ボーン・スプレマシー(7点) | 日米映画批評 from Hollywood

ボーン・スプレマシー(7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2004年8月7日(映画館)
主演:マット・デイモン
監督:ポール・グリングラス


 「ボーン・アイデンティティ 」の続編であり、アメリカでは公開2週目にして興収1億ドル突破、そしてマット・デイモン主演というということで、見に行った作品。日本では2005年正月映画ということで公開されるそうです。


【一口コメント】
 前作以上に"渋さ"が増した作品です。


【ストーリー】
 前作の続きで、ボーンは時々、忘れてしまったはずの以前の記憶のフラッシュ・バックに悩まされていたが、インドで愛する女性と平和な日々を過ごしていた。その幸せが、CIAをはじめとする各種諜報組織から命を狙われているという無情な過去によって壊されてしまう。
 ボーンを殺すためにロシアから送り込まれた暗殺者がボーンを殺し損ねてしまうことによって、物語は一気に加速度を増していく。インドを脱出したボーンはドイツに向かい、CIAのボーン対策チームに挑戦状をたたきつける。一方、CIAはボーンの過去を知る女性をオランダで見つけ、ボーンの過去を知ろうとする。ボーンはロシアの組織とつながりのあるCIA役員が、ボーンの記憶の中に知られたくない過去があるために、ボーンを暗殺しようと必死になっていることを知る。
 中盤の情報戦が終わると舞台はドイツからロシアへと移り、いよいよ最後の攻防が始まる―――。

【感想】

 インド、ドイツ、オランダ、ロシア、アメリカと世界中を舞台に暗殺者vs暗殺者という図式で物語が進んでいくのは前作と同様の展開だが、一つ一つのアクション・シーンや脚本の上手さが前作よりもUPしている。しかも字幕なしで見てそう感じるのだから、字幕ありで見ていたら、かなり面白いのではないだろうか?

 面白いと感じた要素はいくつかあるが、一番の要素は元諜報機関の暗殺者という設定を見事なまでに表した手際の良さ。
 まず、最初のアクション・シーンだが、簡易手錠をした男とボーンの格闘シーンでは、銃と銃ではなく、素手vs素手、素手vs刃物というスパイ映画には珍しい設定で、非常に新鮮な感じがした。そして格闘が終わり家を去る際の手際の良さ。ガス栓を破壊し、トースターに雑誌を詰め、部屋に充満したガスとトースターによって時間差で熱せられる雑誌による簡易時限爆弾=銃を使わずに、身近なものでシンプルに爆破させてしまうという、それでこそ元秘密諜報機関の人間という設定にカッコ良さを感じたシーンです。


 次は、CIAチームの居場所を突き止めるまでの手際の良さ。空港で別室に呼ばれ、尋問を受けている最中に、最初は心ここにあらずという感じでいたボーンが空港の係官がCIAと電話をはじめた瞬間に暗殺者としての手際の良さを見せ、空港を脱出し、携帯電話を盗聴したり、車を盗んだり、CIAチームの実質のトップの人間のホテルの部屋を突き止めるあたりの巧みさ、そしてホテルの壁沿いの雨どいを伝って逃げていく姿、何度か警察に捕まりそうになるが、その度に地下鉄を使ったり、船を使ったりして、巧みに追手から逃げる手段がとても渋い(たとえば、ある時はハイテク機器を使いこなし、ある時はスーパーにおいてあるフリーペーパーで町の配置を記憶したり、盗んだお酒で追手の目を潰したり・・・)!!
 そしてこの映画の一番の見せ場は前作同様、カー・チェイス・シーン。今作ではモスクワを舞台に、パトカー、タクシーと4WDのチェイスが繰り広げられる。ギアの切り替えとクラッチ・ペダルの踏み換えの描写が多用され、外部からのチェース・シーンと車内部の緊迫感とがミックスされ、見応え十分のシーンに仕上がっていた。

 最後の方で、ボーンが自分の最初の暗殺の被害者に会いに行く場面があるが、このシーンの必要性がいまいち理解できなかったのと、前作同様、新鮮味のあるアクション・シーンが少ないという点が解消されれば、この作品は★9をつけていたかもしれない。

 繰り返すが、前作と比べて内容的にそれほど大きな違いがあるわけではないが、前作よりも面白く感じたのは諜報機関のスパイという設定とそのリアリティを感じさせる細かな演出、渋さであり、最後の最後のシーンでボーンがCIAのチーム・リーダーに電話をかけるシーンは序盤で使われた同様のシーンと同じことを繰り返していて、これまた"渋い"終わり方だなと、感心させられる終わり方で、最初から最後まで"渋さ"にやられっぱなしの作品でした。
 どうやらパート3の製作も決定したようなので、これまた"渋さ"を期待してパート3の公開を待ちたいと思います。