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岡田温司の「グランドツアー・18世紀イタリアへの旅」を読んだ!

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著者の岡田温司は、この本の「はじめに」において、以下のように書いています。


「グランドツアー」は、イギリスの支配階級や貴族の師弟たちが、教育の最後の仕上げとして体験することになる、比較的長い期間(数ヶ月から場合によっては2年間程度まで)のイタリア旅行のことで、17世紀の末にはじまり、18世紀後半においてピークに達したといわれる。


たまたま同じ「グランドツアー」という題名で5巻揃いの本を出した藤森輝信は、以下のように書いています。


18~19世紀、裕福なイギリス貴族の子弟は学業を修めた後に大陸へ長期旅行に出かけ(フランスとイタリアが主な目的地)、各国の政治・文化・芸術を実地で学ぶ慣習があった。これを「グランドツアー」と呼ぶ。


藤森が「フランスとイタリア」としているのに対して、岡田は「イタリア旅行」としている点でちょっとした違いがあります。それはどうしてなのか? 岡田は、この本の新しい特徴として、「グランドツアー」の全体像を汲みつくそうとするものではなく、「ヨーロッパ各国の旅行者たちを迎え入れたイタリアの側から書かれている」ことである、と限定しています。「イタリアという坩堝(るつぼ)のなかで、いかなる異質なものが火花を散らし合い、そして新たなものが醸成されて、ヨーロッパへと発信されていったのだろうか」と問います。そのような疑問に対して、「『グランドツアー』はいわゆる『ヨーロッパ』という意識の形成にとっても重要な契機となっているのだ」としています。





この本の構成は、以下の通りです。

第Ⅰ章 人 イメージのなかのイタリア人

第Ⅱ章 自然 「驚異」の風景

第Ⅲ章 遺跡 ポンペイ発掘の衝撃

第Ⅳ章 美術 ローマとヴェネツィアの賑わい


この本は、端的に言えば18世紀の「イタリア入門」といったものです。そこでは、イタリアについての様々な事柄、イタリア人について、あるいはイタリアの自然や美術について、全般的に書かれています。僕が興味をもったのは、「ゲニウス・ロキ」についてもそうですが、やはり「ポンペイの遺跡」について、ポンペイには格安ツアーで行きました。そしてローマとヴェネツィアの「美術」についてでした。ローマとヴェネツィアへは3度行きました。


個人名でいえば、「ピラネージ」について、これについては町田市版画美術館でかなりの作品を観ましたし、その時に図録も購入しました。またその後ですが、「ピラネージ建築論・対話」(発行日:2004年10月31日発行、著者:G・B・ピラネージ、発行所:編集出版組織・アセテート)という小冊子も購入して、読もうと思っています。ピラネージの版画は、グランドツアー客のお土産として大好評だったようです。


また「パッラーディオ」については、何冊かの本を持っていますし、彼の建築が多く建つヴィチェンツィアも訪れたことがあります。代表的な名所旧跡を1枚の画面に組み合わせる、モンタージュ的な手法によって描かれたもの、「カプリッチョ(奇想画)」と呼ばれているものが面白い。例えばこの本で「パッラディーオ建築のあるカプリッチョ」、ヴェネツィアの名所「運河」と「リアルト橋」の両側にヴィチェンツィアにあるキエリカーティ宮とバシリカが描かれているというものです。


20代の後半だったか、僕も人並みにゲーテの「イタリア旅行」を読みました。18世紀のイタリアについては、この本を外すわけにはいきません。しかし、お恥ずかしいことにほとんど覚えていません。この本を探したのですが、どうしても見つかりません。小さな文庫本なので、どこかに紛れ込んでいるのでしょう。岡田温司の「グランドツアー」にも、要所要所にゲーテの「イタリア旅行」が引用されます。


本のカバー裏には、以下のようにあります。

折しもポンペイ遺跡の発見の世紀、ヨーロッパじゅうの知識人や芸術家たちが、こぞって馬車にゆられてアルプスを越え、イタリア半島を目指した。そこで彼らを魅了した、人、自然、遺跡、芸術とは? ゲーテやサドも書き残した当時の旅を追体験しつつ、人々の交錯のなかで芽吹き始めていた新しい感性を活写する。貴重な図版を多数収録。



とんとん・にっき-gu3 「イタリア紀行・上」

岩波文庫赤405-9
著者:ゲーテ

発行:1960年1月

出版社:岩波書店

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「イタリア紀行」

岩波文庫赤406-1

著者:ゲーテ

発行:1960年1月

出版社:岩波書店





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「グランドツアー」全5巻

著者:藤森輝信

定価:860円+税

発行:2008年12月24日初版発行

発行者:中谷礼二

発行所:編集出版組織アセテート



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行ってきました、フラメンコ!

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僕が最近「オカチメンコ」の案内がないけどどうしたの?と、なんかの会合で会ったときにKさんに聞いたら、何度かメールを出したんだけど、返事がないので届いてないんじゃないかと思っていたとのこと。近々、「オカチメンコ」をやるので、再度送ります、ということで、送られてきたのが下のメールです。「オカチメンコ」とはフラメンコのこと、Kさんたちがやっている「フラメンコ」のことを、僕たち仲間は「オカチメンコ・フラメンコ」と呼んでいます。いやいや、メンバーがオカチメンコだなんて、まったくそんなことはありません。


こんにちは。Kです。さっそくですが、オカチメンコのご案内です。11/20(土) 会場は以前お越しいただいた
東中野の[スタジオV(ブイ)]というライブハウスです。19時:開場 20時:開演料金:3,500円←1ドリンクと、スペイン風タパス(オムレツや唐揚げ、サラダなど4品ほど)が付きます。もしお時間に余裕があったら19時半までにご来場いただいた方がよいかもしれません。


僕が7時15分頃、会場であるお店に着いたら、ほぼ満席でした。先に来ていた仲間が席を取っておいてくれたので、いい場所から見ることができました。相撲で言えば「砂かぶり」、舞台からは2mの距離、汗が飛び散ってくるのではと思うほどの距離でした。いや~、久し振りのフラメンコ、十分に堪能しました。その後、仲間たちと居酒屋で一杯、相当飲んで、帰りがけに会場を覗いてみたら、まだフラメンコのメンバーたちが反省会をやっていました。とりあえずKさんを呼び出してもらい、挨拶をして帰路につきました。


恥ずかしながら、携帯と、デジカメと、一眼レフデジカメ、3台を駆使して、絶好の場所から撮影したのですが、写真はほとんど全滅、わずかに下の画像だけがなんとか「フラメンコ・ライブ」の雰囲気を伝えられるのではと、載せてみました。実は飲み会の席で、カメラマンの増村征夫さんと隣り合わせで座りました。彼はわざわざフラメンコを撮るために長野県から来られました。撮った写真を見せてもらったら、これがセピア色のモノクロで、なんともはや素晴らしい写真でした。さすがはプロ、自分の専門外の領域ですが、なにを撮っても考えて撮っているということが分かりました。


Kさんのフラメンコ姿

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フラメンコ・ライブ、始まりました!
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フィナーレ
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「フラメンコ・ライブ」を観る!
行列の出来るフラメンコ舞踊公演

二の酉、築地・波除稲荷神社と渋谷・宮益御嶽神社へ行ってきました!

酉の市へ行ってきました。今日は二の酉、行ったのは2カ所、築地・波除稲荷神社と、渋谷・宮益御嶽神社でした。一の酉の時は府中・大國魂神社へ行きました。今日は酉の市を「はしご」してしまいました。波除神社も宮益御嶽神社も、他と比べると人出は少なめでした。


築地・波除稲荷神社は、もう何度か行ったことがあります。江戸時代初期の創祀され、困難を極めた築地の埋め立て工事を完成に導いたことから「波除」の尊称を贈られた神社です。酉の市が始まったのは戦後すぐのことでしたが、一時中断し、昭和55年に再開されています。神社では開運、商売繁盛の開運熊手神符「かっこめ」(800円)が授与されます。これは八本爪の熊手に稲穂、小判、金銀の錫、そして開運神符がついた縁起物のお札です。僕も頂いてきました。


渋谷・宮益御嶽神社は、渋谷区で唯一、酉の市が開催されている神社です。いつも前を通ってはいるのですが、行ったのは今回が初めてでした。なにしろ2階に神社があり、階段を登っていかないとなりません。そんなこともあって、今まで敬遠していました。この神社は、室町時代初期の創設と伝えられている由緒ある神社です。社殿前の狛犬が全国的にも珍しい日本狼であることでも知られています。酉の市は大正初期に始まり、玉川方面や赤坂・青山方面からも多くの参拝者が来訪します。境内には神社熊手を中心に、熊手店や露店が立ち並びます。


築地・波除稲荷神社

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渋谷・宮益御嶽神社

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「築地・波除稲荷神社」ホームページ


「渋谷・宮益御嶽神社」ホームページ


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五島美術館で「国宝源氏物語絵巻」を観た!


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五島美術館で開催されている「国宝源氏物語絵巻」展を観てきました。「上野毛」駅を降りると、係員がプラカードを持って立っていました。「ただいまの待ち時間0分」 と書いてありました。冷泉家の「国宝明月記」を見に来たときは、一度目はあまりにも沢山の人で、その日はすごすごと帰り、後日出直したことがありました。沢山の人出を予想して、玄関前には仮設のチケット売り場も設けられ、その横には順番待ちにために椅子も並べられ、駐車場の係員も配置されていました。「期間中は混雑が予想されますので、入館をお待ちいただく場合もあります」とありましたが、僕が行った時は思ったほどの混雑ではなく、ゆっくりと観ることができました。


「国宝源氏物語絵巻」展は、五島美術館の開館50周年を記念し、愛知・徳川美術館と、五島美術館が所蔵する国宝「源氏物語絵巻」のすべてを集め展示するという、東京では10年ぶりの一挙公開だそうです。さらに、成立当初の姿を想定復元した「平成復元模写」も同時に展示されていました。これは見逃すわけにはいきません。貴重な機会であることはよく分かります。平安時代に誕生した「源氏物語絵巻」は、鎌倉時代、室町時代にかけての行方は明らかではないそうです。が、江戸時代には3巻強(10帖分)が尾張徳川家に、1巻弱(3帖分)が阿波蜂須賀家に伝わっていたという。現在、徳川家本は愛知・徳川美術館が所蔵、蜂須賀家本は五島美術館が所蔵しています。


作者はご存じ紫式部、美貌の皇子・光源氏を主人公にした物語です。と、まあ、ここまでは知ってはいますが、そもそも僕は「源氏物語」の素養がほとんどない。これはまさに「猫に小判」というものです。幸いなことに、という言い訳ですが、源氏物語は物語本文を書き写した「詞書(ことばがき)」と、その場面を描いた「絵」とを交互に繰り返す形式で作られています。「詞書」は金銀の箔や砂子で濃密に装飾する豪華な料紙を用い、その上に当時の能書が見事な筆跡をのこしています。絵は、下書き線の上に絵具を塗り、輪廓や文様を描き起こす「つくり絵」、類型化した人物の顔の表現「引目鉤鼻」、天井や屋根を取り去ることで屋内の様子を描写する「吹抜屋台」の手法など、閉園時代の「やまと絵」の点景を示しています。と、チラシの裏にあります。


従って、文章の方はさておき、絵は僕でも観ることはできます。と、まあ、勝手な言い訳で、とにかく「国宝源氏物語絵巻」を、「平成復元模写」と併せて、観るだけは観てきました。とりあえず、入手した画像を、下に載せておきます。また、五島美術館は、平成22年(2010)11月29日(月)~平成24年(2012)秋頃〈予定〉の約2年間、改修工事のため休館となります。昭和35年(1960)に開館した吉田五十八の設計による「五島美術館」が、どのように新しく変身するのか、興味のあるところです。従って、「国宝源氏物語絵巻」展は、休館前の最後の展覧会です。ちなみに最寄りの東急大井町線の「上野毛駅」は、安藤忠雄の設計により、現在、工事中です。


「国宝源氏物語絵巻」





「源氏物語絵巻」復元模写 加藤純子筆





[概要] 

『源氏物語』は、平安時代・11世紀に紫式部が著した長編小説です。主人公光源氏の生涯を軸に平安時代の貴族の世界を描いたもので、 成立当初から評判を呼び、現代に至るまで偉大な古典として日本の文化に多大な影響を与えています。 国宝「源氏物語絵巻」は、この『源氏物語』を絵画化したもので、物語が成立してから約150年後の12世紀に制作されました。 成立当初は巻子本で十巻程度であったと思われますが、現在は54帖全体の約4分の1、巻数にすると約四巻分が現存しています。 江戸時代初期には三巻強が尾張徳川家に、一巻弱が阿波蜂須賀家に伝来したことが知られ、現在は額装の状態で、 徳川家本は愛知・徳川美術館が所蔵、蜂須賀家本は五島美術館が所蔵しています。 本展では、現存する国宝「源氏物語絵巻」20段分(19画面)を集め、東京では10年振りに一挙公開します。 同時に、科学的分析の結果を踏まえて成立当初の姿を想定復元した「平成復元模写」も展観予定です。


「国宝源氏物語絵巻」

平安時代の11世紀、関白藤原道長の娘である中宮彰子に仕えた女房紫式部(生歿年未詳)は、『源氏物語』を著し、主人公光源氏の生涯を軸に平安時代の貴族の世界を描いた。「源氏物語絵巻」は、この『源氏物語』を絵画化した絵巻で、物語が成立してから約150年後の12世紀に誕生した、現存する日本の絵巻の中で最も古い作品である。『源氏物語』54帖の各帖より1-3場面を選び絵画化し、その絵に対応する物語本文を書写した「詞書」を各図の前に添え、「詞書」と「絵」を交互に繰り返す形式の、当初は十巻程度の絵巻であった。現在は54帖全体の約4分の1、巻数にすると四巻分が現存する。江戸時代初期に、三巻強が尾張徳川家に、一巻弱が阿波蜂須賀家に伝来していたことがわかっているが、それ以前の古い伝来は不明。徳川家本は現在、愛知・徳川美術館が所蔵。蜂須賀家本は江戸時代末期に民間に流出、現在、五島美術館が所蔵する(「鈴虫」2場面、「夕霧」、「御法」の三帖分)。両方とも昭和7年(1932)、保存上の配慮から詞書と絵を切り離し、巻物の状態から桐箱製の額装に改めた。「詞書」も「絵」も作者は不明。「詞書」の書風の違いから、五つのグループによる分担制作か。「絵」の筆者を平安時代の優れた宮廷画家であった藤原隆能(?-1126-74?)と伝えるところから、本絵巻を「隆能源氏」とも呼ぶ。


「五島美術館」ホームページ


とんとん・にっき-goto2 開館50周年記念特別展

「国宝源氏物語絵巻」

出品目録
編集:五島美術館学芸部

絵画面略図:内海真由美

発行:財団法人 五島美術館
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開館50周年記念特別展

「国宝源氏物語絵巻」

五島美術館

入館チケット











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800年を越えて甦る王朝貴族の生活

新興数寄屋の教祖・吉田五十八


とんとん・にっき-todo1 五島美術館は、平成22年(2010)11月29日(月)~平成24年(2012)秋頃〈予定〉の約2年間、改修工事のため休館となります。

「建築計画のお知らせ」


今日の日本橋、夕方6時頃!

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買いたい本があったので「丸善」へ行った帰り、田園都市線の「三越前」へ向かって歩くと「日本橋」を渡ります。現在「日本橋」は改修工事中のようで、片方の欄干が仮囲いがしてあります。ふと考えてみたら、夜、ライトがともってから意識して「日本橋」を通るのは初めてだったので、デジカメを取り出して、数枚撮ってみました。夕方6時頃のことでした。


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「日本橋改修工事」

日向朝子監督の「森崎書店の日々」を観た!

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「森崎書店の日々」を知ったのは、先日行った「神保町古本まつり」のとき、ではなく、「古本まつり」を見て、家に帰って朝日新聞の夕刊を見て、菊池亜希子が写真付きで取りあげられていて、それで「森崎書店の日々」(日向朝子監督)に、菊地が主演しているということを初めて知りました。そのとき、なんか「ふわりとした空気をまとう」そんな映画で、観てみたい映画です、と書きました。その後、たまたまタモリの「笑っていいとも」を見ていたら、内藤剛志が出演していて、この映画を宣伝していました。そんなわけで、「森崎書店の日々」を観に行ってきました。


あらすじは簡単、たいへん分かり易い。突然恋人と別れることになった主人公・貴子は、叔父の悟が営む古書店の「森崎書店」を手伝いながら、古書店の2階で借り暮らしをすることになります。失意と孤独の中、無気力になっていた貴子でしたが、神保町の人々のあたたかさに触れて、次第に心が回復していく、というものです。まあ、「神保町讃歌」といった趣に加えて、若い女性の成長物語を合わせたような作品です。古書店で文芸論に花を咲かせる人、喫茶店でマスターと世間話をする人、購入した本を開いて黙々と読書にふける人、等々、個性的な人々がたくさん出てきます。主人公の貴子も、古書店の店番をしながら、本と出会い読書の楽しみを知るようになります。


ある時、本を買い付けに行った帰りに、車窓から偶然別れた男を見かけます。つきあっていた貴子を裏切り、別の女と結婚してしまった男です。話せば楽になると叔父は言い、落ち込んでいた貴子は過去を打ち明けます。このシーンは迫真の演技で、圧巻でした。解せないのは、叔父が昔の男の家に押しかかようと言い出したことです。男に言いたいことを言ったからとて、元々そんな男ですから、なんの解決にもならないのは明らかなのですが。まあ、いずれにせよ、貴子は、神保町の人々に触れ合い、自分自身を成長させていくわけです。履歴書を書いて次の仕事を探しながら、神保町を出て行くことを叔父に告げます。


以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。


チェック:失恋して会社を辞めたことをきっかけに、東京・神保町の古書店で働きながら、少しずつ成長し、再生していくヒロインの姿を描くハートウォーミングな人間ドラマ。第3回ちよだ文学賞大賞を受賞した原作を基に、『青空のゆくえ』の脚本や監督デビュー作『Presents 合い鍵』で評価された日向朝子がメガホンを取る。ヒロインを映画初主演の菊池亜希子が好演し、内藤剛志や田中麗奈などの実力派俳優が脇を固める。神保町でのロケや古書店の裏側、登場する数々の古本など、街と日常が現実そのままに切り取られている。


ストーリー:交際中である同僚の英明(松尾敏伸)からほかの女性と結婚すると言われ、会社を辞めた貴子(菊池亜希子)は、叔父のサトル(内藤剛志)が経営する神保町の古書店に住まわせてもらうことに。小説に興味のなかった貴子だが次第に本の世界に引き込まれていく。そんな中、偶然かつての恋人、英明の姿を見かけて……。


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「森崎書店の日々」公式サイト



追記:

ブログを始めた頃、2004年10月31日に「私の神保町」 として、下のようなことを書きました。


たまたまその建物の所有者であるTさんから、倉庫に使っている建物があるんだけど、きれいにして使いたい、という相談があったので見に行ったところ、これがまた凄い。2階は屋根が破れていて雨が吹き込み放題、床はボロボロに腐っていてうっかりすると踏み外し兼ねない。しかも、南側で大規模な再開発が始まっていて、ネズミが大挙して押し寄せてネズミの巣窟になっているという。そのボロ屋をなんとかしてくれないかという相談でした。知り合いの工務店を紹介して工事を行い、1階は倉庫、2階は事務所兼仮眠室に模様替えが出来て、なんとか喜んでいただきました。解体すればその廃棄費用だけでもバカになりません。古い建物も手入れさえすればけっこう長持ちが出来るんですね。

ここに書かれている建物が、「Tea HOUSE TAKANO」 という紅茶屋さんの所有する建物です。「森崎書店の日々」の撮影に使われた建物です。1年前頃、この建物の前を通ったとき、本屋になっていたので借り手が出て1階を本屋に貸したものと思っていました。そういえばその前で映画の撮影をしていたようですが、その撮影が「森崎書店の日々」だったとは思わずに、単なる神保町のロケであって、別々のことだと理解していました。いずれにせよ、それまではバーや喫茶店に使われてきた建物が、1階は倉庫、2階は事務所兼仮眠室に改修したもので、昔の面影はほとんど残っていません。


なお、森崎書店の書棚に並んでいる本は、すべて「中野書店」 の古書を使用して撮影したそうです。



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サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(前期)」展を観た!



サントリー美術館で「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展を観てきました。 目を引いたのは、4階から階段を降り、大きな吹き抜け空間の第2展示室でした。ただ一つ、「耕書堂」を再現した箇所です。府中でもちょこっとお店の感じが分かるようなしつらえはありましたが、今回は本格的な江戸時代の「耕書堂」のお店の復元(?)でした。並べられている、あるいは、吊り下げられている売り物の「浮世絵」が、買いたくなるようなディスプレーでこれまた素晴らしい。江戸時代はこうして「浮世絵」を売っていたのか、よく分かりました。


展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―
第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地
第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生
第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界

話は最初からずれましたが、各章のタイトルがまたいい。「蔦重とは何者か? 江戸時代の名プロデューサー」とか、「蔦重を雲だ<吉原> 江戸文化の発信地」、等々、どれを取っても分かり易い。しかし「蔦重」だけでは展覧会は成り立ちません。結局のところ浮世絵の作品は、「喜多川歌麿」と、そして「東洲斎写楽」の作品に多くを負っています。歌麿と写楽の作品は、もう何度も観たことがあり、かつ評価が定まっているので、僕がとやかく言うまでもありません。が、しかし、歌麿の「青楼十二時」は外すわけにはいきません。吉原遊女の一日を一刻ごと十二図に描き分けた揃い物です。


そうそう、今回の目玉を忘れていました。喜多川歌麿の「女達磨図」です。昭和11年に栃木県で発見され、その後行方が分からなくなっていましたが、平成19年秋に再発見され、大きなニュースになりました。修復されて栃木県で展示されたとき、観に行きたかったのですが果たせず、今回観ることができました。女達磨図は英一蝶が創始とされる図様、だそうです。一蝶の参考出品「吉原風俗図巻」、会場で確かに見た記憶があるんですが、また展示替えリストにもありますが、探し方が足りないのか図録に載っていません。「歌麿のライバルたち」に出てきた勝川春朗、この人葛飾北斎の若い頃の名前だったんですね。あるいは「北斎展」などで何度も出ていたかもしれませんが、僕は今回初めてその作品を、わずか数点でしたが意識して観ました。また、北尾政演は山東京伝、北尾政美は鍬形蕙斎、うーん、名前は難しい。


絵の中には、画と賛があったり、あるいは狂歌師との合作はあるでしょうが、一枚の浮世絵に3人で合作しているのが、目を引きました。異色の取り合わせの絵師たち、それは北尾重政と勝川春章と宋紫石、3人による合作で「福禄寿と二美人図」です。手前の美人は勝川春章と北尾重政が描き、背後の福禄寿は宋紫石が描き加えた、と言われています。それぞれの持ち味を活かしたコラボレーション、といったところです。アイデアとして面白かったのは、勝川春朗(葛飾北斎)の「新板七へんげ三階伊達の姿見」、いわゆる「着せ替え人形」というわけです。他に、北尾政美(鍬形蕙斎)の「浮絵東都堺町二町まち芝居之図」は、まさに西洋の透視図法の見本のようなものです。最後に、写楽の「大童山土俵入り」はご愛敬ですね!


第1章 蔦重とは何者か? ― 江戸文化の名プロデューサ―


第2章 蔦重を生んだ<吉原> ― 江戸文化の発信地





第3章 美人画の革命児・歌麿 ― 美人大首絵の誕生





第4章 写楽“発見” ― 江戸歌舞伎の世界





歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎
18世紀後半、安永・天明・寛政期の江戸には、浮世絵の喜多川歌麿、東洲斎写楽、戯作の山東京伝、狂歌の大田南畝(なんぽ)といった江戸文化を彩る花形スターが登場します。このスターたちの作品を巧みに売り出し、江戸文化の最先端を演出・創造したのが、版元の蔦屋重三郎でした。江戸吉原の人気ガイドブック『吉原細見』の独占出版、狂歌と浮世絵を合体させた豪華な狂歌絵本の刊行、当時の情勢を風刺した京伝らによる戯作の出版、歌麿の才能を存分に開花させた美人大首絵の発明、謎の絵師・写楽の“発見”など、次々と流行の最前線を創り出し、リードした人物です。本展では、この名プロデューサー「蔦重」の出版物を通して、多様な“江戸メディア文化”の華をご紹介します。

「サントリー美術館」ホームページ


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「カトリック上野毛教会」を観た!


今井兼次の設計による「カトリック上野毛教会」を観てきました。今井 兼次(1895-1987)は早稲田大学理工学部建築学科卒業後、母校の教授を長く勤めました。教え子には池原義郎らがいます。1948年の妻の死をきっかけにカトリックの洗礼を受け信者となります。


今井兼次設計の教会、先日観た「成城カトリック教会」(1955年)に続いて、「カトリック上野毛教会」(1959年)を観てきました。上野毛教会は1952年に「跣足男子カルメル会」の修道院付附属聖堂として始まりました。上野毛教会は木造で、やはりだいぶ痛んでいるように見受けられました。成城教会の方は鉄筋コンクリート造のようで、派手さはないにしても、まだ上野毛教会よりは新しく見えました。しかし、実際は逆で、成城教会より上野毛教会が後につくられたとは、ちょっと驚きでした。教会の内部は簡素ですが、静謐で崇高な雰囲気が漂っています。


今井兼次は、「早稲田大学図書館」(1925年)がいわゆるデビュー作です。現在の「早稲田大学会津八一記念博物館」がそれです。玄関ホールの列柱に施された装飾は漆喰職人が丹精込めて造ったもの、ということで、よく知られています。テレビドラマにもなりました。僕が観た今井兼次の作品は、碌山美術館(1958年)、日本二十六聖人殉教記念館(1962年)、桃華楽堂(1966年)、遠山美術館(1970年)などがあります。現存してはいませんが、内藤多仲と共同で設計したと言われる「根津美術館」( 1954年)がありますが、僕は観ていません。








「カトリック上野毛教会」ホームページ



とんとん・にっき-todo8 カトリック東京大司教区

世田谷南宣教協力体

リーフレット

カトリック上野毛教会

カトリック田園調布教会

カトリック碑文谷教会














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今井兼次設計の「桃華楽堂」!

「近代建築の目撃者」今井兼次

今井兼次の「建築とヒューマニティ」を読む!

世田谷区中町、ベクトルで「世田谷バーガー」を食べる!


東急大井町線の上野毛駅と等々力駅のちょうど中間、駅から徒歩約5分、世田谷区中町の閑静な住宅地にあるカフェ&レストラン「ベクトル」で、その名もズバリ「世田谷バーガー」を食べてきました。噂通り、自家製の手ごねハンバーグは肉汁たっぷりでした。がしかし、マグドナルドと比べればけっこう高い、世田谷バーガーは1350円でした。


すぐ近くには「カトリック上野毛教会」や、「五島美術館」があります。家人と銀行へ行って、僕はロビーに座って置いてあった雑誌、たしか「世田谷ライフ」だったか、パラパラと見ていたら、このお店「ベクトル」が載っていました。一時はカレーを食べ歩いていましたが、最近は食べ歩くと行ったらバーガーになりました。なにしろ僕はラーメンはほとんど食べないので。







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府中市美術館で「バルビゾンからの贈りもの」展を観た!




府中市美術館で「バルビゾンからの贈りもの―至高なる風景の輝き」展を観てきました。行ったのは11月7日、1週間前のことです。なんと今回が府中市美術館開館10周年記念展だとか、時が経つのは早いものです。府中市美術館には何度か行っていますが、下の「過去の関連記事」にあげた通り、それほど多くはありません。が、しかし、よく覚えているのは、「山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年」と「歌川国芳展」で、「国芳展」は前期と後期、2度行きました。最初に行ったときのことを、「山水に遊ぶ」展の時に、以下のように書きました。


府中市美術館へは過去の一度行ったことがあります。たしか、クリムトの「バラス・アテネ」を観に行ったと思います。「ウィーン、生活と美術 1873-1938(クリムト、シーレと黄金期のウィーン文化)」展(2001/03/30-04/22)でした。突然、おじさんと声をかけられ、ビックリして後ろを振り向いたら、姪がアルバイトで監視員をしていました。


いや、ほんと、まったくの偶然でした。実は今回も「バルビゾン」を見終わって、正面玄関からではなく、レストラン脇の出入り口から出たところ、またまた「キャー、おじさん、ビックリした~」とその姪が前から歩いてきたのです。もう結婚して横浜の方へ住んでいると聞いていたので、まさか府中市美術館でバッタリ会うなんて、思ってもみませんでした。正面玄関から出ていたら、あるいは、ほんの数秒違っていたら、もちろん会えませんでした。姪は、公開制作50小沢剛「できるかな2010」を見に来たようで、時間が迫っていたので、ほんのちょっとしか話せませんでしたが、かなりアートに興味をもっているようでしたので、あとで「アート談義」をする楽しみが出来ました。


展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 ドラマチック・バルビゾン

第2章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動

第3章 人と風景―その光と彩りの輝き

第4章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実


武蔵野のある府中市美術館が開館10年、収集してきた「府中風景画コレクション」と、バルビゾンの小さな村に集まった画家ルソーやミレーに始まった「バルビゾン派」の風景画を対比、約120点の作品で「風景画散策」を楽しむ、という主旨の展覧会でした。当初、僕は武蔵野の風景画をバルビゾンに無理矢理くっつけた展覧会かと、勝手に思って、やや敬遠していました。


しかし、ブリヂストン美術館で「セーヌの流れに沿って―印象派と日本人画家たちの旅」展もあることだし、先日観た「ゴッホ展」でミレーがゴッホに与えた影響の大きさを知ったこと、またルソーとミレーがフォンテーヌブローの森の保存運動をしたことなどを知り、あるいはローマ法王からマリア像を描くように依頼され描いたマリア様が農民の顔をしていたことで法王買い上げには到らなかったこと、等々、ミレーという画家は単なる「農民画家」というだけではなかったということを知り、府中の「バルビゾンからの贈りもの」展へ行ってみようと思ったわけです。


「種まく人」を初め、ミレーの絵をたくさん所蔵していることで知られているのは山梨県立美術館です。しかし、今回知ったのは「村内美術館」です。「家具は村内八王子」のCMで有名なあの「村内」です。ルソーの「森の大樹」、コローの「夜明け」、クールベの「眠る草刈り女」、ナルシッス=ヴィルジールの「水浴する女達」、そしてミレーの「羊毛を紡ぐ少女」の7点です。他に、和田英作のミレーの模写で「落穂拾い」(東京芸術大学大学美術館蔵)がありました。


その他にも、バルビゾンがという自然主義絵画が日本に紹介されると、多くの日本人画家がそれに影響され、日本の近代風景画の基礎を築いていった、ということもあります。日本の近代画家、高橋由一、浅井忠、和田英作、青木繁、五姓田義松の他に、中村彝、村山槐多、はたまた安井曾太郎や梅原龍三郎まで出てきたのには驚きました。府中と言えば大國魂神社、その長い参道のけやき並木を描いた120年前の本多錦吉郎の「景色」という傑作もありますが、僕は満谷国四郎の「車夫の家庭」に感動しました。が、もっとも素晴らしいと思ったのは中川八郎が21歳の時に木炭だけで描いたモノトーンの「雪林帰牧」(個人蔵)でした。しかし中川は、46歳で早世しました。府中市美術館では今回出ていた中川八郎の「神社の桜」と「風景(東京)」、「信州風景」という作品を所蔵しています。


たまたま手にした辻惟雄の「日本美術の歴史」に、中川の「雪林帰牧」について触れた箇所がありましたので、以下に載せておきます。太平洋画会の画家たちは、ビゲロー→五姓田義松→浅井忠と受け継がれた水彩画法を御家芸としており、すでにアメリカで好評を博していた。なかでも吉田博の卓越した技量は、いまでもイギリスなどで高く評価されている。中川八郎の「雪林帰牧(せつりんきぼく)」(1897)もまた、水墨画の伝統が近代水彩画として見事な再生を遂げた例である。この系譜は石井柏亭(はくてい)(1882-1958)の水彩画に受け継がれている。


第1章 ドラマチック・バルビゾン

     春にさし込む神秘の光

     激しく厳しい森の風

     あたたかくやわらかな光

     壮大なる色彩の終焉






第2章 田園への祈り―バルビゾン派と日本風景画の胎動

     江戸の情緒

     フォンタネージと不同舎

     風景水彩画の開花

     武蔵野の夕暮れ

     色彩の発見







第3章 人と風景―その光と彩りの輝き

     風景の中の人々




第4章 バルビゾンからの贈りもの―光と彩りの結実

     印象派の画家たちの森を見つめ直す眼差し

     しだいに光を放ちはじめる風景

     日本の印象主義―素晴らしき風景画の誕生





今、輝き始める「府中風景画コレクション」(チラシ裏より)
このたび、当府中市美術館は開館10周年を迎えました。歴史と豊かな森に恵まれた府中・多摩の風土を彩る優れた作品を収蔵しつつ、様々な展覧会を企画開催し、市民と美術をつなぐもっとも身近な場所として活動して参りました。風景画はいつから始まったのか?自然に感謝し、尊敬し、その美しさを描くことは、実は今から150年ほど前に主にバルビゾンというフォンテーヌブローの森にある小さな村に集まった画家ルソーやミレーなどから始まりました。彼らは、静かな夜、燃え落ちる夕陽、自然への敬虔なる祈りを込めて描きました。そして、日本では明治の洋画家たちが、フォンタネージから自然主義を学ぶこと、この府中を含む武蔵野を舞台に各地を写生し、写実力を磨き、私たちの身近な大地「武蔵野」の美しさをあらためて描き出しました。絵の持つ美しさを感じ、風景画散策を楽しむ、そんな展覧会を10周年記念展として開催いたします。これまで収集してきた所蔵品(府中風景画コレクション)と国内外の美術館や個人のご協力を得て、約120点でお待ちいたしております。


「府中市美術館」ホームページ


とんとん・にっき-ba25 府中市美術館開館10周年記念展

バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き
図録

企画・編集:志賀秀孝(府中市美術館 学芸係長)

編集補助:杉崎則夫、藤田裕子、村上あゆみ

企画協力:浅野研究所 広瀬麻美

発行日:平成22年9月17日

発行:府中市美術館





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