とんとん・にっき2

来るもの拒まず去る者追わず、
中年建築家が日々の駄文を重ねております。


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国立新美術館で「チューリヒ美術館展―印象派からシュルレアリスムまで―」を観てきました。観に行ったのは10月3日のことでした。 ほぼ1か月も前のことです。「オルセー美術館展」を観て、その熱も冷めやらぬ国立新美術館、副題には「印象派からシュルレアリスムまで」とあります。まずチラシに驚きました。出される作品、こんなに載せちゃっていいの?、展覧会のチラシではこれは前代未聞です。なにしろ「圧巻!すべてが代表作」と豪語しています。


なかでもモネの幅6メートルの超大作「睡蓮の池、夕暮れ」、これには度肝を抜かれました。「なんじゃ、これは!」ですよ。そして展示の仕方が面白い。一人の作家を特集する「巨匠の部屋」があるかと思えば、各時代の美術の運動や流派をまとめた「時代の部屋」があり、それらが交互に出てくるのが面白い。たしかにこの展覧会を観ただけで「印象派からシュルレアリスムまで」分かっちゃうところが「チューリヒ美術館展」の凄いところです。スイスから74点が来日。日本とスイスの国交樹立150年を記念する展覧会でもあります。


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展覧会の構成は、以下の通りです。


1 セガンティーニ

2 モネ

3 ポスト印象派

4 ホドラー

5 ナビ派

6 ムンク

7 表現主義

8 ココシュカ

9 フォーヴィスムとキュビスム

10 クレー

11 抽象絵画

12 シャガール

13 シュルレアリスム

14 ジャコメッティ



チューリヒ美術館とは

スイスを代表する美術館のひとつで、中世美術から現代アートまで10万点以上の作品を所蔵しています。特に19世紀の印象派以降の近現代美術コレクションの素晴らしさで知られ、スイス出身のホドラーやジャコメッティのコレクションは世界屈指の規模を誇ります。18世紀末にチューリヒの町の芸術家や鑑定家たちが立ち上げた小さな集まりに端を発し、1910年に建物が落成したチューリヒ美術館の運営は、今日でも市とともに、2万人のチューリヒ芸術協会の会員に支えられています。2017年には新館を完成させて、スイス最大の美術館となる予定です。


1 セガンティーニ

ジョヴァンニ・セガンティーニ「虚栄(ヴァニタス)」1897年

まずはスイスの画家セガンティーニの部屋から始まります。裸婦のいる高原風景は、一見印象派の作風に似て明るくのどか。だが、どことなく秘密めいた雰囲気が漂う。泉に映る自分に見入る女性は、「うぬぼれ」や「虚栄」といった概念を暗に例えたシンボルです。

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2 モネ

左:クロード・モネ「ノルマンディーの藁葺きの家」1885年

右:クロード・モネ 「陽のあたる積み藁」1891年

積み藁はモネが好んで描いた題材です。違った時間の日の光に照らされる様子を何枚も描いています。なかでもこの作品は、一見何かわからないほど積み藁が画面いっぱいに描かれているのが特徴です。

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クロード・モネ「睡蓮の池、夕暮れ」1916/22年

モネの部屋、幅6メートルの睡蓮が目の前に現れます。そのまま絵の前を歩けば、水面に生える夕日の輝きや木立の影が本当の景色のように次々と目に入ります。まるで池の縁に立っているような体験が得られます。

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クロード・モネ「国会議事堂、日没」1904年

切が漂うロンドンに一瞬を、光の画家がとらえた作品です。

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エドガー・ドガ「競馬」1885/87年

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3 ポスト印象派

フィンセント・ファン・ゴッホ「サント=マリーの白い小屋」1888年

療養のため地中海に面したサント・マリー・ド・ラ・メールを訪れたゴッホが描いたこの作品は、白い石灰の家、真っ青な空、草の縁取りとの美しい対比で、この地方特有の風土を表現しています。

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ポール・ゴーギャン「花と偶像のある静物画」1892年

紫の生け花の背後に鎮座する頭巾をかぶった不気味な偶像。鮮やかなオレンジ色の敷物との対比が際立ちます。手前に落ちた花もまた、死を想起させます。

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ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」1902/06年

強烈な陽光が降り注ぐ、南仏のエクサンプロバンス。故郷の東にそびえる山を、画家は最晩年まで繰り返し描きました。本作は、水彩画のような軽やかな色彩が躍っています。

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アンリ・ルソー「X氏の肖像(ピエール・ロティ)」1906年

モデルのピエール・ロティは、フランス外軍士官で作家でもあります。ロティが愛した猫を傍らに描き、インパクトの強う描写で人物の性格や好みまでを表現しています。

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4 ホドラー

左:フェルディナント・ホドラー「日没のマッジア谷とモンテ・ヴェリタ」1893年

右:フェルディナント・ホドラー「日没のレマン湖」1915年

美しい山なみを誇る国スイス。この国の画家は風景画で独自の表現に挑戦しました。湖に岸辺と山影、雲が描くリズミカルな平行線が新鮮な作品です。

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フェルディナント・ホドラー「真実、第二ヴァージョン」1903年

画面中央に両手を広げ、堂々と立つ女性は「真実」の象徴です。「悪」を表す周囲の男性たちは左右対称に配され、顔を背けています。

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5 ナビ派

ピエール・ボナール「ブラック、あるいは犬と一緒にいる女性」1907年

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左:フェリックス・ヴァロットン「訪問」1899年

右:フェリックス・ヴァロットン「日没、ヴィレヴィル」1917年

「訪問」は、室内で手を握り合う男女、そやかな逢瀬を描いた作品です。単純な形態で表された鮮やかな色彩の調度品が存在感を放ち、画面隅の黒い影と相まって、どこか不穏な空気を醸し出します。

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6 ムンク

左:エドヴァルド・ムンク「ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像」1923年

右:エドヴァルド・ムンク「冬の夜」1900年

白い雪と黒い木々が描かれた「冬の夜」。澄んだ夜空と冷たい海。ムンクが青年期を過ごしたクリスチャニアのフィヨルドを描いたものです。アルコール依存主に苦しんだムンクのその心象をなぞるかのように雪道や森の曲線がうねります。

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7 表現主義

左:マックス・ベックマン「マックス・レーガーの肖像」1917年

右:マックス・ベックマン「女優たち」1946年

ベックマンは、第一次大戦の従軍経験や第二次大戦中のナチからの弾圧などを経て、社会や人生への深い洞察に満ちた力強い作品を残しました。「女優たち」は、上演前の楽屋の一コマを描いています。ベックマンは、世界を劇場になぞらえ、人間は人生という芝居を演じ続ける俳優であるとし、サーカスやカーニバルを好んで取材しました。

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8 ココシュカ

オスカー・ココシュカ「騎士、死、天使」1910/11年頃

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左:オスカー・ココシュカ「プットーとウサギのいる静物画」1914年
右:オスカー・ココシュカ「恋人と猫」1917年

夫を亡くした女性との恋愛に悩み、従軍したトラウマに悩んだココシュカ。劇的な前半生は激しい筆づかいや、暗い色づかいに表れます。「恋人と猫」は、そんな彼の精神が回復したころの作品です。友人二人が戸外でくつろぐ様子に、心の安定と新しい画風を得つつあることがうかがえます。

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9 フォーヴィスムとキュビスム

アンリ・マティス「マルゴ」1906年

モデルは画家のまな娘です。白い襟のついた青いドレスや、帽子に巻かれた緑のベールが爽やかで目を引きます。ピンクや白も使い、大ぶりな筆触で描かれた表情や形は、生き生きとした魅力にあふれています。

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ジョルジュ・ブラック「レモン、バナナ、プラム、グラス」1925年

テーブルに置かれたグラスや果物を描く。静物画はブラックにとって重要な画題であり続けました。果物を黒々と縁どる、独自の静物画に到達しています。

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パブロ・ピカソ「ギター、グラス、果物鉢」1924年

複数の視点を同一平面に再構成する。ピカソとブラックが生み出したキュービスムは絵画の革命でした。対象を綿に分解する初期から、新聞紙などを貼って現実を取り込もうとした段階を経て、たどり着いたのがこの作品です。色彩の妙で影や奥行き、綿と線が響き合う新しい絵画空間の構築に成功しています。

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10 クレー

パウル・クレー「スーパーチェス」1907年

自由な抽象表現を探求しつづけた画家クレー。ここでは巧みな配色に加え、少しずつずれたマス目や四辺の傾斜によって、平板なはずのチェス盤に不思議な立体感を与えています。

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11 抽象絵画

ワシリー・カンディンスキー「黒い斑」1921年

目に見える世界を、「現実らしく」描くという従来の考え方から絵画を解き放った抽象絵画です。その創始者カンディンスキーは、耳に聴こえる音楽や音色を絵画の色彩と比較しました。

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アウグスト・ジャコメッティ「色彩のファンタジー」1914年

あまり知られていない画家ですが、カラフルで装飾的な作品です。

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ピート・モンドリアン「赤、青、黄のあるコンポジション」1930年

あまりにも有名なモンドリアンのこの作品。赤、黄、青など現職の四角形と黒い線。単純ながらバランスを計算しつくしたモンドリアンの絵画は、はっとするような衝撃やなぜか不思議な心地良さを感じます。

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12 シャガール

左:マルク・シャガール「婚礼の光」1945年

右:マルク・シャガール「戦争」1964-66年

「戦争」、炎に包まれる街は画家の故郷ビテプスクです。ヤギに似た巨大な動物が、破壊された街へ怒りの眼差しを向けています。世界大戦やユダヤ人虐殺という時代を生き抜いたシャガールです。

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左:マルク・シャガール「パリの上で」1968年

右:マルク・シャガール「ヴィテプスクの上で」1922年

雪に覆われたこの街は、シャガールの故郷ロシアのヴィテプスクの風景です。そこに袋を背負った男性が杖を片手に、ふわりと浮遊しています。ひげや風貌などからユダヤの長老だと考えられます。

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13 シュルレアリスム

ジョルジョ・デ・キリコ「塔」1913年

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マックス・エルンスト「都市の全景」1935-36年

不穏に茂る草花と、古代遺跡を思わせる廃墟と化した都市、第二次世界大戦の破滅的な状況を予言するかのようです。

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ジョアン・ミロ「絵画」1925年

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サルバドール・ダリ「バラの頭の女」1935年

ダリのこの作品は、頭部がバラの花でできた女性がいる風景です。まさに夢の中のような奇妙な世界を出現させました。

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ルネ・マグリット「9月16日」1956年

だまし絵的な精密描写と、現実では考えられないイメージを合わせるのがお得意の手法ですが、ここでも実際にあるはずのない位置に光る三日月を置くことで、詩的な世界を見せています。

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14 ジャコメッティ

アルベルト・ジャコメッティ「広場を横切る男」1949年

ジャコメッティ特有の細長い人物像は、一見すると非現実的だが、見えるままに世界を捉えることを探求してたどり着いたスタイルです。

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「チューリヒ美術館展―印象派からシュルレアリスムまで―」

スイスが誇る美の殿堂チューリヒ美術館のコレクションを、日本で初めてまとめて紹介します。出品されるのは幅6メートルにおよぶモネの大作やシャガールの代表作6点に加え、ホドラーやクレーといったスイスを代表する作家の珠玉の絵画、さらにはマティス、ピカソ、ミロといった20世紀美術の巨匠の作品など、 これまでなかなか来日の実現しなかった印象派からシュルレアリスムまでの傑作70点以上。スケッチや習作がほとんどない、まさに「すべてが代表作」といえるラインアップです。世界的な金融都市でもあるチューリヒの富と、スイスの人々の美への慧眼を象徴するようなチューリヒ美術館展は、日本とスイスの国交樹立150年を記念する展覧会でもあります。この秋、必見の展覧会です。


「国立新美術館」ホームページ


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朝日新聞:2014年10月30日 「あなたの心の1枚は」

1位 フィンセント・ファン・ゴッホ「サント=マリーの白い小屋」1888年

2位 マルク・シャガール「婚礼の光」1945年

3位 クロード・モネ「国会議事堂、日没」1904年

4位 ルネ・マグリット「9月16日」1956年

5位 アウグスト・ジャコメッティ「色彩のファンタジー」1914年

6位 パウル・クレー「スーパーチェス」1937年

6位 サルバドール・ダリ「バラの頭の女」1935年

6位 マルク・シャガール「パリの上で」1968年

6位 クロード・モネ「睡蓮の池、夕暮れ」1916~22年

10位 ピート・モンドリアン「赤、青、黄のあるコンポジション」1930年

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