2016全日本MTB選手権大会レースレポート | 自転車乗るなら土の上

自転車乗るなら土の上

BMCサポートライダー 國井敏夫
2012シーズンから本格的にレース活動を開始
MTB→FS01 29とTE01 29
CX→CX-01とGF-02Disc
ROAD→SLR01

第29回全日本マウンテンバイク選手権大会
2016.7.17開催 富士見パノラマスキー場特設コース
天候:晴れ(セミウェット)
カテゴリ:エリート男子
リザルト:第11位完走(公式リザルトはこちら)
タイム:1h52m04s

今シーズン前半の目標としていた春の王滝100kmでは、仕事とトレーニングのバランスがうまく取れず、本番でも思うような走りができなかった。あれから2ヶ月。仕事の量は一向に減らないけど、何ていうのかな、時間の使い方のリズムをつかめてきた。週末は強度よりも時間を優先して乗り込みできるけど、平日にトレーニングに充てられる時間は1日あたり30分を2回から3回。この時間にどれだけ集中できるか。その短時間トレーニングの成果を試す初めての舞台が全日本選手権となった。

前日の試走ではコースをつぶさに観察し、完璧に頭に入れた。スタート前にはイメージトレーニングで何度もコースを走った。フィットネスレベルではライバル達に劣る分、下りのスピードとアップダウンの繋ぎを最高効率で処理していかなければ、結果が出せないことはわかっている。そこに、天候という不確定要素。一時はドライタイヤのG-CLAWという選択も考えたが、マスタークラスのように途中で雨が降り出す可能性を考えると、セミマッドにも対応しつつ、漕ぎの軽さとサイドグリップのバランスに優れたMibro for Marathonという選択が最善だと判断した。空気圧は一部のマッド区間や濡れた木の根でのグリップ確保を狙って、いつもより低めの1.4Bar。このタイヤはサイドケーシングにコシがある分、低圧にしても高速域で腰砕けしないのが特長。

この1ヶ月間、オンロードもオフロードも全てのトレーニングタイヤにスリックタイヤのMarbellaを使う中で、限界領域でのグリップをコントロールするスキルが大幅に向上した。だから路面が少々濡れていようと、自信をもってバイクを操り、振り回すことができる。以前はどちらかというと得意ではなかった富士見のテクニカルなコースを前にして、おそらく初めてのことだろう、心からワクワクしてスタートラインに並んだ。

スタートコールは31番、4列目。スタート位置は路面はやや重いものの、落車があっても回避するスペースがある右側を選択。チームメイトが声をかけてくれることで、直前までリラックスしていることができる。そしていよいよスタートという時間帯になって、今回は久しぶりに武者震いした。これから始まるレースへのワクワク感と全日本選手権という独特の緊張感、そして高まる集中力。腹の底からの深い呼吸でめいいっぱい肺に空気を入れて、スタートダッシュに臨んだ。

富士見では毎度のことだけど、スタート直後に左前方で選手どうしが接触。自分の目の前で真横に向いたライバルを右に交わして、一気に順位を上げる。20番手くらい?スタートループはコース幅が決して広くはないがロックセクションまでに上位に上がっていなければ、落車や渋滞に巻き込まれる可能性が高まる。隙間をぬって、一人でも前へ。フィードゾーンの前を通過する時、アッキーさんから、「もう一つ前へ!」と声をかけられる。ロックセクション進入で体勢を整えに入るライバルたちのスキを見て、ここでも数人をパス。
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Photo by伊東秀洋さん

スタートループを終えて13位まで上がった。ここからが本当の戦い。周りのライバルたちは、いつものメンバーと言って良いだろう。上位陣からはやや遅れてしまっている。この遅れを取り戻すためには、自分の得意なセクションで積極的に前に出て、パックのペースを上げていかなければならない。
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Photo by タモさん

下りは、とにかく余裕があった。たとえ登りで数秒遅れたとしても、下りで休みながらも追いつくことができる。あるいは後続を突き放すことができる。ここで生まれる余裕は、登りでのペースアップにつぎ込むことができる。少しずつ順位を上げ、2周目で12位、3周目で11位。
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Photo by 春日部写真店さま

でもここからが厳しかった。序盤に過呼吸気味になるまで追い込んだ代償として、身体が一気に重くなってきた。後方からは12位のパックが迫ってくる。抜かさせずに粘ろうとするも、脚に力が入らない。これまでか。。。以前だったらそうなっていただろう。でも、今回は違った。ちょうどフィードゾーンの目の前だったこともあり、アッキーさんが「ついて行け!」と檄を飛ばしてくれる。その言葉に再び踏み直す勇気が湧いてきた。微妙な起伏の変化を利用して、一気に加速して背後に付く。
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Photo by伊東秀洋さん

4周目11位から、5周目は一時12位まで落ちるも、再び抜き返して10位。しかしながら、後方から追い上げてきた若手の西田選手との10位争いにもつれ込む。登りのキレがある西田選手と下りに自信がある自分。登りで前に出られても、下りで追いつき、その勢いで抜き返す。そんな駆け引きがファイナルラップまで続いた。優勝は無理だけど、西田選手とのバトルに何としても勝ちたい!普段の自分の身体能力からすれば、限界はとっくに超えているはず。でも、まだ粘れる。人間の限界なんて、自分が思っているよりもずっと先にあるのかもしれない。ロックセクションの後の登りから、ジリジリと離され始める。苦しい、悔しい、でも勝ちたい。。。
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Photo by 伊東秀洋さん

コース最頂部のA'でのタイム差は15秒と言われた。まだ下りがある。まだ追いつける。

最後の下りは、ほとんど記憶にない。限界まで攻めて、攻めて、下りきって視界が開けた時、西田選手の背中は目と鼻の先。追いつける!追いつきたい!最後までもがき倒した。でも、あと一歩届かずの4秒差。
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Photo by 伊東秀洋さん

正直なところ悔しい気持ちでいっぱいになった。あそこで千切れてしまった自分に腹が立った。でも、そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、ゴールすると同時にチームのみんながねぎらいの言葉をかけてくれて、ホッとして、思わずうれしくなってしまった。蒸せ返るような湿気と暑さの中で、最後までパフォーマンスを落とすことなく走り続けることができたのは、誰でもない、チームメイトのみんなのおかげだ。彼らが支えてくれて、自分が最前線で戦う。それはある意味役割分担でもあるのだ。チームの総力を挙げて獲得したリザルト。僕は胸を張って、チームを自慢したい。最高だぜ、うちのチーム。
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使用機材
・バイク BMC TE01 29(Sサイズ)
・MTT ミディアム
・Fフォーク FOX F32(空気圧65psi)
・メインコンポ SHIMANO XTR
・ホイール MAVIC CROSSMAX SL29
・タイヤ IRC Mibro Marathon TLR(空気圧1.4Bar)
・ハンドルバー FSA K-FORCE FLAT(685mm)
・ボトルケージ オージーケーカブト RC-12R
・グリップ Lizard Skins DSP Grip
・バイクメンテナンス MilePost Pro Cycling Shop
・ヘルメット オージーケーカブト WG-1
・グローブ オージーケーカブト EXG-3
・サングラス bolle 6thSense
・シューズ Giro エンパイアVR90
・インソール LEGNA カスタムインソール(シダス ウィンタープラス)

MilePost BMC Racing 國井敏夫