2012年09月04日(火)

ブルックナー交響曲第七番について

テーマ:音楽の話
 今日はブルックナーの誕生日です。
 そんな日なのですが、最初に白状しておきます。
 わたしは、長い間ブルックナーと疎遠でした。

 高校時代に少しは聴いていました。しかし、それ以来五十五歳を超えるまで、ほとんど聴くことがなかったのです。時々どこからかブルックナーが響いてきても、あまり感じるところがなかったと言えます。
 しかし、五十五歳くらいから少しずつ聴き始めました。「ちょっとおもしろいぞ」 と感じ始めたのです。
 まず、九番に惹かれました。それから八番に深く魅了され、そしてついに七番に取り憑かれました。ここしばらくの間、いちばんたくさん聴いている音楽がブルックナーの交響曲第七番ということもあるので、彼の誕生日の今日、少し七番について書いてみます。

 不思議なことなのですが、最初聴き始めた頃、七番はまるで春風のような響きを持った曲だと感じていました。それが聴き込んでくるにしたがい、まるで秋風のように聴こえてきました。きっと時間と共に、これからも曲の印象は変わり、お気に入りの演奏も変わるのでしょう。しかし、初めの印象とこれほど異なって感じる曲というのも珍しいです。

 ここに現時点で感動する演奏について書いてみます。

 まず七番に取り憑かれる原因となったCDがあります。それは、尊敬する友人からいただいた非正規盤のカラヤン&ベルリンフィルライヴ盤です。これで、いきなり曲の言いたいことや全容が理解できたように感じました。
 そしてカラヤン人生最後の録音であり、たくさんの支持者のいるこちらのCDへとつながりました。

 ブルックナー:交響曲第7番/カラヤン(ヘルベルト・フォン)

¥1,800 Amazon.co.jp

 スタジオ録音なだけあって、音も素晴らしく、今も友人たちに進め続けています。

 少しブルックナーからマーラーに話が変わりますが、長い間好きで聴き続けているマーラーのCDには個性的な演奏が多くみられます。たとえばバーンスタインやテンシュタットといった指揮者は、彼らでなければできない表現をおこないます。ショルティのマーラーも個性的と言えばとても個性的です。初期のラトルは、それこそ思い切って個性的…というか、やりたい放題な演奏を残しています。そんな演奏を振り返ると、マーラーというのは指揮者それぞれが、思い切った個性を出しやすい音楽なのかもしれません。
 いっぽうブルックナーにおいて、これまでのところ良い演奏だと感じたものに、マーラーと正反対の共通点が聴かれるように思います。
 まず、テンポがマーラーほど動かされません。旋律線や強弱に関しても、聴き手が驚くような解釈はそれほど存在していません。ブルックナーにおいては、思い切ったことをやればやるほど、音楽の魅力を失ってしまうようにも感じられます。あくまでもあたりまえに、自然に…。それがブルックナーの名演奏の多くから聴こえてきます。
 そんなブルックナーの演奏記録から、これまで聴いてきた七番のなかで、自信を持って人に勧められる演奏を、以下に上げてみます。

 □カラヤン ベルリンフィル(1975年録音正規版)
 □カラヤン ウィーンフィル(1989年4月録音)
 □朝比奈隆 大阪フィルハーモニー(聖フローリアン教会録音)
 □カール・ベーム指揮/バイエルン放送交響楽団(1977年4月録音)
 □カール・ベーム指揮/ウィーンフィルハーモニー

ブルックナー:交響曲第7番/大阪フィルハーモニー交響楽団

¥3,066 Amazon.co.jp

 □マタチッチ指揮/チェコフィルハーモニー
 □テェリビダッケ/ミュンヘンフィル
 
 □マゼール指揮/ベルリンフィルハーモニー
 □ザンデルリンク指揮/シュトゥットガルト放送交響楽団

 □ヨッフム指揮/ベルリンフィル
 □ヨッフム指揮/ローヤル・コンセルトヘボー(1986年録音)
 □ヴァント指揮/ベルリンフィル
 □ヴァント指揮/ケルン放送交響楽団

 □ティントナー指揮/ローヤル・スコティッシュ管弦楽団
 □スクロヴァチェフスキ指揮/ザールブリュッケン放送交響楽団
 □ハイティンク指揮/シカゴ交響楽団(2007年録音)

 まだまだ素晴らしい演奏があるでしょうが、上記は最近聴いたCDのなかで、とても素晴らしいと感じた演奏のいくつかです。
 少し話が七番から脱線しますが、ウェルザー・メストという指揮者に、五番と七番のセットになったCDがあります。必聴の五番にくらべ、七番は少し弱いので、ここにはあえて書きませんでした。でも、五番はぜひ聴いてみてください。ウェルザー・メストの五番を聴くたび、わたしはテンシュタット&シカゴのマーラーの一番を思い出します。鳥肌が立つような何かがあるのです。
 また他の交響曲ではサバリッシュの九番も逃せないところでしょう。こちらも何か特別なものを感じる名演です。

 ブルックナーに神秘性を聴きたいのなら、チェリビダッケや晩年のヴァントがお薦めでしょうか。チェリビダッケの伝説となったミュンヘンライヴは、今も手に入れることができます。あなたの心と時間に余裕があり、音楽に没頭できたなら、魔法の一端を垣間見ることができます。幸運なら、魔法そのものにも出逢えるでしょう。
 反対に、わかりやすく旋律線のはっきり浮き出したブルックナーならベームが一押しです。ワーグナーやモーツアルトでもそうなのですが、わたしはベームの演奏にとても惹かれるところがあります。
 スタンダードな完成度と美しさならマタチッチでしょう。チェコフィルだけでなく、N響との録音も素晴らしい演奏です。
 また朝比奈隆さんのブルックナーもぜったいに聴き逃せません。七番にかんして、彼のすべての演奏記録を聴いた訳ではありませんが、聴いたどれもが素晴らしいものでした。八番や九番も必聴です。

 変わったところでは、…あくまでも個人的なことですが…、これまでどんな演奏でも感動した記憶のないマゼールに、とても感動したという思い出があります。演奏自体も王道をいく衒いのないもので、ブルックナーをしっかりと感じさせてくれます。これまでいろいろな作曲家の曲で、マゼールを好きになれなかったのですが、初めて素晴らしいと感じさせてくれました。

 意外とおもしろくなかったのは、マーラーではとても好きだったインバルです。八番は聴くべきところもありますが、七番はどうしても凡庸に感じてしまいます。
 またファンの多いクレンペラーですが、どうも乾燥しすぎているというか、殺伐とした何かを感じてしまうため、マーラーほど感動することができません。もしかしたら、いつか理解する時が来るのかもしれませんが…。

 マーラーを聴き続けた耳でブルックナーを聴くと、その音楽に命を吹き込むために必要なことが、マーラーとまったく別のところにあると感じざるを得ません。
 マーラーが哲学や信条、思想、意志というものを強く感じさせるのに対して、ブルックナーは自然や人間の感情、叙情、憧れというものを深く感じさせてくれるのです。
 この対比は、少しベートーヴェンとモーツァルトの対比に似ています。哲学や信条、思想、意志を感じさせるベートーヴェンと、自然や人間の感情、叙情、憧れを感じさせるモーツァルトです。

 どちらにしても、こうした音楽に日々接することができるのは、たいへん幸福で幸運なことです。
 人類すべてがマーラーやブルックナーに感動する日が来るなら、ほんとうの平和が実現するのでは…。そんな夢物語まで期待してしまいます。

 下は一押しの五番です。

ブルックナー:交響曲第5番/ウェルザー=メスト(フランツ)

¥999 Amazon.co.jp


 ふたたび余談ですが、『Altus』 というレコード会社が出しているブルックナーは、どれも素晴らしいと感じています。演奏だけでなく、音も素晴らしいものが多いので、ぜひ聴いてみてください。

 交響曲全集ということなら、カラヤンとヨッフムを挙げておきましょう。

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