ケイト・ウィンスレットの「リトル・チルドレン」を観た! | とんとん・にっき

ケイト・ウィンスレットの「リトル・チルドレン」を観た!


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朝日新聞夕刊(8月15日)の第一面に載っている記事に引き込まれました。1977年に放送されたTBS「岸辺のアルバム」の製作秘話です。原作者で脚本家の山田太一や、製作にかかわったTBSのプロディユーサー、ディレクターの談話を記事にしたものです。「夫は忙しく妻と口も利かない。戦後の豊かさの長所も短所も引き込んで、先の希望が見えにくい家族」、「主婦の孤独を怖いほどに描く筆力に引き込まれるとともに、身につまされた」、「昼間に寂しく過ごす描写が長くないと、主婦の孤独の深さが伝わらない」等々。僕は直接テレビで見たわけではないですが、「妻の孤独」が作品のテーマになる、このTVドラマが転換点だったと言われています。


ケイト・ウィンスレットの「リトル・チルドレン」を観ました。この映画、何度か予告編を観ましたが、僕はどうも勘違いしていたようです。異常な性犯罪者がコミュニティに紛れ込み、受け入れられなくてまた犯罪を犯す、そんなような映画だと勝手に思っていました。今、予告編を見直してみると、お恥ずかしいことに、そうじゃないことが判りました。上の「岸辺のアルバム」を扱った新聞記事、「リトル・チルドレン」を観た後だったので、テーマがこの映画と近いような気がして取り上げたというわけです。


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なぜ、満たされないの?
今の幸せに気づかず、別の人生を夢見てしまう。
“大人になれない大人たち”。


「こんなはずじゃなかった・・・」
「本当の夢は他にあるのかも・・・」
「ここに自分の居場所はない・・・」
様々な理由をつけて現実逃避してしまいがちな大人たち。
完璧でなくても、欠点のある自分を受け入れ、
そのままの自分を愛せた時、本当に求めていた自分の居場所が見えてくるはず。

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郊外の住宅地に住む主婦サラは、近所の公園で司法試験の合格を目指す子連れの主夫ブラッドと出会った。いつしか二人はお互いに惹かれ合い、気持ちを抑えられなくなっていく。そんな中、街では元受刑者のロニーが釈放され話題となっていた。ブラッドの友達で元警察官のラリーは、子供たちを守るためにロニーを糾弾するビラを町中に貼り回る。周囲から拒絶される息子ロニーを暖かく見守る母親のメイ・・・。大人になりきれない街の住民たち。それぞれの運命に逆らいながら、やがて見出す本当の自分の居場所とは・・・。


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良くも悪くも「アメリカ的」です。人には言えない心の奥底。閉塞感の漂う現代人特有の悩みかも知れません。が、一方、暮らしに困らない連中の贅沢な悩みでもあります。燃え上がる二人は、まったく周りが見えなくなります。子連れで「駆け落ち」、という重大な事態を招く前に、思いとどまることができたのではないか?それが大人というものです。が、しかし、一旦は(子供っぽく)駆け落ちを約束します。この映画に「もし」、ということはないのでしょうが、でも幾通りもの「流れ」や「終わり方」があったはずです。ブラッドが約束通り、公園に直行していたら、その後はどういう展開が待っていたのでしょうか?


が、しかし、大事なときに(子供っぽく)スケボー見学としゃれ込みます。「おいおい、そんな遊んでる場合じゃないぜ」と言いたくもなります。スケボーをやっている子供たちに(大人狩り)ボキボキに痛い目に遭わされなかったとも限りません。単に、スケボーの着地の失敗に終わっただけで済みましたが。サラの旦那のいかがわしい趣味もカワイイものです。ブラッドの奥さんも気がついていないわけはありません。結果的に降り出しに戻ることになりましたが、二つの家族にはなんらかの軋みは残るでしょうし、でも大人ですから、今まで通りの「中産階級的な暮らし」が続いていくことでしょう。


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悲惨なのは母親を亡くし、一人で生きていかなければならないロニーです。深夜の公園でサラと子供にあったときに、また事件が起こるのではないかと一瞬緊張が高まり、手に汗を握りました。しかし、何ごとも起こらず、サラと子供は家に戻ります。幸せは身近にあるものなのです。救われたのは、元警察官ラリーが、ロニーに詫びを入れたことです。サラとブラッドのセックスシーンは圧巻、けた外れに凄い、必見です。ケイト・ウィンスレット、「ホリディ」の一方の片割れ、なかなかの演技派、飛び上がって喜ぶところは「ホリディ」そのもの。この映画の演技でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。アメリカ文学の雄、トム・ペロッタのベストセラー小説を、作者自身が脚色、同じくアカデミー賞脚色賞にノミネートされました。



「リトル・チルドレン」公式サイト


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