ブリヂストン美術館で「アンフォルメルとは何か?」を観た! | とんとん・にっき

ブリヂストン美術館で「アンフォルメルとは何か?」を観た!


ブリヂストン美術館で「アンフォルメルとは何か?」を観てきました。観に行ったのは、約1ヶ月前の5月5日でした。「アンフォルメル」、あまり聞き慣れない言葉ですが、第二次大戦後のパリで起こった前衛的絵画運動で、フランス語で「非定形なるもの」を意味する、非具象的な絵画として提唱された言葉だという。ブリヂストン美術館のコレクション展示の主なものは、印象派、ポスト印象派、エコール・ド・パリ、日本近代絵画などです。いつ行っても、コロー、クールベ、ブーダン、ピサロ、マネ、ドガ、シスレー、セザンヌ、ルノワール、ゴーガン、ゴッホ、シニャック、マティス、ドニ、ルオー、ヴァラマンク、ピカソ、スーティン、等々を観ることができます。


が、しかし、実は、いわゆる「抽象画」もたくさん所蔵し、展示していました。たとえば、モンドリアン、レジェ、カンディンスキー、クレー、そしてこの仲間にピカソも入るでしょう。今回は1章に今あげた画家の他に、マネ、モロー、ロートレック、セザンヌ、等が「抽象絵画の萌芽と展開」に入れられています。もちろん、これらの画家はよく知られています。今回、2章では「不定型な」絵画の登場、として、フォートリエ、デビュフェ、ヴォルスの名が挙げられています。僕はデビュフェ以外は、その名を知りませんでした。そしていよいよ3章で「アンフォルメルの芸術」が出てきます。そこにはミショー、アルトゥング、スーラージュ、マチゥ、そしてジャクソン・ポロック、サム・フランシスらの名が出てきます。日本人は、というと、菅井汲、堂本尚郎、今井俊満の名がありました。なかでも堂本尚郎は4点もの作品が出されていました。最後にザオ・ウーキー、彼の作品は10点も出されていました。


「現代美術用語辞典」から「アンフォルメル」を、以下に引用しておきます。

宮川淳が後に初期の代表的論文「アンフォルメル以降」(1963)で回顧したように、この動向は第二次大戦後のヨーロッパでいち早く強い影響力をふるった。そもそものきっかけは、終戦直後、J・フォートリエ、J・デュビュッフェ、ヴォルスら“非職業的”画家の激しい感情表現に注目し、そこにキュビスム以降の展開を予見した批評家M・タピエが、52年に彼らを中心とした非具象絵画の美術運動を組織する際に、「非公式の、非定形の」という意味のこのフランス語をあてたことにある(もっとも、タピエはこの名に「もうひとつの芸術」という含意を持たせたようだ)。活動拠点がフランスだったとはいえ、この運動には当初はJ・ポロック、W・デ・クーニング、後にはS・フランシス、L・フォンタナ、P・アレシンスキーらも参加。また当時パリ在住の今井俊満や堂本尚郎もこの運動の一員で、57年には東京で“凱旋展”が開催されるなど、極めてコスモポリタンな性格をもっていた。なお別に「タシスム」と称されることもあるが、厳密にはそれも「アンフォルメル」の一形態である。[執筆者:暮沢剛巳]


今回の流れは、抽象絵画→不定型な→アンフォルメル、という流れとなっています。展覧会の構成は以下の通りです。

1章 抽象絵画の萌芽と展開

2章 「不定形な」絵画の登場―フォートリエ、デビュフェ、ヴォルス

3章 戦後フランス絵画の抽象的傾向と「アンフォルメルの芸術」


たまたま岡田温司著「ジョルジョ・モランディ 人と芸術」(平凡社新書:2011年3月31日初版第1刷)という本を読んでいたら、第7章に「イタリアのアンフォルメル」という箇所があり、モランディの1930年代の静物画や風景画に見られる、ほとんど抽象絵画の一歩手前の「アンフォルメルの先駆」を、批評家のフランチェスコ・アルカンジェリが読み取っていたとして、その特徴を岡田温司は、以下のように記しています。


「(モランディの)この時期の作品の多くは、比較的厚塗りで、タッチは荒く激しく、対象の形態はかき乱され、それらの空間的な位置関係も曖昧となり、画面は色斑とともに境界を越えて拡散し、作品の内的な完結性がむしろ拒絶されているようにすら見える。つまり、マチエールそのものの物質性と、画家の行為の跡としての激しいタッチとが、より前面に出ているのである」。今回、ブリヂストン美術館で展示されている作品を一通り観て、ここに指摘されていることのほとんどが、そのまま「アンフォルメル」の作品の定義として当たっていることに驚きました。去年、世田谷美術館の「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」展で、モランディの「静物」という作品を2点、観たことを思い出しました。


*2011年に「ジョルジョ・モランディ展―モランディとの対話」は、豊田市美術館などが開催を予定していましたが、今回の東日本大震災により、作品の貸し出しに保険会社が保険を引き受けないことになり、やむなく開催が中止となりました。


1章 抽象絵画の萌芽と展開



2章 「不定形な」絵画の登場―フォートリエ、デビュフェ、ヴォルス




3章 戦後フランス絵画の抽象的傾向と「アンフォルメルの芸術」


「アンフォルメルとは何か? —20世紀フランス絵画の挑戦」

第二次大戦後のパリで起こった前衛的絵画運動「アンフォルメル」。フランス語で「非定形なるもの」を意味するこの言葉は、1950年に批評家ミシェル・タピエによって戦後のフランスに胎動する新たな非具象的な絵画として提唱されました。これはフォートリエ、ヴォルス、デュビュッフェを先駆者として、ミショー、スーラージュといった作家たち、加えて当時パリにいたザオ・ウーキー、堂本尚郎、今井俊満などがこれにかかわりました。彼らは、それまでの絵画の具象的、構成的、幾何学的なイメージを脱却し、理性では捉えられない意識下の心の状態から生み出されるものの表現を試みました。戦後フランスにおいて、モネ、セザンヌ、ピカソを超えた新しい絵画の創造を目指した画家たちによる、約100点の作品をご紹介いたします。

「ブリヂストン美術館」ホームページ


とんとん・にっき-buri 「Masterpices from the Collection of the Ishibashi Foundation」
2006年4月2日初版発行

2007年2月1日3刷発行

編集:財団法人石橋財団

発行:財団法人石橋財団







過去の関連記事:

ブリヂストン美術館で「コレクション展:なぜ、これが傑作なの?」展を観た!
ブリヂストン美術館で「セーヌの流れに沿って」展を観た!
ブリヂストン美術館で「ヘンリー・ムア 生命のかたち」展を観た!

ブリヂストン美術館で「印象派はお好きですか?」展を観た!

ブリヂストン美術館で「美の饗宴―東西の巨匠たち」展を観た!
ブリヂストン美術館で「安井曾太郎の肖像画」展を観た!
ブリヂストン美術館で「Sea うみのいろ うみのかたち」展を観た!
ブリヂストン美術館で「マティスの時代―フランスの野性と洗練」展を観た!
ブリヂストン美術館で「名画と出会う 印象派から抽象絵画まで」を観た!
ブリヂストン美術館で「岡鹿之助展」を観る!
ブリヂストン美術館で「セザンヌ4つの魅力」展を観た!
ブリヂストン美術館で「青木繁と《海の幸》」展を観る!
ブリヂストン美術館で「じっと見る 印象派から現代まで」展を観る!