2007年09月15日 16時54分14秒

島本理生の「ナラタージュ」を読んだ!

テーマ:本でも読んでみっか

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亡くなった知人のベットの横に置いてあった、購入したばかりの本を譲り受けたのは、昨年の8月の暑い日でした。その本は島本理生の「ナラタージュ」です。どういう気持ちでこの本を購入したのかその理由がわからず、早いうちに読まなくちゃと思いましたが、なかなか読む気持ちになりませんでした。それから1年が過ぎ、また暑い夏がやってきて、その暑さも過ぎ去ろうとしています。ところがひょんなことから読んでみようと思い立ちました。


そのきっかけは、朝日新聞の「東京物語散歩」という8月28日の記事でした。佐藤正午の「ジャンプ」を読んだときにもこの記事を取り上げたことがありましたが、東邦大付属高教諭の堀越正光さんが書いているものです。その記事は、島本理生「ナラタージュ」について書かれたもので、「同潤会上野下アパート 思いを寄せ合う二人の再会」というものでした。その記事も斜め読みでしたが、同潤会が出てくるなら読んでみようかと、まあ、読むきっかけになったわけです。島本理生の「ナラタージュ」については、「今年度もっとも情熱的な恋愛小説!」として、さまざまなレッテルが貼られた作品でした。著者の島本理生は僕はつい先日まで男の人かと思っていました。逆に、「となり町戦争」の三崎亜記は女の人だと勘違いていたこともあるのですが。


島本 理生は、1983年東京生まれ、立教大学文学部在学、とあります。ということは、まだ24歳?1998年初めて応募した「ヨル」で鳩よ! 掌編小説コンクール第2期10月号当選、年間MVPを受賞。13年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。15年都立高校在学中に「リトル・バイ・リトル」が第128回芥川賞候補となり、大きな話題を呼ぶ。第25回野間文芸新人賞を最年少で受賞。思春期の繊細な感情や心の痛みを鮮やかに表現し、10代・20代の読者からの支持も高い。と、経歴にありますから、そして「ナラタージュ」は、「若手実力派による初の書き下ろし長編・渾身の740枚」、う~ん、書き下ろしか、だいぶ角川書店の肝いりなんですね。「生まれる森」で第130回芥川賞候補となりますが、相手が悪い、金原ひとみと綿谷りさでした、残念!ん?「大きな熊が来る前に、おやすみ。」でも、第135回芥川賞候補になります、3回目、常連ですね。


「東京物語散歩」には、同潤会アパートについて、以下のように書いてありました。「同潤会というのは、関東大震災の後、内務省によって作られた財団法人のことで、東京や横浜に鉄筋コンクリート造りの集合住宅を建設しました。同潤会アパートと呼ばれます。と意地としては最新の設備を備えた画期的な住居でしたが、時の流れにより、次々に姿を消しています」。同潤会アパートで有名なのは「青山アパート」と「代官山アパート」です。共に再開発によって建て替わっていますけど。


同潤会アパートが「ナラタージュ」の中で出てくるのは2カ所です。ひとつは、葉山が体調を崩して居所が分からないときに、泉が葉山を捜して茗荷谷を訪ね博物館へ行ったときのことを後に、「あのアパートを見つけられなかった」と葉山にいいます。葉山は「残念だけど、茗荷谷のアパートはないんだよ。何年か前に取り壊されたんだ」といいます。これは春日通沿いの、同潤会で唯一の都営のアパート、「大塚女子アパート」のことだと思われます。もうひとつは、「まだ残っているよ。見に行ってみようか」ということで、2人は雨降る中、「同潤会上野下アパート」を見に行きます。これは地下鉄銀座線稲荷町駅近くの、独身者向け住居として建てられた、4階部分がせり出した特徴ある外観のものです。まあ、物語の中ではちょこっと出てくるだけで、ほとんど取り上げるほどのことではないのですが。


また「東京物語散歩」の引用です。「島本理生の『ナラタージュ』(05年)の主人公・工藤泉が高校3年の時から思いを寄せていた男性は、古い建造物を見るのが好きでした。彼の名は葉山貴司。演劇部の顧問をしている32歳の高校教員です。現在、大学2年生である泉は、葉山と再会します。彼女は高校時代、演劇部に所属していました。その関係で、部活指導の強力を頼まれたからです泉の高校時代、2人は互いに相手を特別な異性と考えていましたが、関係は深まりませんでした。その理由は泉だけに告げた葉山の過去にありました。自らの思慮不足から、母と妻、そしてその周囲の人を不幸に陥れたという痛恨の事実があったのです」。


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島本理生の「ナラタージュ」については、ほとんど江國香織そっくりとか、影響受けすぎとかいわれたりしています。年上の人に恋するヒロインがいて、その恋がうまくいかず、激しく傷つくパターンを理解できない人と、それを読んで胸がキュンとなる人に分かれます。と、まあ、この辺は「文学賞メッタ斬り」のトヨサキセンセの言い方ですが。島本は、スラスラと書いて、文章はうまいが、その陥穽にはまりこんだ作家だと。読んでる方も、スラスラと読めて、どこにも引っかからなくて、とてもお上手ですけど、だからなに?って言いたくなるんですよ、とトヨサキは続けます。たしかに純粋培養された文章は、洗練されてはいるが、面白くありません。特に小野君や葉山先生とのセックスシーンは人畜無害、無色無臭、無味乾燥です。ドロドロした情念のひとかけらもありません。


特に前半は、高校生の延長の演劇サークル活動の話で、まったく退屈です。当初は演劇サークルではなく、吹奏楽部のサークルだったそうで、プロットや構成を何度も練り、会話や文章を最後まで直したそうです。編集者のご指導よろしきを得て、かな?「ナラタージュ」に関するブログ等を読むと、ほとんどの人は年上の葉山を、自分勝手で、都合がいいときに「ひさしぶりに君とゆっくり話がしたいと思ったんだ」とか電話かけてくる悪いヤツ、と非難しています。「どうして卒業式の日にキスなんてしたんですか」と詰め寄っても、それはお互い様、年上で妻帯者なんて、もともと不倫なんだから、そんなものですよと僕は言いたい。でも、逆に泉だって小野君に対しては、「小野君と付き合ったら幸せだろうな」とか、「私、小野君と付き合う」と気を惹くようなことを言ってみたりします。でも結局は葉山を吹っ切れなくて、思い出しては小野君を苛立たせます。


「ナラタージュ」とは、映画などで、主人公が回想の形で過去の出来事を物語ること、とあります。島本理生は、「友人なら何とも思わないことが恋人になると気にかかる。恋愛は人間関係のコアな部分。そのまっただ中で、人が傷つき、苦しみ、葛藤する姿を書きたいと思いました」。たしかにそうかも知れませんが、一人一人の人物が描ききれていない印象は否めません。そして主人公の泉は、女の子から女性へと至る過程の、都合のいいプラトニックラブですね。セックスの後、葉山は言います。「これしかなかったのか、僕が君にあげられるものは」と。「あなたはひどい人です」、「これなら二度と立てないぐらい、壊されたほうがマシです。お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある」と、文語調のように泉は叫びます。


塚本柚子の自殺は、必要なかったのではないかと思います。最終章、大学を卒業した後、すべてが思い出に変わり始めます。あの騒ぎはなんだったのか?職場で仕事をしながら、葉山からもらった懐中時計を見ていると、職場の先輩が「もしかして好きな人からもらったの?」と聞かれると、「昔、好きだった人なんです」と言って、泉は長い時間をかけて葉山のことを語ったりします。ラストが陳腐です。偶然、カメラマンである葉山の大学時代の同級生と食事をすることになります。泉の顔を見て、どこかで見たことのある顔だといって、彼は葉山が、奥さんには絶対に内緒だといって、定期入れから写真を取り出した、ということを話します。「これからもずっと同じ痛みを繰り返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に。そして私はふたたび彼に出会うのだ。何度でも」。で、「不器用だからこそ、ただ純粋で激しく狂おしい恋愛小説」は終わります。あ~あ!


ナラタージュ(webKADOKAWA)

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