2010-04-23 09:36:51

株人日記 29「エースの条件」

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       株人日記 29 「エース」の条件

 

辞書によれば、「エース」というのは、なにかに秀でた人に対して使われる言葉である。

また、空中戦で5機以上仕留めた戦闘機のパイロットも「撃墜王(エース)」と呼ばれる。

2次世界大戦では、実に1,285名ものエースが生まれた。

 では、それらエースたちはどうやって殊勲をたてたのだろうか? 大多数はいわゆる「ドックファイト」―接近した空中戦で手柄をたてている。そして、多くのエースたちが最終的には撃墜される運命をたどった。

 しかし、ここで紹介する二人のエースは例外である。彼等が編み出した独特の戦法と、それを採用したそもそもの理由は、投資家にも非常に参考になる。

 「独特の戦法をとった」二人のパイロットは、ドイツ空軍のエーリッヒ・ハルトマン少佐とその師であるパウレ・ロスマン軍曹。ハルトマンは確認されているだけでも敵機352機を撃墜し、ロスマンも80機以上撃墜している。

 独特の戦法を最初に考案したのはロスマンである。戦闘機パイロットになりたての頃、ロスマンは腕に完治不能の傷を負った。通常、接近した空中戦では体力的に勝っていた方に勝利の女神が微笑む。普通の戦法では到底生き残れないことを悟ったロスマンは、いろいろ考えた末、自分の体力を補うテクニックを編み出した。彼は体力勝負の接近戦をやめて、もっと計算し尽くした戦法に切替えることにし、一つ一つの攻撃について慎重に計画を練り上げた。敵に実際に銃弾を浴びせる事よりも、どういうチャンスをものにするか、さまざまな状況を分析することにより時間を費やしたのである。彼が攻撃に出るのは確実に勝利できるポジションを取れたときだった。このときに、理想的な標的となった相手にありったけのエネルギーを使って集中攻撃をしかけるのだ。ハルトマンは、ロスマンの「相手をよく見極めてから集中砲火を浴びせる」戦法が優れていることを、自らの武勲で証明した。ハルトマンが通算1,425回の戦闘任務から無事生還し、怪我1つ負わなかったのはこの戦法のおかげだった。 


 いきなり、なんの話を始めたのかと、思われたに違いない。実は、この話は、トマス・スタンリー氏の「なぜ、この人たちは金持ちになったのか」という本の一部を引用したものだ。スタンリー氏は、アメリカの富裕層の第1人者で、アメリカ全土の億万長者を対象として大規模調査を実施した。その結果を本にまとめた。

 我々がアメリカの億万長者をイメージするのは、大企業のCEO、医者や弁護士、プロスポーツ選手でキャデラックを乗りまわし、ビバリーヒルズのような高級住宅に住んでいる。そんなアメリカ映画に出てくるキャラクターをイメージする。しかし、スタンリー氏の調査結果は驚くものであった。大半の億万長者(つまり、100万ドル以上の資産家。全米で3.7%しかいない)は、そういったきらびやかな人達ではなく、近所に住んでいる、清掃会社の社長や溶接業を営んでいる自営業者が多い(全体の3分の2)。

 彼らは、ビバリーヒルズに住むのではなく、20年落ちの中古住宅に住み、キャデラックではなく、フォードに乗る。スタンリー氏の調査も順調に進んだのも、わずかの謝礼につられて調査に応じた人が多かったからだ。

 ドイツの撃墜王の話は、億万長者がどんな職業を選ぶのかという章の前触れとして書かれたものである。多くのアメリカ人は、高収入を得るために、MBAを取り、大企業に入ることを目指す。ところが、苦労してMBAを取って大企業に入ると今度は恐ろしい数の競争相手がいて(数十万人)、同じような優秀な人達と戦わねばならない。そして、最後まで勝ち残れる人はほとんどいない。先ほどの例でいえば、体力と技量に自信があるものがドックファイトを挑むが、ほとんどが最後には打ち落とされるという話に呼応する。

 一方、億万長者を調べてみると、高学歴でない人が多い、いわばロスマン軍曹のように「傷を負った腕」を持っているわけだ。彼らの職業の選び方は、みんなと違った発想で、自分が好きで、競争相手があまりいない、高い収益を生む職業を選ぶ。

 スタンレー氏は、こう言いたかったのだろう、空中戦も職業選択も同じ。

「どう戦うか」よりも「どこで戦う」が重要になる。

 私、ジャック天野がこれまで説明をしたのは、次の一文を言いたいためだ。

株式投資でも大事なのは、「どう戦うか」よりも「どこで戦う」である。

この発想の転換が出来た時、明日からは全く違った世界が目も前に開けるに違いない。

 


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