おおたとしまさオフィシャルブログ

育児・教育ジャーナリストおおたとしまさのブログ


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久々にすごい本を読んだ。

『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』(菅野恵理子、アルテスパブリッシング)

単なる世界の音楽教育レポートではない。

音楽教育という切り口から、教養とは何か、教育は何を目指すべきかというテーマに迫っている。名門校という切り口、塾という切り口、教育虐待という切り口から同じテーマに迫ろうとする私の本と、方向性がまったく同じである。

音楽だけでなく、歴史、哲学、宗教、文学、教育など幅広い分野を視野にとらえ、膨大な取材を経て、そこで得られた無数の点と点を丁寧に結びつけて書かれている。これは相当な教養がなければ書けない。

音楽がいかにしてリベラル・アーツに組み込まれていくのか、西洋の原初の大学の役割が何であったか、いつくらいからなぜアメリカの大学で音楽が積極的に教えられるようになったのかなど、音楽に疎い者でも知的好奇心をそそられる。

何らかの答えが得られる本ではない。「へー、そうなんだ」「えー、知らなかった」と思いつつ読み進めていくうちに、自然に「教養とは何か」「教育とは何か」というテーマが頭を巡る。読んだ後も余韻が残る。

こういう真摯な本、好きだな。答えは書いていなくても、読んだ後に自分の視野が広がり、思考が深まる。つまり自分の住んでいる世界が自分にとってちょっとだけ変わる。こういう本がもっと増えれば、そしてみんながもっとこういう本を読めば、世の中はもっと思慮深く、心地よくなると思う。
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