NHKBSで黒沢明の「赤ひげ」を再び観た! | とんとん・にっき

NHKBSで黒沢明の「赤ひげ」を再び観た!

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もう何度も見た映画ですが、また観ちゃいました。もちろん、1965年にこの作品が完成したときに映画館で観ています。その後テレビでも何度か放映され、その都度観ています。実はテレビで放映したときにビデオで採ったのですが、長い作品なので最後の部分がテープがたりなくて、布団のシーンあたりで切れてしまいました。そのビデオも何度か見直したのですが、最後の部分がないのでよくわかりません。そんなこともあって、今回また見直したというわけです。


映画「赤ひげ」で思い出すのは、30年ぐらい前のことだと思いますが、新宿のKデパートを設計したEさんのお話を聞く機会がありました。建築と映画を関連づけて2時間ぐらい話されたと思うのですが、そのほとんどが映画「赤ひげ」の話でした。それにしても映画の場面場面の細かいことまで、詳しく覚えていて驚いたことを思い出しました。その話を聞いて、僕は初めて原作である山本周五郎の「赤ひげ診療譚」を読んだわけです。


それにしても完璧といっていいほど良くできた映画で、見直してみて驚きました。今回見直してみて気がついたことは多々ありますが、一つ一つのシーンを挙げれば切りがありません。この映画は、多くのエピソードから成り立っています。しかも、それらのエピソードや細部が、緊密に絡み合っています。三船敏郎の存在感は、台詞はぶっきらぼうですが、それが功を奏してさすがでした。加山雄三の若さも、そのまんま、よく出ていました。若者がどのように成長していくのかを、よく表しています。休憩を挟んで、この映画は後半が監督が言いたい肝心なところですが、それも前半があってこそです。後半は、二木てるみの演技が見事です。


風がびゅーびゅー吹き渡るのもさることながら、大量の風鈴が一斉に鳴り響くところは、見事な音響効果でゾクゾクしました。井戸のシーンは、映画史上に残る撮影、かもしれません。長時間、観る者を少しも飽きさせない、グイグイ引っ張っていく手法は、さすがは世界の巨匠・クロサワです。救急患者のたらい回し、高齢者医療費の負担増、慢性的な医師不足、等々、現場を無視した医療費抑制を図る政府のやり方、等々、我が国の医療は崩壊寸前と言われ続けています。この映画が投げかけている多くの問題は、時が過ぎてもなんら解決されていず、今でも通用する批判であるといえます。 


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没後10年 黒澤明特集 赤ひげ 1965年・日本
11月1日(土) 午後9:04~午前0:10

江戸時代、長崎帰りの青年医師・保本登は、小石川養生所の所長で“赤ひげ”と呼ばれている無骨な医師に見習いとして住み込みを命じられる。最初は養生所の雰囲気になじめず、投げやりな態度で過ごしていた登であったが、診断の確かさと優れた腕で人々の治療にあたる赤ひげと、彼を頼りにする貧しい人々の姿に、次第に心を動かされていく。黒澤明監督と三船敏郎、名コンビ最後の顔合わせとなったヒューマニズム映画の傑作。


<作品情報>
〔製作〕田中友幸
〔製作・脚本〕菊島隆三
〔監督・脚本〕黒澤明
〔原作〕山本周五郎
〔脚本〕井出雅人、小国英雄
〔撮影〕中井朝一、斎藤孝雄
〔音楽〕佐藤勝
〔出演〕三船敏郎、加山雄三、山﨑努、団令子、桑野みゆき、香川京子 ほか
(1965年・日本)〔白黒/レターボックス・サイズ〕


※午後10:56.15~11:01.33 インターミッションあり
※午後9:00~9:04「シネマ・プレビュー」「黒澤明入門」、午前0:10~0:19「シネマ・レビュー」を放送。


NHKBS「没後10年 黒澤明特集」



aka1 「赤ひげ診療譚」
著者:山本周五郎

発行:新潮社 新潮文庫

改版版:1964年10月

定価:580円

幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長新出去定に呼び出され、医員見習い勤務を命ぜられる。貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く快作。