私と息子と博士の崇高で哀しい愛 | 三太・ケンチク・日記

私と息子と博士の崇高で哀しい愛

2005年本屋大賞エントリー開始!」という記事が目に入りました。去年できたばかりの「本屋大賞 」、他の賞と大きく違うのは、なんと言ってもこれ「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」というわけなんです。まあ、300人程度の人が選んでいるのですから、やや偏った結果が出ることもあるでしょうが、大出版社の選ぶ賞に食傷気味の人には新鮮な感じがすること請け合いです。昨年度、第1回の「本屋大賞」を受賞したのは、小川洋子の「博士の愛した数式」です。副賞は10万円分の図書カード。しかも、その図書カードで購入した本 をネット上で公開しています。このさわやかさ、この透明性!どこかの経営者も見習って欲しいものです。でも、書店員の人たちが推してくれたということで、まともな本が売れない時代に、30万部を越えるヒット作となったようです。もうこんな季節か、ということで、小川洋子の読んだ本などを。

妊娠カレンダー 」で1991年104回芥川賞を受賞。帯には「姉の妊娠を知った日に妹の抱いたある秘め事」と書いてあります。姉の妊娠を知ってから入院まで、日記風のわずか60数ページの短編。初出は「文学界」平成2年9月号ですから今から10数年前の作品。芥川賞発表時に「文芸春秋」で読んだと思うのですが、実は内容はよく覚えていませんでした。単行本は最近ブックオフで購入し、読み直したというわけです。手持ちのこの本は、1991年2月25日第1刷、4月25日に第7刷ですから、わずか2ヶ月で7刷、当時、爆発的に売れた本のようです。ちょっとホラーがかった「ドミトリイ」と「夕暮れの給食室と雨のプール」を入れても全部で189ページの本です。

第1回「本屋大賞」を受賞したことで話題になった「博士の愛した数式 」、僕が読んだのは「本屋大賞」を受賞する前でした。この本、なにかのついでに知人に紹介したんですが、というより、数字や阪神タイガースの話が出てくるので、僕にとってはそれほど面白い本でもなかったので、今こんな本読んでるよ、という感じで話したんです。それがなんと、案に相違して面白かったという感想、なんかこの本から「共感」が得られたんでしょうね。もう一度読み直してみるべきかも?

「彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。」という書き出しで始まるこの本、本の帯には「世界は驚きと歓びに満ちていると、博士はたった一つの数式で示した―記憶力を失った天才数学者、と私、阪神タイガースファンの10歳の息子。せつなくて、知的な至高のラブ・ストーリー著者最高傑作。」とあります。 80分前までの記憶しか覚えられない老博士とルートと呼ばれる少年のやりとりが心温まります。

と、ここまで書いたら、タイミングよく「博士の愛した数式」の映画化の情報 が。博士に寺尾聡、義姉に浅丘ルリ子。家政婦に深津絵里、成長した家政婦の息子・ルートに吉岡秀隆。キャストには異論があるのは分かりますが、ひとまずそれはおいといて。監督は、故黒澤明監督の愛弟子で知られる小泉堯史監督、「雨あがる 」「阿弥陀堂だより 」に続く第3作です。前2作は僕も見ました。寺尾聡は3作連続で小泉監督作品に主演することになります。2005年4月クランクイン、2006年1月公開か!

もう一冊、「ブラフマンの埋葬 」、芸術家村の管理人と小動物との交流、を描いたさわやかな146ページの短編。これも先日ブックオフで購入しておいたもの。実は昨晩一晩で一気に読んだものです。

その他に、数ヶ月前に文庫本二冊を購入してあり、ちくま文庫の「沈黙博物館」、そして中公文庫の「余白の愛」の二冊ですが、長編なのでいつ読めるか、今のところ出番を待ってる状態です。