終わってみれば、教育長であった片峯誠氏が対抗馬の小幡俊之氏と小宮学氏に圧倒的な大差を付けて勝利となったのが、わたしの住む福岡·飯塚市長選挙である。以前にも取り上げたが、前の市長が国内津々浦々に知れ渡ったあの賭け麻雀騒ぎでその職を辞したものの、今回の選挙戦もその話題絡みでメディアが報じる事が多く、その悪いイメージを払拭する意味でも大事な選挙であった。賭け麻雀の真相究明を争点とする小幡氏と小宮氏に対し、片峯氏は過去2度ばかり引っ張り込まれる形で賭け麻雀に付き合わされた過去を明かした上で争点化を避けたが、結果は麻生太郎副総理大臣兼財務大臣の後押しもあった片峯氏が、冒頭に記した通りの大勝で終わる。

 もともとは中学校の教師で、その後は校長から教育長を歴任した片峯氏であるが、取材をした事のある西日本新聞筑豊総局長の西村隆幸氏は「誠実な人柄で、丁寧な物腰の中に芯の強さを感じた」と筑豊版のコラムで記していた。教師であった30年前には荒れた状態であった自らの担任する学級を見事に立て直し、教育長であった昨年は、市内の小学校で学校のシンボルであったメタセコイアが夏休み中に諸般の都合で伐採された際、新学期の始業式に自ら足を運んで児童の前で謝罪するなど、きちんと責任を持って事を成し遂げる姿は評価されている。とは言え、35年近く地方教育一筋に生きてきた片峯氏に「一般行政は未知の分野とも言え、市政のすべてを担う市長の舵取りは重いのではないか?」という意見もあるが、大分·由布市の首藤奉文市長も教育畑からかつての庄内町長を経て現職にあり、観光地由布院を擁する由布市を引っ張っている事を考えれば、その心配は杞憂と言えよう。

 教育長在任時に先進的な学習法を導入して、児童や生徒の学力を向上させた実績を持つ片峯氏であるが、市民からは地域コミュニティの再建や子育て環境の改善、市街地の盛り上げや高齢者の外出機会の増加など様々な注文が寄せられているし、前出の西村氏からは筑前大分に天道、飯塚のJR福北ゆたか線の市内3駅を核にしたコンパクトシティへの取り組みや、市内にキャンパスを持つ近畿大学に九州工業大学、そして近大九州短期大学や地元企業の産学官の連携の推進を片峯氏に期待する。「真摯に、謙虚に市民の声に耳を傾け、政策は迅速に進めていきたい」と片峯氏は語るが、まずは空席になったままの副市長と教育長の人選を行なった上で、前述の注文を1つずつこなしていきたい。

 「特別職は公務員。市の職員や学校の先生も、襟を正してがんばっていきたい」と語る片峯氏。市政運営で間違いを犯さず、失墜した信頼を取り戻してほしいと願うばかりである。