2008年02月19日 00時01分26秒

アン・リー監督の「ラスト、コーション 色―戒」を観た!

テーマ:映画もいいかも

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1942年、日本占領下の上海。
人々に恐れられた、傀儡政権下特務機関の顔役 イー。
イー暗殺の命を受け、彼の元へと忍び寄る女スパイ ワン。
ワンはイーを誘惑し、やがてその魅力で彼を堕とすことに成功する。
人目をはばかる危険で激しい逢瀬を重ねるふたり・・・。
戦時の節、明日をも知れぬ死と隣り合わせの彼らは、

背負う任務こそ敵対すれど、
肌を重ね合わせるそのひとときだけ、愛の深淵を享受し、

そしてひとつになる事ができるのだ。
しかし運命の時は刻々と迫っていた――。     
ワンはイー殺害計画を遂に決断する。
(チラシより)


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「大胆な性描写が衝撃の、大人のメロドラマ」という前評判の映画、渋谷のBunkamura「ル・シネマ」で、アン・リー監督の「ラスト、コーション 色―戒」を観てきました。朝一番の回に行ったのですが、観客は多かったですね。次の回は、ロビーが人で溢れていました。2度ほど予告編を観てはいたのですが、僕はなんの予備知識もなく観に行きました。「男と男の愛を格調高く謳いあげた」という「ブローバック・マウンテン」の監督だというが、それも観ていません。映画が始まってからしばらくは、誰がトニー・レオンで誰がタン・ウェイなのかも知らずに、過ぎていきました。しかし、2時間38分、これほど緊張して観た映画は久しぶりでした。


たしかに「大胆な性描写」が話題になるだけのことはあります。これほど見事なセックス・シーンは、僕は過去に観たことがありません。変幻自在な多彩な体位や、ぼかしは入っていますが、結合部分のアップなど、ここまでやるかという、とにかく過激なベッド・シーンです。監督のアン・リーは「3度の営みのシーンは、男女の情愛の攻防戦であり、2人の心の変化を伝える要のシーン」と語っています。一発目がすごい。ベルトで手首を後ろ手でしばり、ベッドに押し倒して、後ろから責めます。まさに強姦同様です。しかし後はお互いががっぷり四つに組み合い、丁々発止であれやこれやとなります。ベッド・シーンは全カットされたバージョンしか公開されていない中国では、ノーカット版見たさに海外ツアーまで組まれているそうです。この作品はベッド・シーンが全カットされたら、映画にならないと思うのですが。アン・リーはまた「内戦で分裂する国と、一組の男女それぞれの分裂する心を重ねた。言葉にならない虚々実々を、喜びと憎悪の間で苦悶する性愛場面に象徴させた」という。


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抗日運動が激しかった1930年代から40年代の、香港と上海がこの映画の舞台です。香港大学の学生の演劇グループがレジスタンス運動に目覚め、仲間の女子学生が傀儡政権の特務機関トップの暗殺を目論みます。特務機関トップ・イーをトニー・レオン、女子学生・ワン・チアチーをタン・ウェイが演じました。なにしろ色仕掛けで接近し、暗殺を目論むわけですから、映画はスリリングに推移します。「奴はずる賢く、用心深い。一度疑われたら、命はないと思え」と言われると、「必ずやり遂げます」とワンは答えます。それからはスパイとして、拳銃の扱い方の訓練を受け、そしてセックスの訓練までも。まず始めに香港でイーに接近しますが、イーが上海へ急遽移動することになって、計画はあえなく失敗します。演劇グループにワンを誘ったのはクァン(ワン・リーホン)、ワンはほのかに恋心を抱いていました。その仲間はちりぢりとなりますが、その3年後には上海で暗殺の機会を探ります。


映画は、当時の上流階級である有閑マダムたちが着飾っての、麻雀のシーンが何度も出てきます。貴重な情報交換の場なんですね。そして、イーに接近する貿易商婦人に化けた女スパイ・ワンの動向を追いつつ、初めは疑心暗鬼でありながら、ワンへの情欲にがんじがらめになっていくイーの哀切を、いや2人の愛欲に溺れていく過程を細やかに描いています。「魅力と恐怖が同居する女が、男を狂わせ堕落させる。そんな魔性の女を、今に甦らせたかった」とアン・リー監督は言う。「今まで誰の言葉も信じてこなかったが、お前の言う言葉は信じよう」と言うイー。スパイ映画というと、学生レジスタンス、ゾフィー・ショルが当時のヒットラー政権に立ち向かった映画「白バラの祈り」を思い起こします。また、僕は篠田正浩監督の最後の作品「スパイ・ゾルゲ」を思い起こします。綿密な時代考証によるCG合成を駆使しながらの再現撮影も似通っています。しかし、小雪ではやはり役不足、「スパイ・ゾルゲ」にはワン・チアチーがいませんでした。篠田監督もそこまでは求めていませんでした。そこらあたりが作品の決定的な差となって表れました。そういえば篠田監督も魔性の女が好きで、葉月里緒菜をよく使っていましたね。こちらもやや線が細いのが残念でした。


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逆に「ラスト、コーション」は、イーとワンの駆け引きから互いに求めあうまで3度のセックス・シーンで、スパイ映画の細かい部分はどうでもよくなり、「大人のラブストーリー」へと主客転倒しています。が、これはこれでいいと思います。料亭で2人で密会し、ワンが歌うシーンは、2人の愛が、唯一身体を重ねずに完成したといえるシーンです。いよいよ決行が迫ってきます。クァンは、ワンが任務を遂行する直前、初めて彼女にキスをします。時既に遅し、ワンは「3年前にしてくれたら...」と冷たく言い放ちます。何度もイーを殺害できるチャンスがあるにもかかわらず、レジスタンス側とワンは何度もその機会を逃しています。女子学生が、一気に有閑マダムに成り切れるはずはありません。もうとっくに特務機関に、あるいはそのトップのイーにばれていると思えることでも、実はまだばれてなく、彼らを捕まえないという官憲側。知ってはいたけどあなたが彼女にのめり込んでいたので、と、イーの部下が最後に言うシーンがありましたが。セックスと「大人のラブストーリー」ということで言えば、リリアーナ・カバーニ監督の作品「愛の嵐」を思い出しました。


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1万人の中から選ばれた逸材、童顔だと揶揄されながら、見事にワン・チアチーという微妙な役柄を体当たりで演じきったタン・ウェイに拍手。「映画の中でワン・チアチーという女性は3つの段階を経ています。最初は天真爛漫で純真な女性として、そしてベッドシーンを経験して純真さは失われ、より成熟した女性に変化していくのです。そして映画の完成後には、ワンを演じたタン・ウェイもまた、本当に成熟した、演技においても複雑さを兼ね備えた女性になったと思っています」と、監督のアン・リーは語っています。

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「ラスト、コーション 色―戒」公式サイト
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コメント

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2 ■hyoutan2005さん、コメントありがとう!

香港と上海という街、エキゾチックというか、絵になる雰囲気を持っている街ですね。この映画、けっこう長い映画でしたが、いつの間にか終わって、時間を感じさせませんでした。ずっと、緊張しっぱなしで・・・。これからも、よろしく!

1 ■TBありがとうございました。

とても印象に残っている作品です。
作品の世界に流れる空気や色、全てがとても切なく美しいと思いました。
最後までスクリーンから目を離せませんでした。
終わった後もしばらく席を立てなかったくらいに、心を揺さぶられました。

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