おおたとしまさオフィシャルブログ

育児・教育ジャーナリストおおたとしまさのブログ


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※父親のためのライフスタイルwebマガジン「FQ JAPAN ONLINE」に寄稿した記事を、こちらにも転載しておく。

 

 産後の妻が職場に復帰した直後は、保育園から子どもが熱を出したと連絡があったら、久しぶりの仕事でテンパっている妻ではなく、父親が迎えに行くほうがいい。それを見越して、妻が職場復帰する直後の数週間は業務量を減らすなどの策を予め講じておけばいい。育休のようにゼロか百かにするのではなく、動きやすい体制を整えて待っておけばいいだけだ。それくらいの調整なら、「できるビジネスマン」ならできるんじゃないだろうか。そのような呼びかけをするだけでも、母親が社会復帰しやすい世の中になっていくと思う。

 

 ……というようなことを、前回のこのコラム「育休取得よりも大事なこと」(http://fqmagazine.jp/13514/oota4/)で書いた。今回はその続きとして、先日「育休明けのドタバタを乗り切る夫婦のチームビルディング」という講演で話した内容を記しておく。

 

 

正社員同士の子育て夫婦に潜むリスク

 

 上記、要するに、「いざというときに、仕事よりも子どもや家のことを優先する担当」ということを予め決めておこうということだ。生活の中で起こり得るさまざまな想定外やエアポケット的な事象に臨機応変に対応する役割を明確にしておくということ。妻が育休明けでテンパってしまいがちな時期には、夫が「いざというときに、仕事よりも子どもや家のことを優先する担当」になりましょうという話。

 

 育休明けのドタバタを乗り越え、子どもも保育園生活になじんできたら以降は、夫婦お互いの仕事の波などを話合いながら、「この時期はオレが『いざというときに、仕事よりも子どもや家のことを優先する担当』になるね」みたいなことを臨機応変に決めればいい。大事なのはいざというときに、「オレ無理!」「ワタシも無理!」みたいにならないようにすること。そのために予め「育児家事における主従」を決めておきましょうということ。

 

 共働きでも、一方が正社員で一方が非正規雇用だったりすると、自ずと「育児家事における主従」が決まってしまうことが多いので、そのような諍いになりにくい。正社員である夫が仕事を優先し、いざというときには非正規雇用の妻が保育園の急な送り迎えに対応するというようなパターンが現状では多いだろう。(実際は非正規雇用者は、休めばその分だけ収入が減るし、シフトの穴を空けるというのはそれはそれで肩身の狭い思いをするのだけど。正社員のほうが、突然休んだって収入は基本的に守られるんだから、正社員の夫がそういうケースに対応する方が本当は理にかなっているとは思うのだが、社会常識はそうではない。それもどうかと思うのだが……)

 

 しかし夫婦ともに正社員でほぼ同条件で働いていると、いざというときにどちらが対応するのかが明確にされていないことが多いようだ。「条件は同じなのだから、対等に」という暗黙の了解のもと、そのときどきで「面倒」(もちろん本当の意味での面倒ではないのだが)を押し付け合う。そのたびに「どっちが忙しいか競争」になる。「競争」に負けた方が「面倒」を引き受ける。しかし納得はしていないので、不公平感や、相手に対する恨みが残る。

 

 こうなると、「多忙」や「疲労」というものが、家庭の中であたかも「貨幣」のように機能し始める。多くの「貨幣」をもっているほうが、相手に「面倒」を押し付けることができるのだ。夫婦の間で常に、どちらがより多くの「貨幣」をもっているかという「競争」になる。夫婦関係はギスギスしはじめる。「対等」という言葉のマジックにとらわれて、常に対等であろうとする正社員夫婦は、「多忙」や「疲労」という「貨幣」が支配する市場原理にからめとられていく。そういう家庭環境で育てば、子どもも、「忙しいことや疲れていることは偉いことなんだ」と勘違いするだろう。

 

 子育て夫婦における「対等」とは、いつも同じ立場・役割というのではなく、「いざというときに、仕事よりも子どもや家のことを優先する担当」に就く機会を平等にするということ。「この時期は夫、この時期は妻」というように、「育児家事における主従」を状況に合わせて入れ替えればいい。理屈ではそうだ。しかし実際はそれぞれの仕事のピークが重なってしまうことも多いだろう。 だから私は、正社員同士の子育て夫婦は、経済的には安定しているものの、日常においてはリスクの連続であると、講演の中で指摘した。ちなみに、いちばんいいのは、一方が安定収入のある正社員で、一方が手に職を持ったフリーランスという組み合わせだろうと私は思っている。

 

※正社員同士の夫婦のリスクについては、このコラムがもっと広い視野で非常に的確な指摘をしているので、ぜひ読んでほしい。

・「男女雇用機会均等法では「共働き」を実現できない」http://blogos.com/article/90711/?p=1

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