この「しりとり物語9」というテーマのBlogでは、2017年1月からスタートしたFMおたる「木曜Cheers!」内のコーナー、「しりとり物語~しりとり御籤」のストーリーをご紹介して参ります。

リスナーの皆様には、「しりとり」の次の言葉を考えてお送り頂き、どなたの言葉を採用するかは、抽選で決定致します。一方、私は「必ず、その選ばれた言葉が入る」という条件を満たしながら、13話完結の物語を執筆し、コーナー内でご披露する、という「参加型連載ラジオドラマ」が、この「しりとり物語」の仕組みです。

※2017.1.12追記
しりとり物語史上初めて、2週目になってタイトルを「しりとり巡り」から「しりとり御籤(みくじ」に変更いたしました。しりとりの採用ワードが鍵を握る「しりとり物語」ならではの心変わり故、何卒ご理解の程、よろしくお願いいたします。

それでは、第9シリーズの第1話に参りましょう。


しりとり巡り~第1話「恵比寿(えびす)」

「名は体を表す」というが、あれは嘘だ。少なくとも俺の身には起こっていない。おそらく両親は、「名」が「体」を表すように願って付けたのだろうが、ポジティヴのてんこ盛りにより、「名前負け」へと追い込まれた感は否めない。裕福の「福」、富裕の「富」、幸福の「幸」、大吉の「吉」で、福富幸吉とは、いささかやりすぎだろう。

名乗るだけで羨ましがられる。こちらの事は何一つ知らないのに、何を羨んでいるのだ。音ならまだしも、文字になるとその効力は強まる。一時期、名刺の表記をひらがなにしようかと本気で悩んだ。

不幸かと言えば、それほどでもない。だが、幸福かと言えば、それもしっくり来ない。そもそも、幸福とは何だ?こんなことを考えている時点で、幸福とはほど遠いのかもしれないし、既に幸福なのかもしれない。

「一応、今年も引いておくか。」

冷めた考えを持ちながら、結局新年になるとおみくじを引く自分がいる。さして信心深くもないくせに、神社の浮気はしない。例年通り鳥居をくぐり、例年通り階段を上り、賽銭を投げ入れ、手を合わせる。階段を下りると、やはり例年通り、おみくじが売れられている小屋へと向かう。

「おみくじを…。」
「どっちにするよね?」
「どっち?」
「普通のおみくじかい?それとも、しりとり御籤かい?」
「しりとり御籤?」

そんなおみくじがあっただろうか?そもそも、普段の巫女さんではなく、見たことのないおじさんが立っている。そういえば、神社の雰囲気にも、どことなく違和感を覚えていた。

 「新しいおみくじを始められたんですか?」
 「いやいや、昔からあるよ。」
 「そんなはずはありませんよ。だって俺、毎年来てますから。」
 「お兄ちゃんが来るのは初めてだよ。」

この人は俺の事を知っているのか?

 「まあ、普通のおみくじを引けば、いつも通りに戻るんだけどね。それでも良いなら、ハイ、どうぞ!」

そう言われると、普通のおみくじを引く気持ちにはなれない。

 「じゃあ、しりとり御籤の方で。」
 「勇敢だねぇ!ブレイブだねぇ!ブレイブ、ブレイバー、ブレイベストだねぇ!」

少々ウザい人のようだ。とにかくおみくじを引いて帰ろう。箱に手を入れ、最初に指に当たった1枚を取り出した。

 「開けてご覧なさいよ!」
 「言われなくても開けますよ。」
 「開けた?開けた?ハイっ!開けましておめでとうございますっ!」

そこにはたった一言、「恵比寿」と書かれていた。

(つづく)

この週の採用ワード
水酸化ナトリウム(すいさんかなとりうむ)
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