原研哉さん | 福田敏也 オフィシャルブログ PEACE! Powered by Ameba

原研哉さん

ツタグラのカンファレンスで
日本デザインセンターの
原研哉さんに始めてお会いした。

素晴らしいCD/ADの方々は
その右脳的感覚伝達力に優れているだけでなく、
その左脳的意味の分解&伝達の力に優れている。
それは、
大貫さんに対しても誰に対しても
共通に感じてきたことだ。

「デザインのデザイン」は4年ぐらい前に読んでいた。

福田敏也 オフィシャルブログ PEACE! Powered by Ameba

コピーライターも太刀打ちできないほどの文章のうまさで、
デザインすることの根本的意味や時代的意味を
深く広く考えさせる内容だった。

フクダが
マスのクリエイティブからネットのクリエイティブに足場を移し
その新しいメディアとクリエイティブあり方を
徹底的に勉強し始めたのが1995年。
その企業コミュニケーション的応用の試行錯誤を繰り返したのが
2000年代。
どちらも経験した上で
マスもネットもぐちゃぐちゃに考え始めたのが2003年ごろ。
その変化の中で自分に身についていったのは、
「意味のコミュニケーション」のあり方だったと思う。
CMプランナー時代は、
「感覚のコミュニケーション」により力点を置いていたように思う。
どうおもろいのか、どううけるのか。どう流行るのか。
でも、1995年以降の流れと体験が
意味のコミュニケーションの重要性を意識させることになった。
その広告は、どんな意味を残そうとするのか。
その企業活動は、どんな意味を世の中に残すのか。

原さんは、
その右脳的表現の着地より以前に、
そのデザインの意味を厳しく問う人だ。

震災のリアルを伝える活動「311 Scale」のコンセプトページに
こう書いてある。
ーーー
基本姿勢
1. 演出しない。
2. 主張しない。
3. 世界の人々にとって、わかりやすい表現を行う。
4. 可能な限りの正確さを守る。
ーーー
雑多な思惑や意図が交錯する震災後の状況の中で
一切の演出や主張を排し
データのビジュアライズにシンプルに向き合うこと。
円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフという
シンプルにわかりやすい表現スタイルに
影や装飾をつけることに一切の意味を感じない。
そこで目指されるのは
理由のないデザインは一切しないことの徹底。

瀬戸内海でのアート活動「アート瀬戸内」のサイト設計も
クールでシンプルだ。
http://www.setouchi-navi.jp/
ツタグラセミナーの中で
原さんはこんな風に仰っていた。
ーーー
あんまりデザインを頑張ってもしょうがない。
背景をつくっていくだけ。
島をめぐるアート展の情報化につとめる
アプリや検索の仕組み
個性なんてなくていい、知性があればいい。
ーーー
でもサイトを見に行くと
そのサイトはきれいにまとまった素敵なサイトになっている。
原さんが仰っているのは、
「デザインしない」ということでは決してない。
「意味のないデザインをしない」ということ、
意味のないかっこよさや意味のない装飾から訣別するということ。
意味の効果的視覚化に徹底することで
サイトはイベントの基本インフラとしての機能を果たし
イベントを支える背景のようなものになっていく。

情報デザインのお手本のような話だ。
こうしてグラフィック界の人々が
その意味の分解力と基礎デザイン力によって
情報デザインやインタラクティブデザインの領域にも
大きな影響を及ぼし始めている、ということかもしれない。

原さんは、
武蔵野美術大学の原研哉研究室で
『Ex-formation 』という活動を展開している。
『Ex-formation 』。
『inform(知らせる)』に対する『exform』。
書籍「Ex-formation 植物」の解説文ではこのように書かれている。
ーーー
私たちが真に考え、世界の新鮮なリアリティに触れるためには、あえて「情報」をEx‐formation/未知化していかなければならない―。
ーーー

ブランディングとは
多くの人々にブランドを理解してもらうプロセスだが、
その活動の結果として既知化がすすめばすすむほど
消費され飽きられていく。
あえて「未知化する」ことに意味がある。

未知な部分をあえて残すことによって
オーディエンスやファンの想像力をどうドライブするか。
人々のイマジネーションの中のブランド像をつくっていく。
そんな作業かもしれない。

6年目を迎えた2011年の活動テーマは「女」だった。
ミサイルに花柄プリントをしてみたら?
ペットボトルを女性のからだにしてみたら?
などいろいろな「女」テーマのデザイン活動があるなかで
棒人間という企画を展開する学生さんがいた。



面白いな面白いな。

フクダは美大文脈の人間ではありませんが、
こうしてクリエイティブやデザインやデザインを教える現場などに
深くかかわるプロセスの中で
デザインが伝える「意味」のあり方と
その伝わりの面白さにより関心を深めています。

ユーゴさんと話していても
廣村さんと話していても
佐藤卓さんの話を聞いても
そして原さんの話を聞いても、
みなさんそれぞれの道筋で
デザインの意味と人間の感覚との向き合いに
目を向けていらっしゃる。

技術が進化したり、メディア環境が変わったり。
いろんなことが変化しても
変わることなき人間の本質や感覚との向き合い。
それは自分にとっても
重要なテーマであり続けてる。
原さんたちとはまた違う視点と道筋で
そのあり方を考え続けていきたいと思う。