と組織力に全国の大学も呼応し、主として休暇中に全国から多くの学生たちが集い、被災地の子どもたちに希望と勇気をあたえる仕事をしてくれています。むしろ、学生たち自身がその活動を通じて、自らも学ぶことが多いとの反応があるようです。
今回のシンポジウムで浮かび上がったのは、子どもにとって居場所があることがいかに大事かということ、そして地域のコミュニティをもつことが住民のすべてにとってとても大切であるということでした。今後日本は、各地で自然災害が予想されていますが、いざという時、助け合える地域社会のコミュニティを日ごろからつくりあげることが、これからの日本にとってまことに重要であることが共通認識となりました。
ことに都市部ではどのようにしてコミュニティを作っていったらいいのかが、今後の大きな課題です。どこでも、誰かが立ち上がり、周辺を巻き込んでいくことが突破口になるのだと思います。今回の事例にあったような諸活動があちこちの地域で展開されるようになれば、そこで初めて豊かな地域社会がつくられ、真に底力がある日本社会が形成されていくのではないでしょうか。
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